光の道とガラパゴス

今からちょうど1週間前にはソフトバンク孫正義@masason)社長とITジャーナリストの佐々木俊尚@sasakitoshinao)氏が原口総務省が提示した「光の道」についての討論会をUstreamでしていた。この対談っていうのはtwitter上ではかなり話題になってて、色々まとめやらなにやら出ているが、ここではあえて全文書き起こしをご紹介。

【書き起こし.com】全文:孫正義 vs 佐々木俊尚 徹底討論 「光の道は必要か?」

というわけで、今更ながらこの討論から思ったことが今日のテーマ。

まずこの討論、佐々木さんが「光の道に全面反論」と言い、孫さんがこの対談を巌流島と言ったために明確に対立軸がつけられ、その後両者の主張・スタンスによるものではあるけど、結果的に孫社長の主張にものすごい支持が集まることとなったUstreamにものすごい速度で流れていったソーシャルストリームでも、やはり孫社長支持の声の方が多かった。しかし本来は両者の主張はそこまで対立するものではない。書き起こしの2ページ目を見ればわかるが、「光の道も整備せねばならないがその前にまずやることがあるのでは?」というのが佐々木氏の主張であり、佐々木氏は一貫して孫社長がプランをどのように実行していくつもりなのか、実行可能なのかを聞き取りしていた。それにもかかわらず孫社長が支持を集めたのは、主張が徹底して前向きであったことと、その語り口によるものだろう。

僕がそこで面白いなと思ったのは、twitterユーザーの反応が明らかに日本人的でなかったというところ。普段会社でも学校でも、基本的に「でもさあ…」みたいな評論をする人が凄く多く、とにかくやるんじゃーっていう主張をする人はそっぽを向かれることが多かったりするわけだけど、それとは真逆の反応が見られた。それは孫社長twitter上で気付き上げてきたパブリックイメージが非常にプラスに作用したと思うところではあるけれども、その日本人っぽくない反応は印象に残った。

さて。この討論についてだけど、僕は基本的には佐々木氏の意見に全面賛成。特にインフラを整備したとしてそのインフラをどう使うの?っていう部分については、はっきり言って孫社長がスルーを決め込んだために全くもってまともな議論にならなかった。さらに言うと、深刻なのはFTTHを整備してもPCを接続しなくてはいけないというところで、このPCという代物に対して日本人が徹底的に弱いという所が最大の泣き所。解決されないと回線は整備されても契約数は伸びないよと言うことになってしまう。ここの議論があまりなされなかったのは残念。

日本ではPCではなく携帯電話でのインターネットアクセスの方が圧倒的に多い。その辺はクロサカタツヤ氏がCNETに寄稿した文章が非常に良く言い当てている。日本ではネットをネットっぽく使っている人なんてまだまだ少数派で、携帯電話でのアクセスがメインだからそちらの方が主になってしまうという話。その現状に則ると、FTTHを全世帯に引いても、契約数が伸びないよって話になってしまうのである。昨年の国内PC市場は、個人用が689万台。この数字は2000年の670万台を超えて過去最高だそうだ。一方国内携帯電話市場は3,444万台。はっきり言って勝負にならない。というか、PCの償却期間はだいたい5年だから、個人が使用しているPCの台数は約3,500万台。これは国内のブロードバンド契約数である3,177万よりちょっと多いくらいの数字になる。因みに3G携帯電話の契約数は1億1,000万契約を少し割るくらい

それは何を意味するかというと、携帯電話の表示性能の限界にネットサービスが引きずられてしまうということ。携帯電話のブラウザなんて、せいぜい100KBまでしか表示できない。今はFlashも表示できるが昔は出来なかった。そしてJavaScriptは今でこそ少しずつ対応が進んでいるが動作しないが大半である。それに対応すべく日本のコンテンツ事業者のみならず各種サービス提供者も携帯対応をせっせと進めてきた結果、日本の携帯電話ネットサービスは見事なまでに発展しましたよという話。その結果、携帯で何でも出来てしまうがために携帯でしかネットにつながないユーザーがものすごく増えていった結果、今の状況となったわけである。こんな状況でFTTHを100%引いても、せいぜいADSLとダイヤルアップが光に置き換わるだけで、その総計はせいぜい4,000万世帯くらいにしかならない。

ここからは感覚的な話になるが、じゃあどうやってこの光の道を軌道に乗せる(なんか変な言い方だが)のかという話になると、そこは結局やはり脱ガラパゴスケータイという話になってこざるを得ないのではないかと思っている。携帯電話もガラパゴスならユーザーもガラパゴス。そもそもPCでインターネットをやる習慣がない人が非常に多い。僕が大学に入ったころ、ゼミやらサークルの名簿のメールアドレス欄に携帯電話のアドレスを書く人が多かったことに驚いたが、今でも状況は大して変わっていないだろう。社会に出てもWord、ExcelOutlookPowerPointのOffice4製品+少しの専用ソフトくらいしか使えない人は非常に多い。PCを売っているはずの会社にいるはずなのにPCの熟達度がまるで高くない人ばかりという状況のため、やたらと無駄に駆り出されることの多い自分としては、 このITリテラシーの危機は英語しゃべれる人少ないですよくらいの、もしくはそれ以上の危機だと思っていて、本当に何とかしないとまずいと思う。PCの熟達度の国際比較資料なんてあるのかわからないが、少なくとも光の道を主軸において今後の情報通信政策を考えるというのであれば、ITリテラシーの底上げを同時に考えていかないと、結果として光の道の先にフェムトをタダで置いたソフトバンクだけ得をする、というような自体になりかねない。

ひとまず今の日本の携帯電話がどれだけ性能が高いとしても、表示能力に限界は来ており、少なくともスマートフォンレベルでないと今以上のリッチなコンテンツの表示は無理である。そこでスマートフォンiPadの様な中間層を埋めるデバイスが脚光を浴びてくるわけで、それを主軸に置くとするとなれば、今の歪んだ電波帯域の問題が出てくる。そうなってくると、孫社長の(この話題における)真のライバルである池田信夫@ikedanob)氏が登場してくるわけである。なんと孫社長池田氏に加えて、iモードの生みの親であるあの夏野剛@tnatsu)氏の3者でこの問題についてニコニコ生放送で対談するという。ここで僕が書いたようなことに立ち入ることはあまりなさそうな気がするが、すごく楽しみ。

しかし光の道対談って、まだ1週間しか経ってないんだよなぁ…最近の時の流れの速さには舌を巻くばかりだけど、こ駒で早く感じるということは自分がtwitterのTLに如何に浸ってるかと言うことの証左なのかもしれない。

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