lyrical school「WORLD'S END」私的ライナーノーツという名の感想

今年一番楽しみにしていたリリスクのニューアルバム「WORLD'S END」が発売されて、やっぱり素晴らしく良かったので自分なりに感じたポイントなどを書き残しておきたい。まずジャケットが2013年の「date course」に引き続き江口寿史先生。これすごく良い。

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試聴はこちらから。

なお、Apple MusicSpotify等でも配信が即開始されているので、そちらでも是非聴いてほしいです。

各曲レビュー

コメント内の固有名詞は敬称略なんでよろしくです(以後も)

01. -PRIVATE SPACE-
まずはリリスクのアルバム恒例のSkitから。今までに比べると非日常感が強く、過去のいくつかの映画などからの引用が見受けられるところがSF的世界観の強い今作の世界に引き込む効果を出している。risanoの英語力を活かす台本になっているが、話されてる内容を聞き取ると…笑

02. つれてってよ
このシングルが出たときにプロデューサーのキムヤスヒロが「この曲は次に出るアルバムのキーになる」と言っていたが、まさにこの曲の冒頭のリリック「明日急に世界が終わる可能性があるなら」から展開されたんだなと感じられる。また、この曲は各メンバーのスキル・特徴が分化し始めたきっかけの曲でもあり、この曲を起点に聴き比べすると面白い。

03. 消える惑星
「つれてってよ」と同じ作家陣による楽曲。夜→明け方と時系列的に連続性を感じられるようになっている(後述するけどアルバム全体としてそう)。夜明けの情感を巧みに描いたhinakoバース「一緒に眺めよう空のグラデーション」が胸を打つ。MVも曲の雰囲気をジャストな感じでパッケージングしてる。

04. High5
4月のVISIONでのワンマンライブで披露された曲。2018年の夏曲…と見せかけて「アウターで過ごす日々は充電」「待ちきれないサマータイム!」という初夏くらいの感情を歌った曲。あちこちにキラーフレーズがまぶされてるけどど頭のminanヴァース「introに陰と陽」がめちゃくちゃ好き。

05. 夏休みのBABY
今の5人になってから初めてレコーディングされた曲にして2017年のリリスクの夏ソング。明るくてマイクリレー細かくてこれぞリリスクが脈々と培ってきた夏ソングの系譜って感じ。それにしてもhinako・yuu・risanoの3人の声が初々しい…!!

 

06. 常夏(ナッツ)リターン
リリスクの2018年夏ソング。スチャダラパーBOSE&SHINCOかせきさいだぁという「サマージャム'95」「じゃっ夏なんで」の2大夏名曲の作者が集結。これらの曲の続編とも言えるような一作に仕上がった。これら2作を含む各所からの引用の目立つリリックに注目が集まるが、チルアウト風味な曲調やサビでのユニゾンの美しさなどに、残暑の既設に吹く涼しい風のような心地よさを感じる。risanoヴァースの「遠すぎウケる湘南のビーチ」「余裕ブッこきマックイーン」が好き。終始risanoが低音でのハーモニーなど良い味を出している。

 

07. オレンジ
リリスクと10月に対バンを行い大いに場を盛り上げた思い出野郎Aチームが作曲、tengal6時代からラップを提供してくれていたRyohu(KYANDYTOWN)がリリックを提供している。ロングヴァースを基調としていて直近のリリスクだと「おしえて(guidebook収録)」なんかとラップの調子が近い。hinakoヴァースの青春への寂寥感やhimeヴァースのかっこよさが際立つが全員の色がよく出ていて聴きごたえあり。ここからアルバム自体も夕方から再び夜に近づいている。

08. CALL ME TIGHT
空はすっかり暗くなって、再び夜の曲へ。12月に発売された「つれてってよ」との両A面シングル曲。minanヴァース「君の声はMagic」のあたりの凜とした雰囲気が胸を鷲掴みにする。

09. Play It Cool
「CALL ME TIGHT」よりもさらに夜を深めたかのような楽曲。トラックやラップが今っぽい感じで他の曲と異彩を放っているところもあるが、歌詞は全体的に今のリリスクのステージングのスタンスを表明しているかのようで非常にクールでかっこいい。「レイニーブルー」「失恋中」で韻を踏んでるのとサビのリズムが好き。

10. DANCE WITH YOU
ライブでも度々場を盛り上げているキラーチューンが待望の音源化。この曲でも「今夜二人のせいで世界が終わるかもしれないって言っとく?」とアルバムのキーコンセプトに繋がる表現が出てくる。また、その後の「もっとボリューム上げてねぇそこのDJ」という表現は、世界に「あなたとわたし」しかいないような主人公の視点が表れており、この後の楽曲群の世界観とも通底するところがある(因みにここのminan&yuuのユニゾンが素晴らしく綺麗)。


