たにみやんアーカイブ(新館)

音楽について何か話をするブログです

2018年7月に聴いてよかったCD

今月は早めに投稿したぞ!まあ夏休みだしね…

 

Special Favorite Music「NOWADAYS」

この感じはホールライブで聴きたいやつです。好き。

 

Negicco「MY COLOR」

ちょっとおとなしい曲に寄ってないかなという印象もあったけど聴き心地の良いグッドポップス。

 

三浦大知「球体」

アート性の高い作品という内容とタイトルから小沢健二を思い出したりするんだけど、静と動に満ちた味わい深い一作。

 

CRCK/LCKS「Double Rift」

スペシャルなミュージシャン達によるスペシャルなバンドの3作品目。現代っぽいブラックミュージックとJ-POPの融合が図られてて体を揺らしたくなる一品。リリースペースが早いのはいいけどそろそろフルアルバムで聴きたい。

 

蓮沼執太フィル「アンポロトセン」

蓮沼執太フィルの名義では4年ぶりかな。グッドメロディと優しいオーケストラの音、そしてラップ。完成度高いなーって感心しちゃう。僕は蓮沼さんが書いたリリスクの曲を聴きたいって3年くらい思ってるよ。

 

 

indigo la end「PULSATE」

インディゴの新譜、昨年同様良い。というかおとなし目の曲がずいぶん多いような気がするけどそれでも(それだからこそ?)良い。

 

5lack「夢から覚め。」

トラックがかっこよかった。ラップも聴きやすい感じだったし好きなタイプのやつだった。

 

 

Analogfish「Still Life」

7月度の優勝案件。いろんな音楽の要素が詰まってて、それをアナログフィッシュというフィルターを通すことで一本筋の通った音楽となり輝きを放っている。絶対聴いた方がいいやつです。

 

来月も早めにアップできますように。

 

2018年6月に聴いてよかったCD

また月末になってしまった……

 

 

lyrical school「WORLD'S END」

全ての曲が良くて、夜明け→朝→昼→夜という曲の流れと昼のパートで夏が始まり終わってくという二段構えになっている多層的なストーリー性のある曲順。2018年にアルバムで聴くべき作品としてトップクラスのできばえ。製作陣に拍手!それから別記事にも書いてあるからぜひそちらも読んでほしい。

というわけで今月これで終わりでいいですか?え?マジメにやれ?

 

わかりました。他はこんな感じです。でもホントまずリリスクの「WORLD'S END」聴いてください。

 

R+R=NOW「Collagically Speaking」

 

宇多田ヒカル「初恋」

Apple Musicにはまだ無いのでこの形で勘弁

 

TAMTAM「Modernluv」

2018年5月に聴いてよかったCD

もう6月も終わるから慌てて書くよ!

 

 

CHAI「わがまマニア」

基本的にはこれまでの路線の踏襲っぽい感じであり目新しさには欠けるけど、ベースのグルーヴ感がしっかりしてるので引き続き聴きたくなる。

 

SOIL&"PIMP"SESSIONS「DAPPER」

えっソイルってこんな感じだったっけ!?自分は別のミュージシャンのアルバムを聴いているのでは…!?となったけどテイストを変えて大人な感じになった新生ソイル、ずいぶん良いです。三浦大知参加曲が特に良い。

 

cero「POLY LIFE MULTI SOUL」

ceroの2年ぶりの新作はビートの追究の成果とも言える意欲作。前作ほどブラックミュージック一辺倒ではなく初期のような多国籍感も。あえて言えば歌モノとして少し弱いかなあと思うけど、最後の表題曲がホントすごい。8分30秒の新音楽体験。

 

阿佐ヶ谷ロマンティクス「灯がともる頃には」

昨年の「街の色」も大変良かった阿佐ヶ谷ロマンティクス。今回も冒頭の「ひとなつ」が夏の情感を巧みに表現しててうっとりしちゃう。落ち着きとポップネスが両立されており、縁側で夏涼みしながら聴きたくなるような一品。

 

August Greene「August Greene」

コモンとロバート・グラスパーにカリーム・リギンスという構成のバンド。好みど真ん中な感じのビートな今風ブラックミュージック。カリームのこと知らなかったんだけど調べたら今ポール・マッカートニーのライブバンドに参加してるんだってさ。マジかよ……

 

土岐麻子SAFARI

前作「PINK」で土岐麻子シティ・ポップスが確立された感があり、その流れを前に進めてる印象を受ける一作。正しく大人のポップスしてるねっていう印象。

 

