たにみやんアーカイブ(新館)

音楽について何か話をするブログです

2016年マイベストソングトップ10

年も暮れてきたので毎年恒例のマイベストを挙げたい。まずは楽曲から。これまでの記事は下記の通りですよ。

2013年 1位:パスピエ「ON THE AIR」
2014年 1位:きのこ帝国「東京」
2015年 1位:lyrical school「ゆめであいたいね」

 

さて、本題へと入る前に自分がどういうところを重視・注目するのかという話を軽くしておきたい。

アレンジ:メロディや歌詞に合った(もしくは巧妙に外した)アレンジか、全体の音の均整が取れてるか、ハッとさせられるポイントがあるかなどがポイントだと思われる。基本的に過度にシンプルなスローバラードなどは面白くないと考えるタチですな。
メロディ:耳に残るか、美しいと感じるか、など。この辺は多分に自分の感性によるところなんだけど音感がないのでどういうメロディが好きかはあまり説明できない。すみませんな!
リズム:元々重視してたんだけどここ数年は更に重視傾向に。変拍子大好き。普通のエイトビートにするよりバスドラやハイハットで16分音符を適度に挟み込んでアクセントにしているようなのが好き。あとベースはメロディ楽器みたいな気持ちでいます。
音像:説明の難しいところで、アレンジとも密接に関連してると思うんだけど要は「キレイに聞こえるか」みたいなところが評価ポイント。パワーメタルみたいなのは好きだけどハードコア系のメタルテイストは好きになれない、みたいな話。そういう観点からは、歌詞も言葉の響きとして良いかみたいなのが気になる。中身が気になるケースはレア。

 

そんな観点から選んだかもしれない今年のトップ10はこんな感じです。気になったものにすぐにアクセスできるようにリンクを置いておきました。いたれりつくせりですなあ。

 

10位:LUCKY TAPES「Tonight!」

CIGARETTE & ALCOHOL

しゃれた感じと王道J-POPの吸収咀嚼具合のバランスがとても良い。昨年のアルバムではカッティングギターが多用されたオシャレブラックミュージックっぽさ満開だったけどいい意味でヒネてなくて好感が持てる。

 

9位:ザ・なつやすみバンド「GRAND MASTER MEMORIES (feat.嫁入りランド)

 PHANTASIA

聴いてて楽しくなる曲ナンバーワン。試聴音源の後にあるワイガヤシーンが最高。こういうのって得てして邪魔になりやすいんだけど彼らが持つ独特の雰囲気が良い方向に作用させている。

 

8位:星野源「恋」

恋 (通常盤) 

逃げるは恥だが役に立つ」は見なかったけど恋ダンス動画は公式非公式含めたくさん見た気がする。そして桐山さんが様々なアイドルが恋ダンスしてる映像をキュレートしているので読むがよい。イントロのメロディが頭から離れなくなった。アレンジ的には「Yellow Dancer」の楽曲群のフォーマットを踏襲している中にエスニック要素が巧妙に入っててセンスを感じるなあ小賢しいなあって気持ち。

 

7位:SHISHAMO「ごめんね、恋心」

SHISHAMO 3 

アングラ感漂う音源で恐縮です。しかしながらこの曲は本当に良いので公式にMV作っていただきたい!寂寥感と疾走感が塊みたいに畳み掛ける歌。最初出てきた時の「絶対大人が裏にいるだろ」感からは大きく変わったなあという印象が強く、これからも楽しみなバンドになった。

 

6位:Awesome City Club「Vampire」 

Awesome City Tracks 3 

本年のイントロ大賞。そして古めのシンセ音が多用されて夜っぽさ溢れる独特の雰囲気を醸し出しており優勝。ACCはボーカル両人の声が本当に良いんだけど僕が特に気に入る曲は「4月のマーチ」だったりこの曲だったりPORIN様フィーチャー曲ばっかだな笑。因みにユキエさん派です(誰も聞いてない)。

 

5位:Suchmos「STAY TUNE」

LOVE & VICE (通常盤) 

一気にブレイクした感のあるSuchmos。どの曲も良いのだけどこれは頭抜けて良い。R&B・ソウル・ロック含めた様々な曲の濃縮還元とでも言おうか。来年さらなる上昇軌道に乗りそうですな。

 

 4位:欅坂46「二人セゾン」

二人セゾン(通常盤) 

なんで「世界には愛しかない」でないのかというとまあ時差ですな。ユニゾンの音像が綺麗、というのがとにかく印象深い。あとは少し古めのトランスみたいなシンセの音がそこかしこに入ってるのも良い。

