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「亀田音楽専門学校」のケーススタディをしてみよう〜#11 「胸熱のファルセット美学」

andymori Music Polaris the chef cooks me 亀田音楽専門学校 原田郁子

年間ベスト発表の季節になったけど、毎週恒例、NHK Eテレ亀田音楽専門学校ケーススタディ第11回目です。いよいよあと2回で終わりなのでこちらも変わらずおつきあいくださいね。

さて、これまでの回のケーススタディはこちらから。

さて第11回「胸熱のファルセット美学」。今回からは最後の講師、森山直太朗さん。例により前半は講義内容を要約して、後半はその内容に従ってケーススタディということでその手法が実際に使われている曲を解説するという形で。

●講義の要約

ファルセットとは

まずは実例を聴いてみようということで、森山直太朗先生の「さくら(独唱)」、一青窈「もらい泣き」、平井堅瞳をとじて」、EXILE「I Wish For You」、絢香「三日月」とファルセットを使用している楽曲が流れる。ここから共通する物を見出そう、というわけだ。

ファルセットとは、地声の下地になる息の成分の声。つまり「息声」。音が高くなると地声とファルセットが切り替わってくる(半分息だけみたいな声になってくる)。一般的には裏声とも言われている。試しに童謡「さっちゃん」の音を高くしてファルセットを導入してみる。そうするとやさしく、柔らかい感じになってくる。これがファルセットの数ある効果。自分の音域ではさせないところで地声からファルセットに抜けることで曲の印象が変わるわけだ。

ファルセットとハイトーンは違う

クリスタルキング「大都会」が流れる。この曲の高音部分はファルセットではなく地声。地声の高い声をハイトーンと呼び、圧倒的な馬力があるのが特徴。試しに「大都会」をファルセットにしてみると全く印象が変わる(なんとなく儚さが加わる)。因みにファルセットは地声より息を使う量が多いので長く歌うと大変(「大都会」はほぼ全部ハイトーンなので、ファルセットで歌うと超苦しい)。

森山直太朗の選ぶファルセットの名曲

  • 岡村靖幸「イケナイコトカイ」 ファルセットを駆使して男の色気を出している曲。男の裏声はあまり聴く機会がないだけに、意外な一面を見せられる。
  • 小坂明子「あなた」 曲の持つ切なさや儚さと歌声がマッチしている。「あなた」連呼で長くファルセットを歌うことで苦しさに追い込むことで集中力が増し曲の純度が上がる。
  • 藤井フミヤ「TRUE LOVE」 「君だけを傷つけ」の最後の音だけ。でも最後のサビではファルセットではなく地声で歌う。その切り替えで曲のストーリーにメリハリを付けている。

胸熱テクニック

  • Mr.Children「and I love you」 「I love you」をファルセットで歌う。ファルセットの部分の色が変わる。強調したい歌詞が飛び込んでくる。さらに、音程の高低差を凄く付けることでメッセージ性を増すことが出来る。
  • 美空ひばり「みだれ髪」 サビの締めの「しおやのみさき」の部分は全てファルセット。横隔膜が泣いている。歌そのものが泣いている印象。
  • チューリップ「青春の影財津和夫さんは元々地声が高いので、地声とファルセットの中間のファルセットーネといえるような感じ。この曲の歌詞はファルセットにしないと本当に苦しいように聞こえる。歌がやわらかく淡くなる。

結論

ファルセットは歌い手の感情を強調する。歌詞・メロディー・歌の色彩を豊かにするテクニック。これを聴いて僕らは胸熱になるけれども、使い所も大事だね!

 

ケーススタディ

さて、おなじみケーススタディ。ファルセットになった部分を太字にしてみたよ。ファルセットか地声かの判別は完全に感性でやってるので微妙なところがあるけどだいたい合ってるはず。既に出てきてそうな人がいるけど別名義だからね!

Polaris「光る音」

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去年6年ぶりに活動を再開したPolarisの、活動再開シングルがこれ。サビの最後のところの「命の燃える音を聞いていた」のところがファルセット。サウンド自体が凄くこもった感じあるのでその中で浮遊感を強調しているようなところがあるかな。いずれにせよPolarisの歌全般に言えるところとしてサビでオオヤさんの歌声がファルセットに抜けるところが多くて、それが織り成す独特の浮遊感みたいな物が彼らの魅力といっていいんじゃないかなと思う。

今年ミニアルバムも発売し本格的に活動再開した彼等。しかしながら僕この曲大好きなんだよね。リリース記念ライブ行ったけど超よかったです。

原田郁子「なみだ と ほほえむ」

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クラムボン原田郁子さんのソロワークスの代表的な曲の一つ。この曲は平唄のトーンが低いこととサビでの高音の多用が一つの特徴で、「ああああ きみが ほほえむ」と、ひたすら泣いているという歌詞の中で「ほほえむ」という逆の内容にフォーカスさせる効果を狙ってる、極めて効果的なファルセットの使い方をしている曲と言えるだろう。

この曲には実は色々なバージョンがあって、オリジナルはソロアルバム「ピアノ」に所収。それからクラムボンでも「Re-なみだ と ほほえむ」として音源化済(去年のよみうりランドでもやった)。しかし一番素晴らしいのは間違いなくこの動画のFISHMANS+でのスタジオライブバージョン。一昨年の5月2日に予定されていたフィッシュマンズの久しぶりのライブのプレ企画+DOMMUNE東日本大震災復興支援企画として行われた時の物。期間限定配信してたけどもう終わってしまったのである意味幻の音源。Ustream観ながら超盛り上がった記憶。

andymori「1984」


andymori "1984〜ONLY SSTV EDITION〜"

今年解散を発表しながらもボーカル小山田壮平の飛び降り事故により解散ライブが延期になり解散自体も棚上げになったandymoriの2ndアルバム「ファンファーレと熱狂」より。歌詞にアルバムタイトルが入っているので実質的な表題曲かな。サビを殆どファルセットで歌っている曲。なのでなんとなくそこで歌われる「ファンファーレと熱狂 赤い太陽 5時のサイレン 6時の一番星」という風景を淡く幻想的な物として感じることが出来るような印象。んでもって曲の最後では地声で歌ってるわけ。通称「TRUE LOVEメソッド」。笑

andymoriに関しては色々な人が色々思っていると思うんだけど、僕は後藤君がドラマーでいたときの、この「1984」を所収した「ファンファーレと熱狂」が彼らの最高到達点だと思っています。

the chef cooks me「適当な闇」

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今年3年ぶりのアルバムをリリースしたthe chef  cooks meのそのアルバムのリードトラック。最初のサビの「適当な の中」「生と死と 歓喜 嘆き」という感じで曲のタイトル、それからフォーカスしたいと思われる部分にフォーカスを当てさせるようなファルセットの使い方その2。特に後者はシビアなタンゴが出てくる中で表現をちょっとやわらかくする効果とかありそう。

まあこの曲聴きながらリディムっぽいなあと思っていたんだけど、そのリディムのKeishi Tanakaさんもファルセットが得意なボーカリストだったよね、と思ったり。

ファルセットって、ほんとたくさん使われてるよね。しかも使い方は多様だ。

さて、次週はいよいよ最終回。森山直太朗さんと「惹起は強気」。いよいよあと1回!!