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レキシのライブに見えた「フェス→ワンマンライブ」の導線に横たわる壁

Music レキシ

今月の頭に、レキシのワンマンライブに行ってきた。一昨年に本格的にライブ活動を始めた新代田FEVERからバンド形式でのライブには欠かさず行ってたところずっと人気に会場のキャパシティが全く追いついていない感じがしていた(チケットは常に即完売)のだけど、新代田FEVER(300)→LIQUIDROOM(900)→赤坂BLITZ(1500)ときて、今回Zepp Tokyo(2500)。今回一気にキャパ拡大。しかしながらそれでもあっさりチケットが完売したのはここ2年の夏フェス・ライブイベントへの積極的な出演で場を盛り上げてきた成果かな。直前で何度か追加販売したり当日券出したりしてたけど結局その本数はわずかだったみたいで入ってみれば普通に会場はパンパンで空調効かせてくれないと大変という状態だったり。

先に僕個人の感想を言うと今回も超楽しかった。まあなんというかレキシのワンマンライブは池ちゃんこと御館様をはじめとしてレキシバンドのメンバーもみんなスキル高いミュージシャンで(御館様以外に風味堂渡和久こと元気出せ!遣唐使とヒックスビルの真城めぐみことお台所さまと、主役張れるボーカリストを2人もコーラスとして従えてる時点でまずすごい)、その人達が全力で音楽を使って遊んだらどうなるか、という典型例みたいなもんでして、もう大いに楽しかった。ネタ的には大奥の途中でセプテンバーを歌い出した瞬間に笑いが止まらなかったし、演奏面で言うと今回はお台所さまがいるからハーモニーがすごくて、やっぱり「ほととぎす」が一つのハイライト(間奏での悪ふざけも含めてw)。それからライブ初披露だった「隠れキリシタンゴ」がMC母上(Mummy-D)のラップ(譜面台思いっきり見てたけど)だけでなく演奏の切れ味がものすごくて本日のベストアクトだったと思う。

ところでそのライブレポートが公式Webサイトに出ていたので今日はそのお話。

BUSHI★ROCK FESTIVAL |レキシ ライプレポート

さっき音楽で遊ぶって言ったのは、とにかくパロディの嵐で古今東西を問わず様々な曲に(曲の途中で)脱線していく御館様(とゲスト)。そしてそれをただのコミックバンド的悪ふざけで終わらせるんじゃなくてきっちりとした演奏で連続した音楽として成立させるレキシバンドの面々。今回のライブレポートはそんな元ネタの数々をきっちり解説してくれてる。全部書いちゃうと拍子抜けになるんだけど大事なことなので敢えて引用させていただく。一部書いていない物もあるのでその補足。

  • まず「BUSHI★ROCK FESTIVAL」が「FUJI ROCK FESTIVAL」のパロディ(なぜこのフェスをわざわざパロディにしたのかはライブレポートの後半を読んでください。そこまでネタバレするほど無粋ではないのでw)
  • 「大奥」の後半のシンガロングで突然EARTH,WIND&FIREの「September」を歌い出す
  • 最初のMCで「希有な人達」→「希有's」→「B'z」で「Ultra Soul」を歌い出す
  • ゲストが輿に乗って入場する際に演奏されるBGMが「水戸黄門(しかも歌詞が毎回めちゃくちゃ)」
  • いとうせいこうa.k.a.足軽先生がゲストに登場して「恋に落ち武者」を弾き始める指示を遣唐使にしたのにそのまま横で「キラキラ星(進行が似ている)」を口ずさみ邪魔する
  • 曲の途中で転調する直前のサンプリング部分を生声で再現し、そのまま安田祥子由紀さおりの「トルコ行進曲」を歌い出す
  • 安藤裕子a.k.a聖徳ふとこと歌った「ほととぎす」の終盤に「ふたりなんだからあの曲歌っちゃうか〜」といって“なぜか”安全地帯の「悲しみにさよなら」を歌い出し、「それじゃないから!」と御館様が怒り郷ひろみ&樹木希林の「林檎殺人事件」を振り付け付きで歌い出す(この曲については安藤裕子のカバーアルバムで実際にデュエットしているので一種のファンサービス的な要素もある)
  • 「古墳へGO!」では海援隊の「JODAN JODAN」のパロディで「K・O・F・ためて〜UN!!(元ネタではさすがにためないが)」を何回かやったあとに、日本では西城秀樹のカバーで有名な「Y・M・C・A」に移行
  • 本編最後の「きらきら武士」の導入でハナレグミ「家族の風景」を替え歌で「貴族の風景」と歌い出す。その後本人の「甘えん坊将軍(ちょっとやったあとにやらない宣言)」、坂本九上を向いて歩こう」等色々歌いながら進行
  • 新曲「REKISHI DISCO」の途中でPerfumeチョコレイト・ディスコ」の踊りを披露
  • エンドロールにThe Beatles「The End」を使用

音楽以外の小ネタ(特に堂島孝平a.k.a.マウス小僧JIROKICHIから教わったあまちゃんネタがとにかく多かった)は省略してこんな所かな。曲自体にもパロディやらオマージュやらが沢山ちりばめられてるんだけどそれについて全部言及しちゃうとキリが無いからやめておこう。というわけで面白かったです、大いに盛り上がりましためでたしめでたしとなる訳なんだけど、最終段落の後半部分を読む限りではそうではないというようなことが伺える。