 

3位:PerfumeFLASH

COSMIC EXPLORER  

率直に言ってPerfume久々のキラーチューン。歌詞とダンスにあった裏テーマは「和」。それをいつものヤスタカサウンドとうまく融合させて「日本を代表するテクノポップグループ」としてのキャラをうちだしたのがうまくいった感じ。 Bメロからサビにつながる歌詞の詰まった部分が良い。あとアレンジ・メロディそれぞれに静と動のコントラストがよく出てた感じが良かった。

 

2位:CICADA×GOMESS「City Light」

リズムが面白くて、独特なグルーブ感がふんだんに感じられるところがとても良い。音源はライブ会場限定発売のCD-Rのみ。配信で売ってくれ〜〜〜

 

1位:POLTA「春が過ぎても」

HELLO AGAIN

作った尾苗愛さん自身がライナーノーツで言ってるけど、春が過ぎ「ても」。「ても」が良い。温かみを感じるメロディ、無駄のないアレンジ、後ろ向きなだけで終わらない歌詞。盛り上がる感じではないけど、淡々と何度も聞いていられる曲。というか僕が歌詞の内容を機にするということはそれだけ印象に残る曲だったということでもある。いろんなシーンで聞いたし、これからも聞き続けると思う。

 

去年「聴く手段が増えてたくさんの曲を聴くようになった分、印象に残った曲のセレクトが保守的になった」と言ったけど、今年はその「聴く曲がたくさんある」ことに慣れたのか昨年ほど保守的なセレクトではないように感じる。10個選べるかなと思ったら意外とホイホイ出てきて、今年も良い曲たくさんだったなあという感想に至った。

 そんなわけで、次はアルバムの方に行こうと思います〜。20枚選んだので前編後編で。

第5回アイドル楽曲大賞2016に投票しました

いよいよ年末ですね。毎年この時期になると1年を振り返る的記事を書いてますがそのトップバッター、アイドル楽曲大賞

 

第5回アイドル楽曲大賞2016

 

去年あたりからアイドル界隈をウォッチする気力が激減しており全く網羅できてないのは自覚している(そもそも網羅するのなんて不可能だけど)。それからこの大賞のランキングはだいたい「乃木坂・エビ中・Tパレとか所謂楽曲派と言われる人が好むアイドル」中心のランキングになるので集計結果にはあまり興味がない。ただいい機会なので自分の好みの振り返り・総括に使わせてもらってるという話。

 

御託は置いといて早速行くよ!一応自分の中の縛りとしては同じ部門では1グループ1曲、というもの。あと2010年前後のグループアイドルムーブメント以降の流れに乗っている人達から選ぶべきだという考えのもとPerfumeは毎年外してます。

 

メジャー部門

1位:欅坂46「世界には愛しかない」3.0pt

www.youtube.com

 

2位:BABYMETAL「Tales Of Destinies」2.5pt

リンクはこちら(非公式) 

 

3位:わーすた「うるとらみらくるくるふぁいなるアルティメットチョコびーむ」2.0pt

www.youtube.com

 

4位:清竜人25「LOVE&WIFE&PEACE♡」1.5pt

www.youtube.com 

 

5位:乃木坂46「サヨナラの意味」1.0pt

www.youtube.com

 

 欅坂46優勝!で終わらせてもいいんだけど。比較的保守的なセレクトになったような気も。BABYMETALの「Tales Of Destinies」はアルバム内で一番好きだったので東京ドームで聴けて嬉しかった。

 

インディーズ部門

 1位:amiinA「Atlas」 3.0pt

www.youtube.com

 

2位:フィロソフィーのダンス「オール・ウィー・ニード・イズ・ラブストーリー」 2.5pt

www.youtube.com

 

3位:A応P「全力バタンキュー」 2.0pt

www.youtube.com

 

4位:Negicco「マジックみたいなミュージック」(0:48〜) 1.5pt

youtu.be

 

5位:WHY@DOLL「GAME」 1.0pt

www.youtube.com

 

毎年「インディーズ部門の方が豊か」という人は投票者の中に多いのだけど僕は逆に毎年こっちの方が選ぶの困ってた。なのでT-Palette Recordsがこちらに入ってくれてよかった。ただ、WHY@DOLLの曲はメジャーいた時(その後Tパレ移籍)のものなので、入れる時は若干の戸惑いがあったのは否めない笑

 