 

今月分は早めにやります。

lyrical school「WORLD'S END」私的ライナーノーツという名の感想

今年一番楽しみにしていたリリスクのニューアルバム「WORLD'S END」が発売されて、やっぱり素晴らしく良かったので自分なりに感じたポイントなどを書き残しておきたい。まずジャケットが2013年の「date course」に引き続き江口寿史先生。これすごく良い。

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試聴はこちらから。

なお、Apple MusicSpotify等でも配信が即開始されているので、そちらでも是非聴いてほしいです。

各曲レビュー

コメント内の固有名詞は敬称略なんでよろしくです(以後も)

01. -PRIVATE SPACE-
まずはリリスクのアルバム恒例のSkitから。今までに比べると非日常感が強く、過去のいくつかの映画などからの引用が見受けられるところがSF的世界観の強い今作の世界に引き込む効果を出している。risanoの英語力を活かす台本になっているが、話されてる内容を聞き取ると…笑

02. つれてってよ
このシングルが出たときにプロデューサーのキムヤスヒロが「この曲は次に出るアルバムのキーになる」と言っていたが、まさにこの曲の冒頭のリリック「明日急に世界が終わる可能性があるなら」から展開されたんだなと感じられる。また、この曲は各メンバーのスキル・特徴が分化し始めたきっかけの曲でもあり、この曲を起点に聴き比べすると面白い。

03. 消える惑星
「つれてってよ」と同じ作家陣による楽曲。夜→明け方と時系列的に連続性を感じられるようになっている(後述するけどアルバム全体としてそう)。夜明けの情感を巧みに描いたhinakoバース「一緒に眺めよう空のグラデーション」が胸を打つ。MVも曲の雰囲気をジャストな感じでパッケージングしてる。

04. High5
4月のVISIONでのワンマンライブで披露された曲。2018年の夏曲…と見せかけて「アウターで過ごす日々は充電」「待ちきれないサマータイム!」という初夏くらいの感情を歌った曲。あちこちにキラーフレーズがまぶされてるけどど頭のminanヴァース「introに陰と陽」がめちゃくちゃ好き。

05. 夏休みのBABY
今の5人になってから初めてレコーディングされた曲にして2017年のリリスクの夏ソング。明るくてマイクリレー細かくてこれぞリリスクが脈々と培ってきた夏ソングの系譜って感じ。それにしてもhinako・yuu・risanoの3人の声が初々しい…!!

 

06. 常夏(ナッツ)リターン
リリスクの2018年夏ソング。スチャダラパーBOSE&SHINCOかせきさいだぁという「サマージャム'95」「じゃっ夏なんで」の2大夏名曲の作者が集結。これらの曲の続編とも言えるような一作に仕上がった。これら2作を含む各所からの引用の目立つリリックに注目が集まるが、チルアウト風味な曲調やサビでのユニゾンの美しさなどに、残暑の既設に吹く涼しい風のような心地よさを感じる。risanoヴァースの「遠すぎウケる湘南のビーチ」「余裕ブッこきマックイーン」が好き。終始risanoが低音でのハーモニーなど良い味を出している。

 

07. オレンジ
リリスクと10月に対バンを行い大いに場を盛り上げた思い出野郎Aチームが作曲、tengal6時代からラップを提供してくれていたRyohu(KYANDYTOWN)がリリックを提供している。ロングヴァースを基調としていて直近のリリスクだと「おしえて(guidebook収録)」なんかとラップの調子が近い。hinakoヴァースの青春への寂寥感やhimeヴァースのかっこよさが際立つが全員の色がよく出ていて聴きごたえあり。ここからアルバム自体も夕方から再び夜に近づいている。

08. CALL ME TIGHT
空はすっかり暗くなって、再び夜の曲へ。12月に発売された「つれてってよ」との両A面シングル曲。minanヴァース「君の声はMagic」のあたりの凜とした雰囲気が胸を鷲掴みにする。

09. Play It Cool
「CALL ME TIGHT」よりもさらに夜を深めたかのような楽曲。トラックやラップが今っぽい感じで他の曲と異彩を放っているところもあるが、歌詞は全体的に今のリリスクのステージングのスタンスを表明しているかのようで非常にクールでかっこいい。「レイニーブルー」「失恋中」で韻を踏んでるのとサビのリズムが好き。

