ポール・マッカートニーのライブに行ったら今のJ-POPに生きてるビートルズのエッセンスについて話をしたくなった

ちょっと間が空いてしまったけど、ポール・マッカートニーの10年ぶりの来日公演に行ってきた。東京ドーム3DAYSの最終日。中学2年生の時から(ビートルズ・アンソロジーが出た1995年だ。でもそれがきっかけではなく学校の英語の授業がきっかけというベタなパターン。)ずっと聴いていて、2009年にリマスター盤が出たときにはモノラルとステレオの両方のボックスセットを購入したくらいのビートルズファンとして、夢にまで見たポールのコンサート。「Eight Days A Week」から始まり、「All My Loving」、「Paperback Writer」、「The Long And Winding Load」、「And I Love Her」、「BlackBird」、「Lady Madonna」、ジョージのカバーで「Something」、「Let It Be」、「Hey Jude」、「Day Tripper」、「Get Back」、ダブルアンコールで「Yesterday」、「Helter Skelter」、そして「The End」での締め。これ以外にも「Lovely Lita」みたいなマイナー曲なんかもあったりしたしウィングスやソロ曲もあったりで盛りだくさんで満足度高かった。まあアリーナ席でギリギリポールが視認できる位置にいたってのもあったんだけど、まずそこにポールがいて歌っている、その歌声が生で聴けているというだけでもう格別だった。

と、そんな感じでそのライブの周辺でビートルズの曲をたっぷり聴いていたんだけど、そこで今のJ-POPも並行して聴いていたところ意外と相似形になっているところが多かったというか、今でも色々なエッセンスが生きてるなあと思ったのでそんなのをつらつらと書きたいなあというのが今日の話。

因みにTHE BAWDIESとかみたいなオールド・ロックンロールはビートルズよりも若干前の時代のミュージシャンを意識しているし、音楽性というよりも、もっとテクニックややり口みたいな話が今日のテーマなので今日は触れないです。曲のギミックを聴いて「ああこれってビートルズのアレっぽいよね」って通ぶるための与太エントリです。笑。あのスーツでパシッと決めてる格好なんかは初期ビートルズそのものな感じだけどね。あと50回転ズなんかもかな。

●ポップスとクラシックの融合

ビートルズの歌で一番有名なのはおそらく「Yesterday」だと思うんだけど、この曲の凄いところというのはその美しいメロディもさることながら、ポップスの中に弦楽四重奏を入れ込むことに成功したことにある、とアンソロジーのライナーノーツに当時書いてあってふむふむ、と思いながら読んでいた。

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まあもちろんビートルズの前にやってる人がいなかったということは無いだろうけど、確かにこれよりも前の代表的なバラードでイメージするのって、エルビス・プレスリーの「Can't Help Falling in Love」みたいなのだから、そう考えると画期的だったんだろう。

結局これが一つの金字塔になって、その後はポップスにストリングスを入れることなんて当たり前になっている。まあその後彼らは「Eleanor Rigby」なんていうオーケストラバックだけの曲を作っちゃうんだけど(因みにこれ今回のライブではオケ部分をシンセサイザーで再現してる)。

そんな中で「Yesterday的に」ポップスの中にシームレスにクラシック音楽を滑り込ませたのがくるりが2007年に発表したアルバム「ワルツを踊れ Tanz Warzer」だと思う。ウィーンでレコーディングしてる訳だけどあくまでポップスとクラシックの融合を主軸にしてて変にクワイア(合唱)入れようとしたりゴシックっぽくしようとせずに自然に彼らの音楽と融合しようとしている。

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個人的にはくるりのアルバムで最高傑作。去年の「坩堝の電圧」も超よかったけど、やっぱりこれはゼロ年代の邦楽ロックの一つの到達点だと思うんだよなー。

●印象的なコード

あとビートルズの曲で有名なのは和音をバシッと鳴らしてその印象的な響きを聴かせるという物。一番代表的なのは「A Hard Day's Night」のやつで、これはGがベースになって一部の弦のポジション変えたものとかだのFをベースにしたコードだの諸説ある。

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あと「A Day In The Life」の最後のコード(4:22辺りから)。これはEメジャーコードなんだけど、3台のピアノを使って4人で同時に鳴らしている。