アルバム部門

1位:Negicco「ティー・フォー・スリー」 3.0pt

www.youtube.com

2位:BABYMETAL「METAL RESISTANCE」

www.youtube.com

3位:lyrical school「guidebook」

www.youtube.com

 今年は良いアルバムが多かった。ここに挙げた以外にもWHY@DOLLamiinA、sora tobu sakana等いろいろいいのがあった。しかし3つ選ぶとこれだな。リリスクの製作陣、アルバム作る時の構成力には毎度のことながら感心させられる。

 

 推し箱部門:lyrical school

他にありません。現場行く頻度は減ったけどやっぱ行こうという気になるしメンバーも魅力的ですからね。

 

今年は比較的外から見てる感じになってたアイドルシーン。「楽曲派はほぼ死滅してる中楽曲派(笑)という空気が残ってるのきつい」みたいなツイート見てなるほどなあと思ったけど、結果として邦楽ロックのリアクション画一化と同じ感じになってるところはある。とはいえ邦楽ロックの音作りも一時期よりは4つ打ち高速ロックは退潮した感じあるしアイドルシーンもこれから変わっていくんじゃないの、みたいなことは思います。それから過疎現場や荒れた現場ばかり話題になってる一方パフォーマンスで評価する声が多かったのが欅坂46ってのは味わい深い。来年は清竜人25が解散してしまうので行くところがますます少なくなるな。年末の欅坂46取れないの、残念であった……

 

業界の気持ちを汲みつつもチケット #転売NO にNOを唱える

最初の話が出てから随分経っているので今までの議論の繰り返しになるかもしれないけど、やっぱり書かずにはいられないと思ったので書く。

チケット転売NOとは、9月くらいに多くのミュージシャン及びプロダクションが連名で出した声明であり、とても簡単にいうと「各種転売サイト使わないでください」というようなもの。これが出て以降、ユーザー側や実演家側だけでなくオークション・市場取引などが専門の経済学者まででてきてそれぞれ主張をしてそれぞれの論が総じて賛否両論を巻き起こしている。なぜどんな論も賛否両論を巻き起こすのかというと、この問題が単純なチケット転売の是非だけではない、ライブエンターテイメントビジネスにとって根本的な複数の問題が絡み合った事案だからだ。なのでその辺を整理しつつ深掘りしていきたい。既視感ある議論が多いかもしれないけどご勘弁を。

http://1.bp.blogspot.com/-n4Zy5znzzkQ/U9y_ul94R8I/AAAAAAAAjh4/sDzmU7G0UMA/s800/kippu.png

先に僕の立場を表明しておきたい。僕は所謂ダフ屋行為は許されないものだと思うのでもっと取り締まられるべきだしチケットキャンプをはじめとする非公式二次流通サイトの最近の広告攻勢は目に余るものがあると考えているが、そういったダフ屋行為を防止するために実演家側ができることはもっとたくさんあるはずだとも考えている。なのでこの宣言については自分達の怠慢をユーザー側に転嫁するとても残念な呼びかけだと捉えている。

 

さて、本件に関連する問題というのは一体どんなことがあるのだろうか。

  • チケットの値付けと販売システム
  • 関連する著作権料の制度
  • 公式リセール制度の不備?と二次流通サイトのスタンス
  • 本人確認や電子チケット

 ひとつひとつ解きほぐしていきたい。

 

 まず、なぜ高額な転売が起きるかというと、チケットを買いたい側の人が「このチケットを得るためならこれだけまでなら払う」と思う金額と実際の販売価格に大きな差があるからだ。こういう経済学の理論っぽいことを言うと怒る人がいるが、極めて抽象化するとこういう話にならざるを得ないのだから仕方がない。要は値付けの失敗だ。特に演者がよく見える最前列エリアの席は特に値上がりしやすく、販売価格と購入者側の考える価値との開きが大きいことがわかる。

これを助長しているのはJ-POPの多くのライブで行なわれている「ほとんどの席種で値段が同じ」である現象。1万人規模の会場でも1階最前列と3階最後列の価格が同じ、ということはザラだ。海外アーティストでは最前列エリアが一番高い状態で遠く・見辛くなるほど席の価格が安くなるようになっている。

