たにみやんアーカイブ(新館)

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ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013の思い出話〜RIJFはアイドルグループの出演で「変わった」のか?〜

日曜日に日帰りでROCK IN JAPAN FESTIVALに行ってきた。

前に行ったのは自分として初めての夏フェス体験だった2009年の2日目・3日目。PARK STAGEとSEASIDE STAGEが新設されてステージ数が最大になった年。モッシュ・ダイブ規制を強固に打ち出した年で(初日だったので僕は見てないんだけど)Ken Yokoyamaが規制に異議を唱えてダイブを煽った結果その後一切RIJFおよびCDJに出演しなくなったり、Dragon Ashの「Fantasista」に登場した10-FEETのTAKUMAが説教ラップを投下したり、志村正彦在籍時のフジファブリックのROフェスにおける最後のライブが見られたり等それなりに出来事のあった年だった。

そこから夏フェスは違う物に行く年が続いてた。まあ単純に他のフェスの方が好みのメンツが多かったってだけなんだけど。そんな中今年になって急にRIJFに行くことにした理由はBABYMETAL、PASSPO☆、BiSをはじめとするアイドルや坂本真綾など異なるジャンルのミュージシャンが一斉に追加されたのがあって。とまあ、ぶっちゃけた話BABYMETALとPerfumeが同じ日にやるのでというのが動機の半分w残りの半分はここまで大胆に変革しようとしたRIJFの姿を見たかったというもの。なんだかんだで東京から近いところでやっていて動員も多く、邦楽オンリーのフェスとしてはおそらく一番シーンへの影響力のあるフェスが、今回DJブースに大量のアイドルを投入してきた。元々ボカロPが入っていたりとかはしたものの、これはかなりの事件ではないかな、という話(まあ実際にはアイドルだけではなくてヒップホップ・R&Bなどの楽器を必要としないミュージシャンも複数組み入れられたのだけど、まあいままでも普通のステージで呼ばれてはいたしね)。

さて。そんなわけで感想を述べたりしつつ、僕が見たRIJFはどうだったのか、変わったのかというお話。書いたら超長くなったので、今回は主に夕方以降のアイドルの話、というかほぼBABYMETAL、9ninePerfumeの話。

●前日までの話

因みに当日見たのはこんな感じ。

というわけで、見る人が見ればとても僕らしいと言われてしまう選定。何かってギターロックバンドが殆ど入ってないw唯一入っているDOESはまあ時間とロケーションの都合もあるんだけど、下記の発言のアンサーを聞けるような気がしたから。

しかしこれ、本人どういうつもりで言ったのか知らないけどツッコミどころが無数にあってなんかすごい。なぜももクロだけは例外なのか、ロック聴いてトガっているとはどういうことなのか、通常盤と銀魂盤というアイドルとそう変わりない売り方をしているミュージシャンとしてはこの発言は鋭利なブーメランなんじゃないかとか。

まあ結局何も言及なかったんだけどね。

ところで、既にPerfumeきゃりーぱみゅぱみゅがGRASS STAGEでアクトを務めている状況で 「アイドルの出演でRIJFが変わったのか?」という議論をするのはちょっと変な話かもしれないけど、中田ヤスタカプロディースで徒手空拳で乗り込んできて道を切り開いてきたPerfumeやその延長上の音楽性に位置付けられるきゃりーぱみゅぱみゅと今回DJブースに加わったアイドルグループは、基本的に性質が違う物でしょう。

その上で、DJブースどうなんかなと思ってたときにさっそく1日目の初っ端にきたツイート。

たぶんこの文章の「ロックフェスはアイドルにとって「アウェーの場」ではなくなった」という一節を指してるんだと思うんだけど。僕は「夏フェス」はアウェーじゃないけどロックフェスはまだアウェーかなって位の「フェスによる」って立場だけどそれは一旦置いておいて、このツイートを見た後に家に帰ってTV付けたらちょうどWOWOWRIJF生中継でPASSPO☆の「妄想のハワイ」やってたんだけど、そりゃあもうかわいそうなほどに盛り上がってなかった。最前はもちろん盛り上がっていたんだけど、最前以外の無反応さがすごかった。

「妄想のハワイ」はクイックレポートによるとMCの後だから場内が冷えた後の曲。ああなるほどね…って感じ。因みにBiSも同じような感じだった。BiSはおそらく過激というパブリックイメージが先行しすぎていてそれにしてはわりかし普通だったという感触だったんじゃないかなと思うところで、まあありていにいうと若干滑ったのかな。ただ、1日目は金曜日ということとメンツにわりと硬派なロック・パンク系のバンド(ONE OK ROCK、coldrain、HEY-SMITH、あとはマキシマムザホルモンとかもかな)が多く配されていたこともあり若いロックリスナーが多いということもあったのも、彼女等の苦戦の理由の一つなのではないかな。おそらく3日間の中で最もアイドルと縁遠いリスナーでなおかつ若くてお金ないから興味ないのに手を伸ばそうとしないわけだし。

