たにみやんアーカイブ(新館)

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「亀田音楽専門学校」のケーススタディをしてみよう〜#08 「フライング・ゲットのメロディー学」

こんにちは、NHK Eテレ亀田音楽専門学校ケーススタディ第8回目です。今回他の更新挟んでないのに日曜日になっているのはお察しください。

さて、これまでの回のケーススタディはこちらから。ここだけでもずいぶんな量になってきたなあ。

さて第8回「フライング・ゲットのメロディー学」。今回も講師は槇原敬之さん。例により前半は講義内容を要約して、後半はその内容に従ってケーススタディということでその手法が実際に使われている曲を解説するという形で。

●講義の要約

フライング・ゲットとはCDが通常水曜日に発売されるけど火曜日に入荷してすぐに店頭に並ぶのでそれを買うこと……ではなくて、音の始まりをフライングさせる技法である「シンコペーション」がテーマ。

シンコペーションとは

ジャズなどで使われるメロディーの音の先取りの技術。例としてGLAY「誘惑」エレファントカシマシ「今宵の月のように」西野カナ「会いたくて会いたくて」が流れる。

例として、童謡「たき火」のメロディーにシンコペーションを加えてみることに。そうすると前のめりでちょっと落ち着きがなくなり(笑)、グルーヴィーなファンクっぽい演奏に。音楽家ではシンコペーションのことを「食い」と読んでいるそうで(この後この表現何度も出てくる)、シンコペーションによって弾みがついてメロディーに躍動感が出る。それがウキウキ、ワクワクという気持ちにさせる効果があるわけだ。

さて、JPOPのシンコペーションを多用した名曲、桑田佳祐波乗りジョニー」を題材にその効果を見てみる。

ーきだといってーんしになってーしてわらってもうーいちどー♪」と、強調したい部分を伸ばすことによって、歌詞に勢いを付けられる。それにともなって、歌詞に表情・感情を込められる。シンコペーションさせないと押さない感じ、拙い感じなって波に乗れない物になってしまったw

また、槇原敬之「SPY」もシンコペーション。「しんじてるしーんじてる」のところがそれで、歌詞に前向きな印象を与える効果を狙っている。

槇原敬之が選ぶシンコペーションを使った名曲

シンコペーションだらけの名曲、世界に一つだけの花

世界に一つだけの花」もまた、シンコペーションが多用された名曲。SMAPに作るに当たって、個性があって楽しい人達なので、ダンスもあるので自由でリズミカルな曲にしようと思って作ったとのこと。そして、この曲はリズムをシンコペーションで崩しても1小節たつと必ず戻るようになっている。また、サビのリズムは「エンヤートット」のお囃子みたいに聞こえる。合わせてやってみたら抜群に気持ちよく聞こえてきた。実はこのシンコペーションの多用は日本人らしいリズムなのでは?日本人にはリズム感ないとか言うけど、そんなことないかもしれない!

結論

JPOPはある意味民族音楽フライングゲットは、気持ちが前に行っちゃう感情のほとばしりだけど、エンヤートットのリズムで合わせることもできるという。音楽ってとても素敵な構造物。こういう音楽を作れるJPOPって素晴らしいなあと思いますよ。

ケーススタディ

というわけでケーススタディ。どこでメロディーを食っているかを太字で表現してみたので、注目してくださいな。

シンコペーションで明るくなる曲

AKB48恋するフォーチュンクッキー

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2013年を代表するパーティチューン、恋するフォーチュンクッキー。この曲は全編にわたってシンコペーションが使われているのが特徴で、「ーなたのことがーきだから」という形で終始食っているので食ってない場合よりもはるかにリズミカルになるわけだ。そしてサビも「恋するフォーチュンクッキー」で食ってる。それゆえに超楽しい歌になっている、ということなんだろうな。

以前から「AKB48の曲そんな好きじゃない」と言っていた僕だけど、この曲は超気に入ってiTunesで即買い。なんでこの曲がすごくいいかってことは書こうと思いながらすっかり忘れてたんだけど、 2番の歌詞がとても良いことと最後にモーニング娘。の「LOVEマシーン」同様Shocking Blueの「Venus」のリフを引用していることが僕ら世代にはたまらないということが挙げられると思う(他にも色々あるんだけど、このシンコペーションの話はちょうどいい機会だった)。なので同世代(30歳前後)の人はぜひ聴こう。笑

アメ横女学園芸能コースベイビーレイズ暦の上ではディセンバー

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そしてこちらもある意味今年を代表するアイドルソングとなった「暦の上ではディセンバー」。目下あまロス状態だった僕が今クールは毎週亀田音楽専門学校が楽しみでしょうがないという状態になっていてすっかりNHKさんの虜ですね。「こよみのうえではでぃせーんばー」のところでシンコペーションが入っていて、歌メロのところでは「はてーしな」「クリースマ」「あてーどな」のところでメロディの先食いをしている。作曲をした大友さんは「本物の2009年のミリオンセラーに負けないよう、全力でつくっています。」と言っている(実際には2009年にミリオンヒットしたシングルはないんだけど)ように、アイドルソング・JPOPなどを研究した上で作った一つの表れなんだろうな。

因みにこの曲のアメ女バージョン、フィジカルでの入手方法は「あまちゃん 歌のアルバム」のみ。

シンコペーションで明るさ以外の効果を出している曲

星野源「くだらないの中に」

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体調不良からついに復帰をみせようとしている星野源の超名曲「くだらないの中に」。この曲もシンコペーションが多用されている曲で、サビの冒頭「かーみーけーにーいー」といきなり先食いしまくり。その後の平唄の部分でも「まほうーないとふべんだよー」と食っているのだけど、これ決して明るい曲、リズミカルな曲では無いんだよね。これは番組中で説明されていた「違和感から歌詞に集中させる効果」の典型的なパターンでしょう。特にサビは典型的な中食いになっているもの。

この曲はアルバム「エピソード」にも収録されているけど、シングルに収録されている「歌を歌うときは」 も超いい曲なのでオススメなのであります。

aiko「赤いランプ」

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いきなり10年以上前の曲になったけどaikoの「秋 そばにいるよ」から赤いランプ。aikoの曲はシンコペーション使ってる曲が多いんだけど、その中でもちょっと雰囲気が違う、切なさや切迫感のある曲をセレクト。この曲もサビでシンコペーションが使われてて、「あのあめがたくさんふっひー」「はなれずにいればかったー」というのはやっぱり中食い(一部頭食いあり)してて、歌詞に引きつけさせようとしてる訳なんだろうね。「たまにあたしを思い出してね」。

因みにこの曲はライブで人気曲らしく、ベストアルバムに収録されるに当たってリアレンジされたとのこと。僕も大好きなんだけど。個人的にはaikoに関してはこういうギターかき鳴らしのロックチューンにたまらない魅力を覚える次第。

 

……この二人を並べてるの、わざとじゃないですからね!

 

さて、次回はJUJUさんを迎えて「ダメ押しのメロディー学」。因みに、公式サイトでは最終回が12月19日であることと、そこまでの放映回のタイトルとゲスト講師が発表されている。この後の講師はJUJUさんと森山直太朗さんが登場するとのこと。二人とも歌手としての実力もさることながらトーク力もなかなかあるのでそれもまた楽しみだね。笑