この辺の話については津田大介さん・福井健策さんの対談にうまく話がまとまっているが、プレミアム席を作れないというのは実演家側の「観客を値段で差別したくない」というロマンティシズムもあるのだけど、著作権料の算出方法が影響している一面もある。JASRACのサイトによると、基本的にライブの著作権料は「平均入場料×会場の定員」に一定の比率をかけて算出されるもの。なので入場料を部分的に高くすると減収してしまう、というジレンマに陥ってしまう。この辺は修正されるべきだろう。まさに業界全体で考えるべき問題、というわけだ。(レンタルCDの話で調べたときにも思ったのだけど、JASRAC著作権料徴収・配分ルールははっきり言って現代の多様化した実演・視聴形態やデジタル時代に対応しているとはとてもいえないと感じる)あと、第1期BiSの解散ライブでチケット代1円の見えない席というのがあったけどこのシステムを逆手にとったものなのかな、とか。因みに洋楽の著作権料はJASRACが管理していないのでこのメカニズムは働かずそれなりに席種ごとに料金がわけて設定されるようになっている。

 今言ったような話を業界の人が認識してないのかというと全くそんなことはなくて、コンサートプロモーター協会会長のディスクガレージ中西社長はインタビューで「席種だけでなく曜日などからも柔軟に価格設定された方がいいのではないかなど考える時期だ」という旨を話している。じゃあなんで最終的にああいう声明になったんだという向きも出てくるが、そこはまあ利害者賛同者が多種多様すぎるのではないかと考えられる。事業分野が多岐にわたる会社の全社方針が全事業部門を意識しすぎて「がんばろう」的なスローガンめいたものになってしまうようなものだ。参加者が増えれば増えるほど全員を満足させる提案は難しくなる。ただ同じディスクガレージの人でも主張のトーンが違うのはどうなのかと思うけど。

まあそんなわけで中西さんの言うように色々考えるべき点があって人気公演では先行販売が事実上の一般販売になってる中で「先行→一般」の販売順序には意味があるのかとか、電子チケットを活用できないかとか色々話が出てくる。特に後者は後述。ただ、需給が水モノになる以上先行で確保できることにプレミアつけるのかが正しいか、安く売るのが正しいか、というのはどっちも成立するので一概にどっちが、という話でもない。ちなみに前者の観点に立つとチケット販売サイトの先行手数料も説得力を持つのだがそれはもうすでに一度書いたしここでは改めては触れない。興味がある人は下記記事を読んでみてくれれば。

tanimiyan.hatenablog.jp

そんなわけで値付けを高くして売るのが困難、となると需要と供給のミスマッチによる値上がりが発生しやすい状況になる。そこで出てくるのがリセール、という話になる。ただ、3大チケット販売サイトでリセールシステムを設けているのはぴあだけで、しかも定価のみとなっている。定価だけでも「行けなくなってしまった!」という自体への対応としても十分働くのだけど(特に近年は大箱ライブを半年以上前からチケット予約開始するケースも多々あるので尚更)、ここでチケットキャンプなどの「サードパーティ」転売サイトを使うと買った時より高く売れることもあるし、ピアの公式リセールよりも一目につきやすいし定価譲渡といいながら手数料取られるしそもそもあれ発券済みチケットには使えないから、てなことでチケットキャンプとかの方がはるかに使う気になる、というわけだ。それを追い風であるかのように捉えてチケットキャンプが(そうでないのに)公式のものであるかのように捉えさせるネット上の「〇〇のチケットが1,000円〜!?」というのは倫理的にはアカンやつだと思う。ああいうCMを打つってことは彼らも「非公式であること」がアキレス腱なのであるということがわかっているということなんだろうけど。

 とはいえ、非公式のものの方が公式のものよりも使いやすい、というよりも公式のツールや仕組みがえらく使いづらいというのはこの国のエンタメ産業が抱える問題でもある。この前宇多田ヒカルの「Fantôme」を買ったときに「プレイパス」というレコチョク謹製のアプリでスマホ用データ手に入るよってことで早速使ってみたんだけど、よく落ちるしライブラリの検索機能ないし使えないな〜という感想を抱かざるを得なかった。リセールもそうだし電子チケットもそうだ。ぴあやイープラスはそれぞれしか備えてないし両方備えている電通系のticket boardは取扱公演数がめちゃくちゃ少ない。じゃあPeatixとかがいいかと言われるとインフラ貧弱だしそれはそれで厳しいんだけど。そんなわけで最近は電子チケットはファンクラブ連動にしてファンクラブ運営業者がやったりしてる。サカナクションとかもそうだった。ただしそれだとファンクラブ入らない人にはその仕組みが使えないことになったりもするしやっぱり共通の基盤があった方がいいんじゃないかという気がしてくる。というか電子チケットのみならず本人認証の仕組みやリセールなど、各種チケット販売プラットフォームで揃えてパッケージ化してもらった方が行き渡りやすくなるだろうなと思うところ。そういったサービス料金への転嫁をきちんと説明すれば各種手数料だって長期的には受け入れられるのではないだろうか。