10. DANCE WITH YOU
ライブでも度々場を盛り上げているキラーチューンが待望の音源化。この曲でも「今夜二人のせいで世界が終わるかもしれないって言っとく?」とアルバムのキーコンセプトに繋がる表現が出てくる。また、その後の「もっとボリューム上げてねぇそこのDJ」という表現は、世界に「あなたとわたし」しかいないような主人公の視点が表れており、この後の楽曲群の世界観とも通底するところがある(因みにここのminan&yuuのユニゾンが素晴らしく綺麗)。


11. Hey!Adamski!
リリスクを長く見ていたALI-KICK(ex.ROMANCREW)による提供楽曲で初お披露目以来ファンからの評判も高い曲。イントロの音がいったん止まってからの「OKリリスク、踊らせて」という台詞とテンションの高いディスコサウンドが一気に曲の世界にリスナーを引き込んでいく。「銀河の果てまで」「私の好き=mc2」等SF・サイエンス的な要素がてんこ盛りの歌詞だけどこの曲も実は一貫して「私と君」の歌詞であるように感じた。ふたりだけのパーティー。yuuヴァース「手を取り見つめあってダンスする運命なんだ2人は」はなんか聴くと胸がギュッとなる。

12. WORLD'S END
「夏休みのBABY」を書き、今リリスクに一番寄り添ってくれている大久保潤也(アナ)・泉水マサチュリーによる書き下ろしラストトラック。Pixies「Whre Is In My Mind」のオマージュから軽快なダブにつながりだんだん雰囲気が怪しくなっていく構成の妙が光る一曲。世界の終わりなのになんだかあっけらかんとして楽しそうな歌唱が逆に切なさを増幅する。こんなにかわいらしい「神様ごめんね」ってありますか?

全体的な話

skitの後、割と深夜っぽい「つれてってよ」から始まり夜明け→昼間→朝〜午後(同時に夏の季節が進行するという重層的な構造)→夕暮れ(夏も終わる)→夜が深まる→パーティーを続ける、という流れるような曲の並びをしている。この連続性を感じられる曲順がとても自然なのでシャッフルしたりすることなく通しで聴きたくなる。そうすると最後の「Hey! Adamski!」「WORLD'S END」はどう捉えればいいのか。もしかしたら夢なのかもしれない。

個人的に凄く気になっているというか興味をかき立てられるのがそのラスト3曲「DANCE WITH YOU」「Hey! Adamski!」「WORLD'S END」の歌詞に見える「世界に私とあなたしかいない」感じ、雑な言い換えになるのを躊躇せずに言うと「セカイ系」的な雰囲気。ジャケ写の背景なんかもそれらの作品と共通した感じしないかな…?2人のワールズエンド。

成長を続けるリリスクメンバーたち

半年くらい前にも各メンバーについて書いたけど、今回はアルバムでの歌にフォーカスして書く。なのでライブ中の所作とかについては残念だけど書かない。あー残念だwでもね、それでも書くことたくさん出てくるくらい5人全員が大きく成長してることがわかるのです。各人の個性がより濃い輪郭を持ち始めたことがわかる今作でもあります。

minan
minanといえば凜とした意思を感じるラップと歌唱。今作でもそれがフルに発揮されていてもちろんかっこいいんだけど、yuuという歌唱におけるパートナーが見つかったことによりminanの歌が前よりさらにうまくなっているんじゃないかということを実感している。想像する理由の一つは得意なシーンが違うから良いところをそれぞれが発揮できてるということ、もう一つは二人で高め合うかのような相乗効果が出ているからではないかな。そして二人のハーモニー・ユニゾンがふんだんに発揮されるシーンが多いのも今作の良いところの一つだ。

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hime
ラップ大好きでかわいいラップもかっこいいラップもどちらも出来るオールラウンダーラッパーhime。今作だと「消える惑星」でhinakoのラップを聴いて自分のラップのやり方を即座に変えるなど、作品内でのバランスを取るという役割も果たしている。そしてかっこいいラップはホント板についてきた感じだし、野心が現れててすごく好き。

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hinako
hinakoのラップはかわいい。デビュー当初は若干舌っ足らずなところが出ててそれがかわいさに繋がっていたが、今は「きちんとラップできていて、聴くとかわいいって絶対分かる」ラップを出来るように成長している。minanは「笑いながら歌っているのがわかるラップ」と言っていたが、まさに聴く人に歌い手の顔を想像させることが出来るラップである。また、「オレンジ」のように青春への切ない憧憬を表現させたらこの子の右に出るものはいないと思う。ザ・アイドルラップ。