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ところでこの「A Day In The Life」の締めとよく似た構造をやってのけたのが住所不定無職の今年出たアルバム「Gold Future Basic,」の最後の曲「SHANE」。クラシック音楽の最後の盛り上がりどころをモチーフにしたフレーズで低い音から高い音まで上げて突然ピタって止まって、そこからコードをガツンって鳴らすのはかなりの相似形だ。(残念ながらコードの部分を試聴する手段がないので実際に聴いてみて欲しいところ)

それにしてもこのアルバムは、これまでのいろんなポップソングの要素が山ほど詰まってて超面白い。最初出てきたときに「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」の衣装を着たジャケットでタイトルが「ベイビー!キミのビートルズはボク!!!」だったもんだからこういうことをするのはまあ納得なんだけど最初の時の音楽性がシンプルというかむき出しというかアングラ感強くてこんな曲をやるに至るとは全く想像つかなかったので驚き。

本歌取りと自己言及

本歌取りの話はふくろうずの時にちょっとしたよね。「Glass Onion」で「I Am The Walrus」「Fool on The Hill」といった自分が過去に出した歌のことを直接歌詞に出しているよっていう話。そしてふくろうずも「見つめてほしい」で「ループするのもうやめた」って歌っているという話。これと一緒に出したいわゆる自己言及というか歌いまわしのような物。「All You Need Is Love(これもオーケストラとポップスが融合している楽曲だ)」の最後の方で唐突にジョン・レノンが「She Loves You」を歌い始めるところ(動画の3:23くらいから)。

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これとおなじようにふくろうずは「ユニコーン」っていう曲のアウトロで「サタデーナイト」という過去の曲をちょろっと歌ったわけだけど、この「過去の歌のフレーズを歌い直す」ということをが去年リリースされた全く別ベクトルの2つのミュージシャンのアルバムで行われている。まずひとつめは意外なチョイスだけどきゃりーぱみゅぱみゅ。1stアルバム「ぱみゅぱみゅれぼりゅーしょん」の締めの曲「ちゃんちゃかちゃんちゃん」は間奏で「PON PON PON」「CANDY CANDY」「つけまつける」のサビメロディが流れてくる。

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ヤスタカがビートルズっていうのも意外っちゃあ意外だけど、孫引きとかかもね。

そしてもう一つはくるり。「坩堝の電圧」の最後の曲だった「glory days」で、アウトロにて「ばらの花」「東京」「ロックンロール」といった過去の楽曲を歌い上げている(ミュージックビデオはショートバージョンなのでそこまでは見られない。残念!…って今回そういうの多いな)。

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この曲はくるりの歴史を総括して前に進む曲であり、それこそくるり流の「All You Need Is Love」な訳だ(まあセルフライナーノーツにてこのパートの意図を何も書いてないので実際どうなのかというのはわからないけど僕は真っ先にこれを連想した)。この曲での15年の総括があったからこそ、去年の年末フェスや翌年最初の日本武道館公演は物凄いベストアクトとして名高い物になったと言えるんじゃないだろうか。それゆえにその積み重ねも含めて、「坩堝の電圧」は傑作といわれるに至るんだろうな。単純に自己言及してるわけじゃないんだ。

余談だけど、くるりの岸田さんは僕と同じ東京ドーム3日目にポールを見に来ている。岸田さんもまたビートルズが大好きな人であることを公言しているけど、その時のツイートからほとばしるビートルズ愛に、シンパシーを感じてちょっと嬉しくなった(僕は自分で楽器をやるにまでは至らなかったけど)。

因みに僕のベストアクトは「Helter Skelter」でした。いや、全部よかったんだけど。

ところで今年のRIJFくるりが出てたときに岸田さんがターバンを巻いててインド商人みたいな出で立ちで「くるりは音楽の世界旅行をするバンドなんです」って言ってたけど、ワルツ以降、そして特に今のくるりのその「世界旅行」というくらいの色々取り入れる柔軟さもまた、かつてのビートルズがインド音楽(!)を取り入れたりテルミンとかメロトロンとかシンセサイザーとか新しい楽器をじゃんじゃん取り入れた探究心に通じるものがある。今日本で一番ビートルズ的なバンドは誰か、といわれたら僕は「くるり」と答えるだろうな。

ビートルズは古典という風に思われてる節はあるかもしれないけど、今でもそのエッセンスは確実にいろんなバンドの中に現在進行形で生きている。それこそポールのベースなんかは「ベースはメロディ楽器だ」という位にメロディアスで、後世に与えてる影響は大だと言われているし。今回は特に特徴的な物だけ抜き出したけど、他にも色々あるのでみなさまそれぞれ探してほしいところ。