結局転売がどうだって話より、業界側がユーザー側に説明することを怠っているように見受けられること、ユーザー側の行動変化に期待しててシステムで縛ろうという意志が弱いあたりが問題の根源にある気がする。本気で解決したいなら、ロジカルに施策を打ってほしい。少なくとも現状ではユーザーに責任を丸投げする行為とも捉えられかねない。日本の音楽をめぐる環境が厳しさを増す中、ユーザーへの説明責任を怠ってはいけない。音楽業界は音源販売の規模が縮小しているのでライブで稼ぐ方向にシフトっていうのはすでに色々なところで言われている話だけど、値付けからしてビジネスとして未成熟な部分が多い。それに大規模ライブなんかだと半年以上前からチケット申し込みを開始しておいてその後行けなくなった場合のキャンセルなんかも受け付けていない、というのは一方的な面もあるしそこまで万難を排せる人以外は来なくてもいいですよと言っているような感じでもある。ここからライブが文化として落ち着くためにはまだまだやらなくちゃ行けないことがたくさんある。そしてそれはあくまでも実演家及びチケット一次流通会社が努力するべきところである。別に銭ゲバになるんじゃなくて長期的に顧客を繋ぎとめられる真っ当な商売をしてほしい。まずはそこからだから、今の状態での「転売NO」には私はNOと主張したい。

ブログの移転とこれからについて

ここ2ヶ月くらいの話なんだけど、ブログのURLをTwitterで投稿しようとすると弾かれる事案がずっと続いていた。色々なサイトを見てみたところ「各種URLチェッカーでスパム扱いされてないかチェック」「Twitterのサポートサイトから解除依頼をする」の二つが必要、とわかった。前者は大丈夫だったので後者をやってみたが全然音沙汰なし。

 

というわけで埒があかないので暫定的ながら移転することにしました。はてなブログにしたのは単純にはてなユーザーだから。エクスポートしてインポートするだけだとどうにもいい感じにならなかったのでエクスポートしたファイルを直接編集してリンク修正などしてインポート。それでも個々のページが完全にインポートできなかったので個別に修正。ひとまず2015年までの記事はほぼ直しました。

 

色々これまで作ってきた資産が惜しい感じがあるけど、ひとまずはてなブログの方を当面更新していきますんでよろしくでし。

「好きな曲が1曲だけのCDアルバムをタダであげます」と言われたらどう答えるか

昨日TWEEDEESの沖井礼二さんが、奈良のレコードショップであるジャンゴレコードの店主のツイートを取り上げてこんな疑問を発していた。

実は引用した上記ツイートには下記の通り前段がある。

それがあまり読まれていなかったからか、沖井さんに来たリプライ自体は「CDがいい、配信がいい」「今時音楽は無料」的な繰り返されてきたテンプレトークが殆どだったのだけど、この問い自体は結構面白いんじゃないかと思って少し考えてみることにした。「好きな曲が1曲だけのCDアルバムをタダであげます」と言われたときに、どう答えるか。

僕の回答はおそらくこうだ。「1枚目はたぶん喜んで受け取る。ただ何枚ももらえると言われると却って躊躇してしまう」。それはなぜか、という個人的な意見から色々迷走しながら話を膨らませていきたい。

なぜ最初はいいのか。多分あまり考えてないということもあるけど、CDが増えていくと取扱に困る、というのはある。ジャンゴの店主がミニマリスト的、と述べてたけど実際この辺は多くの音楽好きには由々しき問題で、僕自身引越しの時にCDをケースから分解してKOKUYOMEDIA PASSというソフトケースに入れて体積を1/3くらいまで減らしたくらいだ。(全てのCDをインポートしている訳ではないのでとりあえず残した)

