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音楽はどう死に、どう生きるのかみたいな話

1ヶ月も前のエントリだけど、再び佐々木俊尚さん界隈でRTされてたね。

レーベル運営の悲喜交々:HMV渋谷閉店にまつわる僕の見解

ここから佐々木さん的には下記のようにインスパイアされた訳なんですが。

音楽も映画も、90年代末前後にバブルがあったのだと思う。シネコン、DVDプレーヤー、CDラジカセなどの新しい装置が安価に普及してコンテンツの供給が過剰に求められ、これが市場を見かけ上大きくしてバブル化。でも結局、マス消費を延命できるのではという幻想を産み出しただけだ。Tue Sep 28 14:27:45 via seesmic Web

そこで全然別のことを考えた僕。

音楽業界が忘れてしまったものっていうのは、「市場を創る」「顧客を育てる」ということなんじゃないかと。

HMVは死んだけどタワレコは生きている。ナップスターの失敗とか多少のマイナス要素もあるけど、生きているし、今週の日経ビジネスの社長インタビューでは危機感を語りつつCD販売事業は黒字であると語っていた。

僕が今みたいに月にたくさんのCDを買う生活になったのは、会社に入ってから1年ちょっとくらいからのことで、それからは新品CDのほぼ100%をタワーレコードで買っている。なぜか。タワレコで買い物することが楽しいから。そして、色々発見できるから。上のブログでも言及されているタワレコの手書きポップって、気になっているCDを試聴・購入するにあたり、結構後押ししてくれる存在なんだよね。そして関連ミュージシャンを脇に置いておき、3枚CDチェンジャーで試聴できるようにするというやり方。これで知ったミュージシャンは数知れず…僕にとって代表的なのはavengers in sci-fiかな(the band apartの関連ミュージシャンとして)。でもこれって、Amazonのレコメンドと本質的には同じなんだよね。ただAmazonの方は購買履歴を元にしているので売れている物には売れている物が関連づけられやすいという難点があるけど。

そういう風にしてタワーレコードは買い物することの楽しさを感じさせてくれる。そして、ブログでも指摘があるように、タワーレコードでは比較的プッシュするミュージシャンの選択に店舗の裁量がある(特にマイナー物)。特に新人イチオシとかは押すときはものすごい押してる。それに釣られて買うとかしばしば。この辺の販促は、ベストセラーになった「世界の中心で、愛をさけぶ」でもあったし、同様の販促をしている会社として、ヴィレッジ・ヴァンガードが挙げられる。

というようなことを業界全体としてやって間口を広げようとせず、都度都度の短期的な売上・利益増を優先し続けてきたのが、音楽業界の衰退の一員だと僕は思う。twitter上でレンタル批判を良くするけど、これも凄く元をたどればここに行き着く。だって、レンタルって結構まとまった数で出せるからね。

さて。ここで佐々木さんのツイートに戻るけど、90年代末を境に確かに日本におけるCDの売上は減っているけど、実は映画は減っていない。日本映画産業統計という、日本映画制作者連盟が出している統計によると、 実は1990年代よりも2000年代の方が興収・動員数共に上だったりする。元々映画って日本有数の娯楽(ゴールデンウィークっていう言葉は映画産業のキャンペーンから来ている)だったんだけど、テレビが出てきたときに有効な手を打てない結果没落していったところに囲い込みして入場料とか引き上げちゃったもんだから余計衰退していったという苦い歴史があって、最近は色々な割引をしてなるべく映画館に来てもらえるようにしている。ついでに言うとシネマコンプレックスっていう、とても快適に映画を観られる環境が全国各地に出来たことも寄与していると思う。

じゃあ音楽何してたの?って話。ロックフェスで目当てのバンドしか見ない客がいっぱいいるのは、消費者の音楽世界を広げるようなことを何一つしてない音楽業界のせいだ。PingとかAppleに提案されている時点で全世界の音楽産業は本来門外漢のAppleに心配されていることを恥じるべき。そしてレーベルのエゴでそのPingに自国の音楽の大半が乗らない日本のレコード会社はもっと恥じるべき。

と、ここまで書いてきて思ったのは、きっとプラットフォームのソーシャル化っていうのは音楽業界の最後の切り札なのかもしれない。誰かがPingで「Like!」という。それをそのフォロワーが買う。それは、「音楽の目利きであるレコード書婦の店員のお勧め」にせよ「音楽好きの友達のお勧め」にせよ「自分とこのみが似ている人のお勧め」にせよ、タワレコのポップをそれぞれがPing上に作り、その情報を頼りに物を買うという生態系が出来るということなんだろう。まさに佐々木さんが「電子書籍の衝撃」で「コンテキストによるマッチング」と呼んだ新しい消費の形。まだPingは未成熟だけど、iTunes 10.0.1での改善を見るに、これからもどんどん洗練されていくと思われる。

となると、音楽業界がやるべきなのは、この流れを後押しするって事だと思うんだけど…さあ、どうする。