映画を観たら読むべき「Facebook正史」:書評「フェイスブック 若き天才の野望」

今日発売の週刊ダイヤモンドFacebook特集だそうだ。「ソーシャルネットワーク」はアカデミー賞にもノミネートされそうだとかなんとかで、今Facebookはものすごくホット。そんな中、「ソーシャルネットワーク」見る前後に読んでいた本を読み終わったのでご紹介。

フェイスブック 若き天才の野望〜5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた〜

先に結論から書いとく。僕が映画「ソーシャルネットワーク」を見て不満に思った点は、この本が全て埋めてくれた。それはFacebookというサイト自体への言及と、ザッカーバーグからの視点の2点である。それ故に、映画よりも知的好奇心を満たす作品になったと思う。

爆発的な成長を遂げたFacebookの機能や、初期の泥臭いサーバー増設話だとか、資金繰りに苦しんでいる辺りの綱渡り感だとか、ベンチャーの成長物語だったりIT企業の成長物語のもつ要素はきっちりおさえてある。写真共有機能など、Facebookの特徴的な機能についてもどこがウケたか、どこがこれまでの物と違うかなどにも言及していて非常に興味深い。映画「ソーシャルネットワーク」ではその辺の部分が全くと言っていいほど触れられていなかったので、どうしてFacebookが広まったかがあまりわからないと思うが、この本はその辺の疑問に一気に答えてくれる。

そして、映画の原作はザッカーバーグが取材拒否した結果ものすごくサベリン寄りになってたりザッカーバーグを全然良く書いていないよねって事は前回の記事に書いた通りなんだけど、今作の著者デビッド・カークパトリック氏はザッカーバーグの信頼を得て、綿密に取材することができた。というかそもそもこの本自体がザッカーバーグの勧めによって書くことになったと彼は言っている。その上で、多数のフェイスブック関係者に徹底的な取材をしている。なので、ものすごく濃厚で真に迫ったレポートになっているし、何より映画で はただの幼稚な変人(だけどそういうフリをしてる奴なんでしょ?みたいなフォローをちょこっと入れられる)だったマーク・ザッカーバーグという人間がものすごいビジョナリーな人間だということがわかる。

本文を読み進めると何度も出てくるのがFacebookの理念とでもいうべき「透明性」「オープン であること」へのこだわりである。とにかくFacebookは、いやザッカーバーグは、これを全てに優先すべきコアな理念としてものすごく大事にしてい る。それより大事な物はないといわんばかりに。それ故に色々とトラブルを引き起こしている(システム変更の際に全ユーザーのプライバシー公開設定の初期値が全公開になるなど)が、それはこの理念の なせる技なんだろうな。いや、いいか悪いかは別としてだけど。ただこういう話はこれからもFacebookにつきまとい続けるのは間違いない。それはいつしかおかしいと思われないような自然な物になるのだろうか。多分100%そうなることはないとは思うけど、日本も含めた社会へ何らかの形で働きかけるよう な存在になるだろう。

Facebookについては実名かどうかって話が常につきまとうけど、結局Facebook初音に「オープン」で「透明」な物であろうとし続けるのは間違いない。社会的な所に話を広げるとWikileaks尖閣ビデオ騒動なんかもその一種な訳で、インターネットの浸透がそうしているんだと思うけど、Facebookの浸透にはある種の象徴的な物があると思う。そういった世の中での企業のあるべき戦略についてはウィキノミクスっていう本がすごく参考になると思う。そういえばこれも日経BPの本だった。

という所で非常にいい本であるのは間違いないんだけど、いくつか気になった点もある。まず1つ目は、時系列がめちゃくちゃなこと。これはそういう構成に敢えてしたんだろうけど、書いてあることがいつのことだかわからなくなることがしょっちゅうだった。ショーン・パーカーがやめた次の章ではまたいることになってたりと、かなり浦島状態。Facebookの歴史について何の予備知識もなく読んだので、かなり混乱した。それともう1つはタイトルがしっくりこない。この本からはザッカーバーグが野望に満ちてるような印象は殆ど受けない。なので、帯に書いてある「挑戦(実際の言葉は「挑む」)」とかそういう言葉の方がしっくり来たんじゃないかな。あとは「パラダイス鎖国」海部美智さんが書いた素晴らしい書評でも言及されてる通り原題との乖離も激しい。まあそんな本は山ほどあるからそこまで気にしないけど。

ものすごいボリュームで読み応えのある本。映画で表層的な部分だけ触れるのではなく、21世紀のビジョナリー・カンパニーとも言えるフェイスブックの成り立ち、特徴を知る資料として読むべき一冊だと思う。