もう一つは、1曲のために入手したCDはその曲以外あまり聴かないだろうなあという予感があることだ。僕の家にはフリーサンプラーでもらったCDが十数枚(いやもうちょいあるかな)あるが、それらの中には一度も聴いていないものも相当数ある。なので最近はサンプラー受け取るのも躊躇しがちだ。なんでかというと他に聞きたいものがたくさん出てきてしまうからだ。この「音楽好き(なんでカッコ付きなのかは後でわかる)」特有の「聞きたいものが湧き出てしまう」現象は本当に厄介。旧譜も含めると聴ける音楽の量は増え続けていて、さらに大抵のものが古びない(これはあらゆる芸術・エンタみに言えそうだけど音楽は特にそうな気がする)ので、終わらない旅をずっと続けられる。なので好きな曲がただ1曲だけ入ったCD貰うなら他の聴かないし配信で1曲買いますよ、となるなあとこの話を眺めながら感じた(それはそれでレジーさんがよく言ってる「手癖で音楽聴く」みたいな話になってしまうのでよくないなあというのはわかっているのだけど)。とか言いながら同じCDを何枚も買う行為自体も引き続きやってるのであまり説得力がないかも。笑

そんなことを考えていたわけだけど、この理屈だとこの答えに「1曲だけのためにCDを買うのは…」と思ってしまうのはむしろ音楽好きな人の側なのではないかな、という気もしてくる。数多くの曲を聴く習慣がない人にタダでCDをあげること自体は割とアリなのかもしれない。僕は「最近音楽好きの人が減った」的な言説はあまり信じていない。今の新しい音楽に興味を持つ人(これだけ捉えて「音楽好き」と呼称するのもなんか変な話だ)は減ったけど好きな曲や歌が全くないという人はそんなにいないと思っているので、その人が新しい音楽に会うきっかけになればタダであげるのも悪いことではないのではという気もする(個人的な体験で恐縮だけど、複数枚買ったCDを周りにいる新曲とかあまり興味ない人に渡しても割とすんなり受け取ってくれる)。

 

とりとめもなく考察と言えるのか微妙な考えを巡らせていたけど、この質問は結構面白いなあと思った。その人の音楽に対する姿勢が垣間見える質問な気がする(当然だけど、どんな答えが出てきても悪いことは全くない)。さて、「好きな曲が1曲だけのCDアルバムをタダであげます」と言われたら、あなたはどう答えますか?

 

あ、それから沖井礼二さんと清浦夏実さんのバンドTWEEDEESのニューアルバム、先行曲がよくて期待できるのでお楽しみにだね!!

www.youtube.com

武藤彩未さんの発表を見て現代に生きるソロアイドルの大変さを改めて思う

昨日5月31日、アミューズのWebサイトにて、活動休止中だった武藤彩未さんが同社とのアーティスト契約を解除したことが唐突に発表され、それを受けて本人からツイッターでコメントがあった。

これを読んで僕が考えている楽観的な仮説を以下に記す。

  • 「アーティスト契約」は終了したけどアミューズがまだマネジメントしている可能性は高い 今年3月末に卒業して即芸能界引退になったさくら学院卒業生がアミューズのサイトでは「契約終了」と記載されていたことと比べると違いがある。武藤彩未の所属レコード会社はアミューズA-Sketch(ここもアミューズの子会社なんだけど)の共同設立レーベルであるSHINKAIなので、要は事務所直系。わざわざご丁寧に「留学後の活動は未定」とまで書いてあることやTwitterのアカウントはこれからも残るっぽい(またツイートしますと言ってるし)。これまで契約がなくなったらアイドルのアカウントが消えるのを何度も目撃してきた身としては、「これはちょっと違う」という気になっている。多分留学が長期化するので「◯年で◯枚CDリリース」みたいな縛りから解放した、ということなのではないか。
  • 本人は歌手やる気。ただしアイドルとして、ではない・・・? 書いてある通り本人はボイストレーニングを受けたりしててるしまだ歌手としてやっていく意思を示している。しかし、自分をどう表現したらいいのかと言っているように迷いがあり、おそらく活動休止前と同様の形態は望むべくもない。歌唱力・表現力については抜群なので、正直事務所もどうしようかわからないのではないだろうか。そんな中我らがベースマスターがこんなことを言っていたので期待しとくw

そんでもって、彼女が活動休止を発表した時に感じた「ソロアイドルが現代で活動することの厳しさ」というものを改めて実感した次第。現代はアイドルブームだとか何だとか言われているけど、あくまで「グループアイドルの時代」であり、ソロで大成したアイドルは文脈の違うところから出てきたきゃりーぱみゅぱみゅを除けば皆無に等しい。どうしてだろう。数え上げたらきりがないくらい理由は出てくる。