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yuu
yuuはラップや歌唱に様々な感情を込めるのがうまい。このアルバムでも色々な表情を出しており、楽曲に色を添えている。個人的には「つれてってよ」「常夏リターン」等で見られるようなアンニュイな雰囲気は彼女ならではだなあと思うところ。そして後半の「DANCE WITH  YOU」「Hey! Adamski!」「WORLD'S END」あたりではがっつりエモーショナルに歌ってもいるのでそこも聴きどころ。

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risano
メンバー内で唯一の低音の持ち主であるrisanoはどの曲でも楽曲を支える重要な役割を果たしている。それが特によく出てるのが「常夏(ナッツ)リターン」や「WORLD'S END」のサビの下ハモリ。あと海外在住経験があることもありどことなく日本人離れした歌い回しをすることろもまたいいアクセントになってるなあと感じる。あとはskitや「WORLD'S END」の冒頭など飛び道具的な役割もこなせるのが強い。

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もちろんここからの全国ツアー・更にその先も楽しみなんだけど、まずはこんなにいいアルバムを出してくれてありがとうという気持ちでいっぱい。本当にお勧めなのでぜひ聴いてください。もしよければライブにも来てみてください。

 

2018年4月に聴いて良かったCD

恒例のやつ。今回はApple Musicの視聴だけ貼る。Spotifyはあったりなかったりだしそもそも同じものを二つ並べるの激しく無駄くさいと気付いたのだ。では早速行ってみよう

 

春ねむり「春と修羅

オルタナティブロックのトラックにラップ?ポエトリーリーディング?が乗っかる感じ。他には無い格好良さがあるし芯の強さも感じられてなかなか良い。

 

市川愛「MY LOVE, WITH MY SHORT HAIR」

菊地成孔プロデュースのソロシンガー。本人曰くジャズではもうないみたいで弾き語りとか今っぽいR&Bみたいな感じのものが多くて聴きごたえあり。個人的には後者の割合をもうちょい増やしてもらえたらさらに良かった。「悪事」の曲中のセリフは笑ってしまった。

 

SUSHIBOYS「WASABI

SUSHIBOYSが好きな理由を考えてたんだけど「ラッパーだけどおらついてなくてヤンキー臭が無い」「でもラップはカッコよい」「トラックが洗練されてておしゃれ」「コミカルなキャラクターとリリック」「埼玉出身」辺りかな。今作もそれらがふんだんに出てる。彼等は長らく出てきてなかったスチャダラパー的なポジションのグループだし、KICK THE KAN CREWみたいなポピュラリティを獲得しうる存在になるかも。

 

小袋成彬「分離派の夏」

宇多田ヒカルがプロデュースしてるということで大々的に売り出された今作。確かに宇多田ヒカルが惚れ込むだけあり歌声がとてもよい。そして、無駄が極力省かれたミニマルなサウンドからは彼女のポップス感が垣間見える……と宇多田ヒカルのことばかり書いてしまったけど小袋成彬というシンガーの作品としてとても良くできている。しかしながらこの前ライブで聴いて思ったのだけどなんか虚無に触れたかのような気持ちになるんだよね。不穏なところがある。

 

ジャネール・モネイ「Dirty Computer」

話題になってたので聴いたら存外に良かった。ブラックミュージックベースの現代ポップスという感じで、R&B的な湿っぽさもそれほどなく上質。ただジャケットのドットが並んでるかのように見えるところは生理的に苦手であった…すまぬ。

 

なんかたくさん聴いた気がするのであえて厳選したところもあったり。3・4月は毎年タイトル数多いよね。

「夏フェス革命」を読んだのでレジーさんと色々話してみた

レジーさんの「夏フェス革命」を読んだので、本を読んで改めて考えた事など、レジーさんとメールインタビュー形式でお話した。 

夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー

このブログではレジーさんのブログのことは度々紹介・言及してるので本ブログの読者の方は知ってる方も多いだろうけど念のため紹介しとくと会社員兼音楽ライターで、2012年に書いたロック・イン・ジャパン・フェスティバル(RIJF)に関する記事がブレイクしてその後しばらくしてから執筆活動との二足の草鞋を履くことになったので今回の本はある種の総括的な意味合いもあるかなとか思ったり。