11. Hey!Adamski!
リリスクを長く見ていたALI-KICK(ex.ROMANCREW)による提供楽曲で初お披露目以来ファンからの評判も高い曲。イントロの音がいったん止まってからの「OKリリスク、踊らせて」という台詞とテンションの高いディスコサウンドが一気に曲の世界にリスナーを引き込んでいく。「銀河の果てまで」「私の好き=mc2」等SF・サイエンス的な要素がてんこ盛りの歌詞だけどこの曲も実は一貫して「私と君」の歌詞であるように感じた。ふたりだけのパーティー。yuuヴァース「手を取り見つめあってダンスする運命なんだ2人は」はなんか聴くと胸がギュッとなる。

12. WORLD'S END
「夏休みのBABY」を書き、今リリスクに一番寄り添ってくれている大久保潤也(アナ)・泉水マサチュリーによる書き下ろしラストトラック。Pixies「Whre Is In My Mind」のオマージュから軽快なダブにつながりだんだん雰囲気が怪しくなっていく構成の妙が光る一曲。世界の終わりなのになんだかあっけらかんとして楽しそうな歌唱が逆に切なさを増幅する。こんなにかわいらしい「神様ごめんね」ってありますか?

全体的な話

skitの後、割と深夜っぽい「つれてってよ」から始まり夜明け→昼間→朝〜午後(同時に夏の季節が進行するという重層的な構造)→夕暮れ(夏も終わる)→夜が深まる→パーティーを続ける、という流れるような曲の並びをしている。この連続性を感じられる曲順がとても自然なのでシャッフルしたりすることなく通しで聴きたくなる。そうすると最後の「Hey! Adamski!」「WORLD'S END」はどう捉えればいいのか。もしかしたら夢なのかもしれない。

個人的に凄く気になっているというか興味をかき立てられるのがそのラスト3曲「DANCE WITH YOU」「Hey! Adamski!」「WORLD'S END」の歌詞に見える「世界に私とあなたしかいない」感じ、雑な言い換えになるのを躊躇せずに言うと「セカイ系」的な雰囲気。ジャケ写の背景なんかもそれらの作品と共通した感じしないかな…?2人のワールズエンド。

成長を続けるリリスクメンバーたち

半年くらい前にも各メンバーについて書いたけど、今回はアルバムでの歌にフォーカスして書く。なのでライブ中の所作とかについては残念だけど書かない。あー残念だwでもね、それでも書くことたくさん出てくるくらい5人全員が大きく成長してることがわかるのです。各人の個性がより濃い輪郭を持ち始めたことがわかる今作でもあります。

minan
minanといえば凜とした意思を感じるラップと歌唱。今作でもそれがフルに発揮されていてもちろんかっこいいんだけど、yuuという歌唱におけるパートナーが見つかったことによりminanの歌が前よりさらにうまくなっているんじゃないかということを実感している。想像する理由の一つは得意なシーンが違うから良いところをそれぞれが発揮できてるということ、もう一つは二人で高め合うかのような相乗効果が出ているからではないかな。そして二人のハーモニー・ユニゾンがふんだんに発揮されるシーンが多いのも今作の良いところの一つだ。

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hime
ラップ大好きでかわいいラップもかっこいいラップもどちらも出来るオールラウンダーラッパーhime。今作だと「消える惑星」でhinakoのラップを聴いて自分のラップのやり方を即座に変えるなど、作品内でのバランスを取るという役割も果たしている。そしてかっこいいラップはホント板についてきた感じだし、野心が現れててすごく好き。

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hinako
hinakoのラップはかわいい。デビュー当初は若干舌っ足らずなところが出ててそれがかわいさに繋がっていたが、今は「きちんとラップできていて、聴くとかわいいって絶対分かる」ラップを出来るように成長している。minanは「笑いながら歌っているのがわかるラップ」と言っていたが、まさに聴く人に歌い手の顔を想像させることが出来るラップである。また、「オレンジ」のように青春への切ない憧憬を表現させたらこの子の右に出るものはいないと思う。ザ・アイドルラップ。

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yuu
yuuはラップや歌唱に様々な感情を込めるのがうまい。このアルバムでも色々な表情を出しており、楽曲に色を添えている。個人的には「つれてってよ」「常夏リターン」等で見られるようなアンニュイな雰囲気は彼女ならではだなあと思うところ。そして後半の「DANCE WITH  YOU」「Hey! Adamski!」「WORLD'S END」あたりではがっつりエモーショナルに歌ってもいるのでそこも聴きどころ。

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risano
メンバー内で唯一の低音の持ち主であるrisanoはどの曲でも楽曲を支える重要な役割を果たしている。それが特によく出てるのが「常夏(ナッツ)リターン」や「WORLD'S END」のサビの下ハモリ。あと海外在住経験があることもありどことなく日本人離れした歌い回しをすることろもまたいいアクセントになってるなあと感じる。あとはskitや「WORLD'S END」の冒頭など飛び道具的な役割もこなせるのが強い。

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もちろんここからの全国ツアー・更にその先も楽しみなんだけど、まずはこんなにいいアルバムを出してくれてありがとうという気持ちでいっぱい。本当にお勧めなのでぜひ聴いてください。もしよければライブにも来てみてください。