  • 一人だからダンスが少ない。ゆえに見栄えしない。(きゃりーちゃんはキッズダンサーとかいっぱい入れてステージが簡素になるのを避けている)
  • 握手や何やでCDを売ろうとした時に、メンバー数が少なくて多くのお客をさばけない。
  • グループは誰か一人でもひっかかればOKだけど、ソロだと0か1かになってしまう。
  • 女性ソロ歌手と区別が曖昧

4番目は深刻な問題ではないか。miwaや大原櫻子とソロアイドルはどう違うの??という疑問が出てきてしまう。

miwaは自分で曲を書いているからシンガーソングライターだよねって区別できるけど(それでも彼女たちSSWをアイドル的に見てる向きは多い。とか言ってると小金井の事件に当たってしまうので深くは語らない)、大原櫻子は自分で曲を書いていない(歌詞は一部共作している)。そういうあやふやな状況下で「私はアイドルです」って言い切っちゃうことでかえって自分の客層を狭めていないかな、ということを考えたりしてしまった。中田ヤスタカプロデュースで海外ウケしてティーンが好きそうなファッションをしているきゃりーぱみゅぱみゅみたいに引っかかりどころが沢山あるならまだしも、だ。前回「〇〇系」みたいな話して「アイドル」もそういう音楽性とは別レイヤーのカテゴライズだという話をしたけど、それゆえに、曲の感じで引っかかるかもしれないけど「アイドルだから」敬遠するという人は確実にいる。武藤さん自体の80'sアイドル路線が正しかったかどうかは述べない。個人的には素晴らしいステージングだと思っているのだけど。

www.youtube.com

武藤さんにはまた歌って欲しいと思っている。因みに、アミューズには阪本奨悟という「一度抜けて数年して復帰した」タレントがいる。だから気を長くしてまっとけばいいかな、という楽観的な気持ちでいるのがよろしかろうと思うわけです。

あと、ポニーキャニオンに3年間飼い殺しされた南波志帆さんもそうだけど色々と呪いになってしまうので「10代のうちに武道館」とか無理目の目標立てさせるのはやめよう(武藤さんについてはそれなりに練っていたのだろうけど)、ということを改めて思いつつ、特に結論はなく終わる。

音楽における「○○系」はジャンルなのか、という話

ネットでは定期的に渋谷系について盛り上がることが多いけど、つい最近もこんな話があった。

lit.hatenablog.jp

mohritaroh.hateblo.jp

僕が1つめの記事にはてなブックマークでコメントしたことを起点として2つめの記事が書かれているので、なんとなく乗っかりたくなった。

2つめの記事では渋谷系の源流となっている音楽として「ポストパンクとインディムーブメント」「モッズおよびそれを経由したソウルミュージック」「DJカルチャーとクラブミュージック」を挙げている。その結果渋谷系と一口にいっても多種多様な音楽がそこに含まれるしその中には共通性を見いだしにくい物も多い。もっとも記事中にて「ジャンルについて考えるときは代表的なバンドの共通点ではなく、全部を包含する物(集合でいう和)を考えた方が良い」という旨書いてあってそこはまあ頷けるところではあるんだけど、個人的な感覚からすると「渋谷系」に共通する物は音楽性ではなく創作姿勢なんじゃないか、という気がしている。この辺は僕が敬愛しているCymbals沖井礼二さんがテレビ出演して話した渋谷系講義の内容に影響を受けてる面が強いけど、若杉実さんの「渋谷系」でもDJカルチャーをベースとした温故知新のムーブメントっていうとらえ方をしているし、そんなもんなんじゃないかな、と。

そこで思ったんだけど、「○○系」と言われる物って音楽的特徴でくくるのが難しいけどその一方で「ジャズ」とか「メタル」(これらも最近色々定義が拡張して揺らいでるけど)とかと同様に音楽を分けるジャンルとして使われるのって、なんか色々不具合を起こしてるんじゃないかという風に思った、というのが今回の趣旨です。

●幅広い「○○系」とカテゴリ音楽

渋谷系と並んで(いやむしろそれ以上に)使われることの多い「○○系」と言えば「ヴィジュアル系」だ。ゴールデンボンバーが「†ザ・V系っぽい曲†」という曲を出しているが、確かにこの曲は「V系っぽさ」のある部分が端的に出ている。

www.youtube.com

ヘヴィメタルっぽいリフとドラムにどちらかというとハードロックっぽいリードギター。この激しい感じがヴィジュアル系音楽の特徴として一番分かると思う。今だとthe Gazetteあたりがそんな感じか。しかしながら、これは割と純化したものでLUNA SEAなんかはハードコアパンクっぽい感じだしGLAYとかシドになってくると特徴とも言われる激しさみたいなものも控えめな感じになってくる(あくまでこのカテゴリーで、という話だけど)。あとはゴシックロック的なMALICE MIZERやら枚挙にいとまがない。2003年とちょっと昔に出版された「ヴィジュアルロックの時代」という本では、ヴィジュアル系バンドの音楽的特性について源流など含め分析しており、多くはヘヴィメタル・ハードロックと位置づけているがパンクやグラムロックなどからの影響も示唆している。