そんな中2日目の様子は確認できず(アップアップガールズ(仮)は3日目の放送にまわされ、でんぱ組.incは生中継が始まる前に用事があって家を出た)、そのまま3日目というか僕の当日へ。

●BABYMETALのライブがフェスで盛り上がる理由

とはいえ、BABYMETALに関しては盛り上がるかどうかはあまり心配していなかった。別にひいきするわけじゃなくて、他のアイドルグループとフォーマットがあまりにも違いすぎるから。具体的にいうと、以下の点。

  • 必ずバックバンドがつく。骨バンド(実はエアバンドのホネホネロックみたいな人達)、神バンド(実際に演奏をする白塗りの怖いお兄さん達)の2種類。DJブースなのでおそらく骨バンドと予想していたし実際にそうだったが、エアだとしても実際にバンド付きであること自体はロックフェスに来ている客にとってはすんなり受け入れやすいフォーマットである。
  • MCが一切ない。これは彼女達にはメタルの化身であるキツネ様が憑依しているという設定になっているためであり、最後に「See You!」といって帰るのがお決まりになっている。なので事前に指摘されていた「MCでだれる」ということがそもそもない。
  • 音楽性。特に今年メジャーデビューしてからのシングル曲については思いっきりメタル色を強めていて、激しさはそこいらのバンドよりも遙かにある。その分モッシュなどを誘発する可能性も充分にあるけど。

まあ、それでどうなったかというと、最前エリアの盛り上がりは尋常でなく、サークルモッシュが複数発生し、最後の「イジメ・ダメ・ゼッタイ」ではウォール・オブ・デス(一旦広がってから合図に合わせて中央めがけて突撃するモッシュ。危ない。)が発生し(まあこれはベビメタ側が煽ったのもあるんだけど)、更にそこにダイブする者まで現れる状況(だから危ないって)。そして最前以外のエリアの様子も折に触れてみていたんだけど(ちょうど最前と後を仕切る柵の辺りにいた)、普通のバンド程じゃあないにせよ腕上げだったりオイオイコールがテント内の半分くらいの人から上がったりしてたわけで、まあ成功だったんじゃないだろうかな。

個人的な話をすると、スタンディングでもそれなりの尺でもBABYMETALのライブを見るのが初めてで、シングル曲全部やってくれてとにかく満足だった。SU-METALの歌のうまさ、声の通りの良さについてはもう言うこと無しだわな。そしてYUIMETALとMOAMETALの二人のパフォーマンスの魅力。「ダークヒロイン」という触れ込みなんだけど、生で見るとホントかわいい。

まあ身も蓋もない話をしちゃうと、BABYMETALの音楽はRIJFに来ている「フェスリア充」の人達が「ロキノンノリ」で楽しむのにものすごくマッチしている音楽だったんだと思う。多分冬に生バンドで普通のステージでやってももう違和感ないでしょ。

と、ここまでは僕としては既定路線でした。いい意味で期待を裏切られたのは次の9nine

9nineはすごく良かった。そしてPerfume

9nineは子役出身で女優としても活動している川島海荷Perfumeあ〜ちゃんの妹である西脇彩華が所属しているなど、それなりに話題性があるはずのグループである。はずっていうのは嫌らしい言い方であるのは自分としても自覚はしているけど…それはさておき、9nineの特徴は「正統派」であることだという。僕はテレビで1・2回見たことあるレベルだったわけだけど。正統派ってどういうもんなのかって想像があまりついてなくて、むしろ僕は80年代の松田聖子くらいの想像をしていたわけだけど、見てみたら見事に裏切られた。

まず入場のSEが流れる。そこでちょっとストイックな雰囲気に。そして最新シングルの「Evolution No.9」となったわけだけど、ここですごく面白かったのは四つ打ちのリズムになると観客が突然ノリ出したところ。ここには西脇彩華もその後のWOWOW生放送にスタジオゲストで出演した際に「四つ打ちのどん!どん!どん!って音が鳴っただけでノリ出すのがすごい!」と感心してた。Perfumeサカナクションによる調教の賜物ですかね。笑

MCも簡単な自己紹介にとどめ、その後だんだん正統感・爽やかさを出していって、後半ではみんなでフリコピしたりタオル回しをしたりも。全く手綱を緩めること無く30分間はあっという間に終了。期待を遙かに上回るアクト。会場もBABYMETALほどとは言わずともいい案配に人が入っており、途切れぬ盛り上がりを見せ、うまく行ったと言っていいんじゃなかろうか。しかし西脇彩華のMCでの会場掌握能力はすごい。西脇家のDNA恐るべし、である。