本の内容をざっくり書くと1998年にフジロックが始まって以降の現代フェス(つま恋のフォークフェスなどと区別するため僕はあえてこう書きます)の隆盛と発展、そして変貌を筆者自身が第1回から毎年欠かさず通っているRIJFにフォーカスを当てつつ読み解いているというもの。特にフェスの変貌については参加客の傾向からニーズを読み取りキャッチアップ・対応していく「協奏」という概念が提唱されているというのが本書のキモ。あとは実際に本を読んで頂くのが良いと思うけど、現代の「フェス」、それも「ロッキング・オンのフェス」を題材に消費行動の変化・音楽需要の変化などを切り取ろうとした意欲作です。

本来は年初くらいにやろうとしていたんですが、こちらの都合で随分遅くなってしまいました。

●「協奏」と「フェスというビジネスチャンス」について

この本の中核となる「協奏」の概念には多く話を割きました。

たにみやん→レジー

この本の中核となる概念である「協奏」はRIJFを始めとするフェスの参加者の広がりをうまく説明した概念だと思いますが、フェスのような「複合的な価値を束ねて提供するもの」だからこそ活きる話でもあるのかなとも感じました。単一消費財には転用はなかなか難しいですね。

また、RIJFに毎年行っているレジーさんとは対照的に僕は2008年〜2016年までCDJに行き続けてました(去年は後の方になってからチケット取ろうとして失敗しましたw)が、近年企業ブースに一定の傾向が見られるように感じます。
・30〜40代以上がよく見る映画(スターウォーズシン・ゴジラ
・若い世代があまり持っていない耐久消費財メーカー(ダイハツマイクロソフト
・若者が離れているといわれるタバコ製造のJT(これはずっと昔からいますがw)
こういったアプローチは他のフェス含め今後も増えて行くと思いますが、少なくともCDJで行われているそれは「協奏」的な発想とは真逆な真正直すぎるマーケティングにも思えます(各ブースでやっているいことは千差万別であるんですが)。どれもどううまくいったとかそういう話が全く残っていないのですが、レジーさんはフェスに対するスポンサーシップは(短期・中長期問わず)ビジネスチャンス・フロンティアだと思いますか?(個人的にはアウトドア商品やらの周辺産業の方が筋が通ったビジネス機会だと思ってます)

レジー→たにみやん

単一消費財の件については、本書内でもメントスの事例を挙げたように、SNSと絡むことでそっち側への広がりが出てくるのかなと思っています。
この辺はよく言われる「モノ消費からコト消費へ」的な話かと思いますが、自分なりに噛み砕くと「ユーザー側の行動まで織り込んだ文脈を提示することで、“モノ”を買う瞬間だけでなくそれを使うシーンまでデザインする」ということなのかなと。(→さらに、使われた状況をビジネスサイドが取り込んでいくことでもともとの文脈を拡張、強化する)今回はフェスというイベントを起点に「協奏」という概念を導き出しましたが、個人的にはこの着想は(手前味噌ですが)これからの時代のビジネスやエンタメを考えるうえで重要な視点になってくると思っており、継続して掘り下げていこうと目論んでいます。

スポンサードの話もこれとつながっていて、たにみやんさんが挙げていただいたようなCDJのケースは単に「デモグラとしてターゲットになる層が来るところで露出してみよう」「あわよくばSNSで拡散してくれるかも?」というだけの話になっているように思うので、この手のやり方は「ちょっと認知高まったかもしれなくてよかったね」くらいの効果しかなさそうですよね。なので、ご指摘いただいたようなアウトドア商品だったり、あとはアルコール系(これはジーマとかいろいろありますが今のところ基本は売ってるだけですよね)だったり、フェスとちゃんと文脈をつなげられるジャンルにこそ「フェス×スポンサー」のフロンティアがあるのかなと。

 

ここは一番議論が長くなった箇所で、僕が「メントスコーラの動画でバズってもメントス自体がおいしくなったりとかするわけじゃないよね?」的な疑問をぶつけたところから話が展開している。そもそも材そのものの価値だけで測るもんでもないでしょって話で、若干ここは僕が九世代的な考えに囚われているかな、と思った次第です。とはいえまずはエンタメ方面で先行しそうな考えかな、とも。とはいえ、水島弘史シェフが提唱し勝間和代さんが最近推奨しているロジカルクッキングなんかも調理家電の再定義につながる話になりそうで、「思わぬ使い方」から世界が広がる話はまだまだそこらに転がってそうとは思う次第。