この日のライブ中、レキシは何度も「後ろの人には伝わらないって。新代田FEVERでやったほうがいい」と吐露していた。「なにしにきたの? 早く帰れ(笑)」と、客席を罵倒する、おなじみのやり取りがなかったのも、会場が大きくなればなるほど、冗談や真意が正しく伝わらないかもしれないという配慮があったからだろう。レキシの人気が増し、キャパが拡大するにつれて、観客に伝えたいという思いは増しているのではないかと感じた180分であった。

レキシのジョークやネタの真意、というかジョークやネタそのもの自体が伝わっていないかもしれない、という心配させるような雰囲気は確かにあった。というかはっきり言ってしまえば伝わっていなかった。まずフェスで披露されている曲とそれ以外の曲の温度差がすごかった。そして脇道にそれた歌や、懐メロ・懐かしネタのジョークの大半はウケが悪かった。それはもうはっきりわかりやすいくらいに。過去のライブから椎名林檎斉藤和義などのビッグなゲストが出演したときに「わかりやすく盛り上がるんじゃねえ!」って御館様が怒ったりするのはもはや定番だけど、それは平時の盛り上がりもあっての話で、今回は全般的に反応が薄い中「大奥 ~ラビリンス~」「きらきら武士」「狩りから稲作へ」でわかりやすく盛り上がりを見せ、特に後2曲は観客の歓声が他の曲と大違い。「Let's忍者」ではいつもなら一緒に伴奏無しでシンガロングするところがあるんだけど歌ってる人が少なくて「全然歌ってへんやんか」と御館様お怒り。終演後に「内臓が痛くなった」と言っていたとのことだけど、あれだけのキャパで、フェスでやっている曲以外の手応えがなかなかえられないのであれば、それは堪えるよなあと。「妹子なぅ」「Let's忍者」辺りは決してやってないわけではないと思うんだけど、いまいち反応薄いのはどうしたことだったんだろう。

レキシのワンマンライブは上に挙げたような古今東西の音楽を包括した脱線をする(しかもいちいち上手いところがいやらしい)しそもそも楽曲自体がPファンクを中心としながら様々な音楽性を取り込んでいるので(1枚目の「レキシ」のライナーノーツをみると、その辺りのアレンジをかなり意図的に練っていることがわかる)、色々知っていた方が楽しめるライブであり、どちらかというとワンマンライブに行くにあたってはCD聞いておいた方がいい類の物ではある。やや意地悪く言うと、深く楽しむことに一定のリテラシーを要求されるライブ。ただフェスの短い時間ではそこまでの表現をしきれないので、盛り上がりを勘案した結果比較的シンプルに笑わせる部分自体が先に立ちやすい。それ自体は間違っていないし、それをやるときにも地力があるのでただのコミックバンドで終わらないからこれだけのファンを獲得することが出来たわけだけど、惜しむらくはここまで殆どを「きらきら武士」「狩りから稲作へ」の2曲で押し通してきたこと。この2曲やるだけで充分30分使ってしまう(ワンマンでは「狩りから稲作へ」1曲だけで30分消費することもざら)ので、他の曲が入る余地はない。まあCD音源では合計10分なんだけどさ。とにかく結果としてはフェスを見てワンマンに見た客にしてみたら知らない曲ばっか、という状態にはなってしまっている感はある。まあワンマンライブ来るならアルバムの1枚くらい聴いて来いよ、とは思うけど。今回はゲストもチケット発売の時点で発表されてたわけだし。とはいえ下手したら人気が一過性の物になってしまう可能性もある。

レキシの場合は極端な例だけど、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのデビュー10周年を記念して行われる横浜スタジアムでのファン感謝祭(リクエストライブ)も同様な構造が表れたケースと言えるのではないだろうか。実際にライブでやる曲をファンからの投票で決めることにして、ファン投票の中間集計をしたところ上位を占めたのはライブにおける定番曲ばかりだった。これに関してはライブ行かない人にまで投票させるとこうなるのは仕方ないところではあるが、フジファブリックなんかも志村和彦在籍時の曲の盛り上がりに現体制の曲は未だに勝てていない。このように、ライトなファン(まあどこからがファンなのかという線引きの問題はあるけど)から熱心なファンに持ち上げるに当たってどのような工夫をするか、定番曲や代表曲以外の「ディープな魅力」をいかに伝えるか、というのはこれからも課題になるのだろうかな。フェス全盛の時代、ミュージシャン側は限られた枠でしか伝えることは出来ないし、観客側もお手軽で凝縮されたいいとこ取り出来るパフォーマンスを求めていて、両者の気持ちは思いっきりすれ違っている。先述の通りレキシは観客を揶揄して「わかりやすく盛り上がるんじゃないよ!」とよく言うが、今ほど観客からわかりやすく盛り上がれる物が好まれている時代もない。フェス→ワンマンの間にはこのアーティストとファンの想いのすれ違いが深く横たわっていて、これをいかに崩せるか、というのが様々なミュージシャンにとっての悩みの種なんだろうなあ、ということをものすごく感じたライブとライブレポートだった。

しかしながらこれを公式サイトで書いた、という異例の事態に相当な苦悩が伺える。結果として「盛り上がりました!」としか書けない大手Webメディアの梯子を外す形にもなってしまっているが、それでも出さなくてはいけない理由があったんだろう。次回の新木場2DAYSも行くけど、その前段としての今年の夏フェスで、どういうアプローチを見せるのかも観に行きたいところ。今のところレキシが出るフェスに都合が合わず行く予定が立っていないんだけど……