結果として、この日出演したアイドルは共に成功を収めた。でも冷静に考えたらこの日はPerfumeがでてるわけで、BABYMETALは事務所の後輩な上に振り付けがMIKIKOMETAL(世を忍ぶ仮の姿ではMIKIKO先生と呼ばれている)だし、9nineは先述の通りあ〜ちゃんの妹がいるわけだし、かなり有利な条件でやれているということを考慮に入れた方がいいとは思う。それでも彼女達、特に9nineは良くやったと思う。

因みに9nineの成功要因は曲順にあると思う。特に新曲のEDM色が強い「Evolution No.9」を先頭に持ってきて入場ジングルからストイックなダンスを続けて披露したのは大きい。そんでもって、このダンスが静と動の切り替えがはっきりしたメリハリのついたダンスで、若干Perfumeを連想させるところがあるのだ。

youtu.be

これ多分PASSPO☆と比べるとわかりやすいと思う。音は多分PASSPO☆の方がオーディエンスとの親和性高いのかもしれないけど、ダンスはおそらく9nineの方が親和性高かったんだろうと推測される。

www.youtube.com

そういう意味でも日取りに恵まれたかなとは思う。

 

そして最後のPerfume。まずだいたいのアクトの流れについてはここを見てもらえればいいとは思う。

Perfume | ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013 | クイックレポート | RO69(アールオーロック) - ロッキング・オンの音楽情報サイト

ただしここには大事なことが書かれていない。あ〜ちゃんが「ロックっていうものの捉え方が変わっているのかなって」と言っているところ。これは話の後半部分なのだ。この前にあ〜ちゃんは自分たちが大トリになっていることと、自分の妹が今日別のステージに出演していることに言及している。

「私達のような特殊なジャンルの人間を、こんな歴史あるロックフェスに呼んでくださって、それだけでも凄いのに今年は大トリにまで抜擢してもらえるなんて、(中略)JAPANのみなさんはロックとは何かということについていつも考えていらっしゃると思うんです。(中略)今日、私の妹もジャパンさんに出させて頂いてるんですよ。9nineって言ってねえ。5人組なんですけど。そこにはちょっと大人の事情があって。(中略)でも、アイドルはすごいよ、腹のくくり方が違うから。今年はたくさんのアイドルが出ていて…」(聞き取りでうろ覚えなんで言い回しなどは微妙に違うところあるけど)

こんな感じで「ロックっていうものの…」に続くわけ。このMCはかっこよかった。殆ど誰も言わなかった(Dragon Ashのkjはなんか言ってたみたいだけど)この話題に直球で言うべき時に言って、このフェスの変化を一身に背負った存在となった。誰よりもたくましく、むき出しのステージ。「SEVENTH HEAVEN」や「心のスポーツ」などの曲が聴けたのはもちろん嬉しかったんだけど、この日のPerfumeには何か一種の凄みがあった。照明と歌とダンスが揃ってこそのPerfumeのステージではあるけど、それだけではないんだなあということが改めて感じられた。この3人だからこそ出せるものがあるんだなあと。

●変化は始まったばかり

ちょっと前の方で言った話について再度言い直しておくと、サマーソニックのようにあまりジャンルを特定しない「夏フェス」ではアイドルが出ることにそんなに違和感はなくなってきつつあるけど、RIJFのように「ロックフェス」を標榜するイベントはまだアイドルにとって「アウェー」である、と思う。あとはそれに加えて出演者のアクト次第なんじゃないかなあとも思う。結局はイベント次第(更にいうと日割りも)であり、ミュージシャン次第だと。というくらいにはまだ各フェスには色があるんだな、と改めて思った。RIJFに来る人はそれなりにミーハーな人が多いのかな、と思っていたのだけど、思っていたほどではなかったようだ。まあつまるところ変わったのか変わってないのか、というとあんまり変わってなかったのかなあというの代わりと率直な感想。加藤ミリアは入場規制になるけどアイドルに人が集まるほどではない、というのが今のRIJFの客層なのかも。それも日取り(特にその日のヘッドライナー)に随分左右されるとは思うけど。

とはいえそれはあくまで今の話。今回はアイドルのDJブースへの投入はタイムテーブルの発表と同時であり、その時点でチケットの抽選は最終抽選しか残っていなかった。TLを見ていた感覚ではそこで申し込んだ人は殆ど当たってなかったように思う。相当倍率は高かっただろう。なので、ホームのような雰囲気が醸成されないのはある意味仕方の無いことである(おそらくそこも含めての実験だったのだろうけど)。じゃあ次以降はどうなるのか。「アイドルがいること」が既定路線となったときにどうなるのか。おそらくアイドルファンが増えるのでやりやすい環境にはなるんだろうけど、それぞれのノリが固まっちゃあ面白くないなあとは思う。

RIJFの今年の大変化、僕は支持。だけど、タコツボ化するのではなくて、あくまでフェスが音楽との出会いの場であってほしいと思う。自分としてもそういう意味では今年は随分初物を見たのだけど、まあその辺の話はまた今度。