あとフェスの経済効果を図る際にアウトドアグッズなどを周辺産業として測ることとかも大事なんじゃないかな、と思ったり。物事は単一のものにおいてのみ成り立ってるものではないですよ、と(そのまま前半の自分の発言にブーメランとして跳ね返ってくる)

こういう話をすると、やはりこの本は「音楽を題材にしたビジネス書」として捉えるのがベターだなあと思ってくるので、そう感じたことを素直に話しましたところ…

たにみやん→レジー

この本を読んで感じたのは「音楽を題材にしたビジネス書である」ということです。そこは狙い通りだと思いますが(笑)。個人的にはフェスの功罪について迫っている4章が本体です。ここの話はもっと読みたいですね。

レジー→たにみやん

「音楽を題材にしたビジネス書」のつもりで書いていたのですが、現状その観点で楽しんでもらえる人全員に正しく到達したかなというと正直まだまだだなという実感があります。上記の通り「協奏」の話も含めて、そっち側でこの本をどう価値化するかというのはもうちょい考えたいですね。

 

読んでレビュー上げている人が割と「この本は音楽を題材にしたビジネス・社会分析の書」的に書いているのが多いのでバイアスかかってたけど、実際のところはそうでもないと。 ここは音楽の話にビジネスの話を持ち込むと怒る人が多いところからすると、息の長い話かなとも思うところ。

 

●フェスと音楽の話Update版

ビジネス面の話が一息ついた所で、音楽的な面についてもお話をしました。

たにみやん→レジー

一体感のくだりの中でラウドロック系のバンドが様々なフェスで一定のポジションを確立しているという点が抜けているのは少し惜しいと感じました。リフ主体の体感重視サウンドでみんなで騒ぐというのは四つ打ち以降の現代的な音楽受容にも感じます。

レジー→たにみやん

確かにそうですね、そう言われてみると一体感周りのくだりは3~5年くらい前の認識をちゃんとアップデートできずに書いてしまっている感じはありますね。
ラウド系のバンドの動向を触れられていないのとエアジャムや京都大作戦のようなアーティスト型のフェスの話を組み込めていない(この辺は柴さんから受けた指摘ですが)のは、フェスを語る本としては手落ちかなと今振り返ってみて思うところです。

 

本書において述べられていた「一体感」の話では「四つ打ち」を主体にした若手ロックバンドについて述べられていたけど、それらのバンドはある程度(人気はあるけど)落ち着いた感もある。そして、ここ数年のフェスにおいて頭角を現し一定の位置を占めているのがいわゆるラウドロック系(ピコリーモ・メタルコア等)。例えばSiM・coldrain・Fear, and Loathing in Las VegasROTTENGRAFFTYCrossfaithなどの名前が挙がる。基本的にリフ重視の轟音でそこそこテンポ速い、ブレイクダウンが入るなどの特徴があって、とても体感的な音楽であるというのが特徴。そこからの発展系として、最近人気を増しているヤバいTシャツ屋さん・打首獄門同好会などはそういったラウドっぽいエッセンスを取り入れた轟音サウンドにコミカルで覚えやすい歌詞を加えることでフェスで急速に人気を獲得し、打首獄門同好会は単独でも日本武道館公演をできるくらいまでに、ヤバTはNHKにも取り上げられるほどに一気に成長した、というのが去年くらいまでの流れ。この辺が入ってるとなお良かったなあと思う所で。

AIR JAM京都大作戦などのアーティスト主導型のフェスに対しては確かに欲しかった所だったりするけど、本書のテイストからするとむしろ氣志團万博イナズマロックフェスの方がすんなり入ったんじゃないかなという気もしたり。特に後者は地元創生・町おこし的なニュアンスもあるので、さらに色々話が広がるのではないだろうか。

そんな風に他のフェスの話が出てきた所でこんな話も。

たにみやん→レジー

日本におけるフェスのお手本としては真っ先にフジロックが挙がる気がしていますが、それを初代Pが公言していたTOKYO IDOL FESTIVALはブッキング面ではRIJF化しているように感じます(過酷さを改善する気持ちが特になさそうなのはフジロック的なのかもしれませんが)。

レジー→たにみやん

これは「名前としてイメージする“代表的なフェス”はフジロック」「中身として無意識のうちにイメージしてしまっている“定着したフェス”はRIJF」というようなギャップを示す好例のように思いますね。夏フェス革命でロックインジャパンに関してページ数を割いたのは、自分が語れるからというのとあわせてそういう「本当に“フェスの代名詞”になっているフェスはひたちなかでは?」という投げかけをしたかったというのもあります。