というかそもそも「ヴィジュアル系」という名前からして、共通項は音楽性よりもその外見や立ち振る舞いの方にフォーカスされる方が多かったりする。音楽はその日現実感を増幅させるような使われ方をするので激しいものになるのではと考える。というかそういうもんでないと「V系っぽい」なんてタイトルの曲はネタだとしても成立しないよな、って感じはある。「アンビエントテクノっぽい曲」とか「シンフォニックブラックメタルっぽい曲」というタイトルの曲は出せるのだろうか。笑

一方で、狭義のジャンルは細分化が進んでる。新しいものが出てくるとそれを言い表す言葉が必要になるということがずっと続いている。でも今全く新しいものが生まれるかというとそういうことはなく、基本的に今あるものからの分派みたいな感じだ方仕方ない。メタルなんか典型的で「ヘヴィメタル」のサブジャンルに「デスメタル」があり、そのサブジャンルとして「メロディックデスメタルメロデス)」や「シンフォニックデスメタル」となったり…という風になっているし、テクノとかクラブミュージックも日々新しいジャンルが出来ている。そういった話に対して、「○○」系はむしろ言葉はそのままでそれが包括する対象がどんどん拡大している、というタイプのものなんだなあと日々感じるところである。

●日本において「○○系」とは何か

こうして考えると「○○系」とは、音楽的特性ではなく、そのアティテュードや外部特性などによって規定される類の音楽なのではないか。そう考えると、そういう類の音楽が日本では他にも隆盛を誇っている。アイドル・アニソンといったものがそれに当たる。以前「アニソンやアイドルといった分類はジャンルではなくタグでは」という議論があったけど、それはその通りで、ジャンルより一段上のレイヤーというかカテゴリーというかそんな感じ。「渋谷系っぽいアニソン・声優ソング」とか「メタルアイドル」とか、組み合わせで語られることは多い。

海外在住経験が無いので一概に日本ではこうだよみたいな事は言えないけど、マーティ・フリードマンなんかもよく言ってるとおり「ジャンル」に対する帰属意識みたいなのが薄いからこういうカテゴリーベースの音楽が色々出てきて面白くなっているんじゃないかな、と思うところ。混ぜたりするのに躊躇しないし、リスナー側も何でも聴いたりするから何やってもいい感じがある。あとはかな文字から何から、異文化を取り入れてアレンジして自分たちの物にしていく貪欲な国民性かな。ちょっと風呂敷広げすぎたかも。

そうすると、いわゆる現代ジャズ(ジャズを起点に拡張された、クロスオーバーな音楽)のミュージシャンが日本でも一定の人気を持ち、それらのミュージシャンにフォーカスを当てたムックシリーズ「Jazz The New Chapter」が2016年春時点でシリーズ3まで出版されているということはそういった日本人リスナーの気質とマッチしたから、ということが言えるのではないだろうか。(この前提としてはこれらのミュージシャンが本国での認知度がめちゃくちゃ高いというわけではないという背景がある。ロバート・グラスパーエスペランサ・スポルディンググラミー賞を取ったけどその割にはSNSのフォロワーはたかだか十数万とか数十万だ。まあそれをもって有名とするかどうかに疑問の余地があるのは認めるけど。因みにエスペランサの方がバラク・オバマノーベル賞受賞祝いのこともあってフォロワーやいいねの数は多い)これ自体まだ名称が定まっている訳ではなく「JTNC系」「今ジャズ」「リアルタイムジャズ」など様々な呼ばれ方をしている。これらは温故知新的かつクロスオーバー的な音楽性もさることながら、その包含範囲の広さも日本の音楽リスナーと相性が良かったのではないかな。

そんなところでNHKの「ニッポン戦後サブカルチャー史」で渋谷系についてやるそうなので、これを見ながらまた色々考えようかなあという感じ。

宮沢章夫、風間俊介らによるサブカル史番組の第3弾、テーマは90年代

今日はこんなところで。ちなみに僕は渋谷系も現代ジャズも好きですw