 

「本当に“フェスの代名詞”になっているフェスはひたちなかでは?」という話は結構重要で、さっき氣志團万博イナズマロックフェスの名前を出したのもその流れがあったから。BABYMETALが2016年4大夏フェス全てに出演したが、今年はBiSHが多くの夏フェスに出るだろう。アイドル以外でも、例えばMISIAが今年フジロックに出る事で4大夏フェス全部に出たことになる。日本の各フェスは独特のポリシーを備えているところもあるけど、それと並行してひたちなか的なブッキングにはどこかでなっているのではないかとも言える。

TIFに関しての指摘は最初はアイドルの多様性を提示するイベントとして始まったはずがここ2・3年くらいは48&46・スターダスト等のアリーナクラスができるグループがどんどん出るようになってマスプロモーションでそちらばかり打ち出されている点に対するもの。イベントの趣旨が良くも悪くも変質しているのかなと感じさせるところだなあと。フジテレビの地上波で一部中継したりなどマスに提示して行こうとするのであればこの流れは不可避なんだろうなとは感じるところ。まあまだ「TIFで見つかる」みたいなことは起きているので価値を失っているということはないと思うけど。

 

他にも色々話したいことはあったけど、こんなところで。先週末のARABAKIから今年もフェスシーズンは始まったので、フェスを楽しみつつもその背景で動いている流れとかに目を向けてみるとよりフェスを楽しめる(あるいは広い心でフェスに臨める)のではないかなと思う。音楽と社会・音楽とビジネスという切り口からすると今マストなやつなので、是非読んでみてくださいな。

2018年3月に聴いて良かったCD

4月の頭はなんか色々あってあまり落ち着いて物書いたりする暇がなかった。ただKindleアプリが画面分割に対応したので読書を少しずつ再開しつつある。それはさておき先月の良かった作品たち。引き続き時流に沿って定額聴き放題ストリーミングサービスのプレイヤーを埋め込んだりしているのである。会員じゃなくても少々聴けるので活用いただけるとこれ幸い。

 

Awesome City Club「TORSO」 

ついに「Awesome City Tracks」シリーズから転換して新しいフェーズに。だからといって何か大きく変わっているということはないけどメロディやら歌唱やら基本的ま要素に前進を感じる。ラストのキリンジ「エイリアンズ」カバーがとんでもなく良い。しかしその良さもその前のトラックの良さあってこそ。

サニーデイ・サービス「the CITY」

 今作もストリーミング配信とアナログレコードでのリリース。1曲目で色々衝撃を受ける。笑。しかしながらメロウで普遍性のあるメロディを保ちつつ音が確実に新しい。今っぽい。

 

SOLEIL「My Name is SOLEIL」

一部アイドルファンの間で先月話題沸騰だったやつ。14歳のボーカル「それいゆ」を中心にしたユニットってことでいいのかな。聴いたことあるサウンドだと思ったらかつて土岐麻子さんが作品に参加したサリー・ソウル・シチューこと久保田サリーさんプロデュースなのね。確かによくできている。ただ狙いすました感が鼻につく部分はあるw

APOGEE「Higher Deeper」

 APOGEE5年ぶりのアルバム。響きのいい綺麗な音像が心地よい。

イヤホンズ「Some Dreams」

若手声優ユニットイヤホンズももクロエビ中じみた演劇感のある楽曲群をそれこそ本業で鍛えた演技力、声優力を存分に発揮して乗りこなしてる。サラウンド感のある曲(イヤホン推奨!)やらクラシックパロディやらクイーンのオマージュやら要素がてんこ盛りのめちゃくちゃ濃い一作。

からかい上手の高木さん Cover Collection

イヤホンズにも所属している高橋李依が主演していたアニメのエンディングテーマ集。アニメの方は5話くらいで見るのやめてそれから最終回だけ見るという体たらくだったんだけどエンディングのカバーソングは結構印象に残っていて、見るのやめる直前はそれが最大の目的になってた感すらある。「気まぐれロマンティック(いきものがかり)」、「自転車(JUDY AND MARY)」、「出会った頃のように(Every Little Thing)」あたりが特に良い。

 

年度末ということもあり結構たくさん出たので取捨選択苦労しました。