たにみやんアーカイブ(新館)

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TOKIOの夏フェス出演について

この文章は4月にnoteにアップした「今更だけどTOKIOの夏フェス出演について」という文章に加筆修正をしたものです。今の状況と、それから今日実際に自分の目で見た感想を含めてアップする次第。TOKIOは今年JOIN ALIVEとSUMMER SONICという二つのフェスに出演した。そのうち、SUMMER SONICの東京初日である今日、TOKIOを見てきた。

TOKIOが夏フェスに出た理由は二つあると思っている。一つはお題目としてある「ジャニーズ事務所自体の国内マーケット拡大の先兵」。そして言い方は悪いけど「TOKIO自体のテコ入れ」。その二つを満たすのに「TOKIOの夏フェス出演」ということがすごく良いアイディアだったからと考えている。

一つ目。これは自分自身ブログで何度も取り上げているけど、日本国内における音楽パッケージメディアの売上は減少の一途を続けているため、音楽配信に頼っていないジャニーズ事務所の危機感は相当な物だったと考えられる。そのためには「CDを買ってくれるファン」を増やさなくてはいけない。そのためには「今までジャニーズ系グループのパフォーマンスを見たこと無い層」にアプローチする必要がある。そうなると一番パッと思い浮かぶのは近年規模が拡大している夏フェス(個々のフェスはともかくとして、全体的なマーケット規模は増加の一途)。しかしながら、ここに出演するミュージシャンはだいたい洋邦問わずロックバンド中心。ならばバンドフォーマットをTOKIOがまず出るのが最適、という考えになったのだろう。昨年ロックフェスに大量進出したアイドルの中でもBABYMETALがトップクラスに盛り上がったのは元々の知名度だけでなくバックに(エア演奏であっても)バンドが付いていたことは要因の一つとして挙げられる(若干手前味噌)。

もう一つの理由。TOKIOファンらしき人がTwitterで「TOKIO地蔵とか言うけど、そんなにファンいないし」と言ってたけど、それはおそらく間違いなくて、残念ながらTOKIOはジャニーズグループの中で現状最もCDの売上が低いグループ。最新シングルの比較を見れば一目瞭然。最新シングルは20,000枚を切り、オリコンチャートでもギリギリトップ10圏内。それゆえに、今年は20周年だしファン拡大の良いきっかけないかな、と考えたところで一つ目の話と重なるわけ。しかもネットにメンバーの写真をアップさせないことで有名なジャニーズ事務所が、ラインナップに写真を掲載することを許しているわけだから、相当本気なんだろう。

そういう意味で、TOKIOの夏フェス出演にはとても納得できる理由があるわけです。ここからは余計な話。

去年のサマソニで話題になったミスチル地蔵みたいな物はきっと出ないんじゃないかと思っているんだけど、「TOKIOさんのファンの人も夏フェスでいろんな音楽聴けば人生変わるかも」というようなサカナクション山口さんの発言は率直に言うとTOKIOのファンをバカにしてるな、と思った。

彼はいつも「日本でアンダーグラウンド(マイノリティ)であるロックを、自分たちに与えられたTV出演などの機会を通じてオーバーグラウンド(マス)と繋げる」ことを使命に挙げているなど、売れていることに対して自覚的で、かつビジョンをきちんと持ってやっているので、そのいつもの態度から出て来ている物だと考えられる。僕自身彼等のことは好きなのでその辺の意図はよく分かるんだけど、分かるんだけどこの発言はあまりにも筋が悪い。むしろ一般の夏フェスにくるロックファンがTOKIOの演奏にノックアウトされることの方がよっぽどあるんじゃないかと思う(それは母数の関係もあるけどw)。むしろ、それこそがTOKIOの、ジャニーズ事務所の考えていることなんだから。

ここまでが4月の話。そして先月にTOKIOは20周年記念ベストアルバム(ファン投票上位曲集録のコンピレーションアルバム)「HEART」をリリースし、見事オリコンチャート1位を達成した。実はこれが、TOKIOのオリジナル曲によるアルバムとしては初めてのアルバムチャート1位なのだ(前の、そして唯一の1位はジャニーズヒット曲カバーアルバム「TOK10」)。そしてその週の7月にはそれをひっさげて北海道の夏フェスJOIN ALIVEに出演してありえないほどの大盛況となった。ひとまずここまでの展開は完全に思惑通り、大成功だ。

さて、それで見てきたサマーソニック。そのための予習として「HEART」聴いていったわけだけど、このアルバムを一聴した印象は「曲調古くない……?」というものだった。1990年代のデビュー時からあまりアレンジ・作風などが変わっていない、70年代の古典的アメリカンロックあるいは80〜90年代前半位の日本のポップロックのような曲だ。いや、別にTOKIOにBPM180の4つ打ちで曲作れとか言ってるわけでもないし、おそらくはメンバー(特に長瀬君)の好みが多分に反映されてるけど、バンドスタイルであったということが彼等自身の曲調の制約になっていて(みんな揃ってでの練習にかけられる時間はそんなに多いわけでもないだろうし)、セールス面も含めた停滞感に繋がっていたんじゃないかという印象を持った。SMAPがロック畑の新進気鋭のミュージシャンを多数起用して曲のバリエーションを広げているのとは対照的な話だ。

ただね、ステージで見た彼等は存在感が段違いで、本当にスターだった。長瀬君はカッコ良かったけど色々よくわからなかったし(「LOVE YOU ONLYサマソニバージョン行くぜー!」って言ったのに何も変わってないの最高だった)、太一君はそつない感じだったし松岡君と山口君は男前だったしリーダーはリーダーだった(最後に微妙なタイミングで背面ギターを披露してたけどあまり注目されてなかった)。テレビで見た彼等がそこにいることの強み。みんな知ってる曲があることの強み(リリックとか最近の曲も良かったけど)。演奏もしっかりしてて満足度高かった。

ただ、幾つか気になった点も。大きさが3番目のステージでキャパシティが完全に足りてなくてもみくちゃになったんだけど、その中で圧縮とモッシュがめちゃくちゃ凄かった。気分が悪くてスタッフに救助された人も随分いて大丈夫かよって感じだった。ステージ割はクリエイティブマンに小一時間文句を言いたいんだけど(別に彼等はマウンテンでも余裕で規制だっただろうしそもそも「フェスで入場規制」とかいうあやしい称号が機能するわけでもないだろう)、奇声をあげながら騒いでる男子の多さは気になった(ジャニーズのライブなのに男が7割位なんですよ、前方でも!)。人気者が出る度にそれが現代版盆踊りともいえる夏フェスでのバカ騒ぎに回収されていくのはなんともなあという気持ちは若干ある。気にし過ぎなのかもしれないけど有名な曲とそれ以外のライブ定番曲や最新曲との落差は結構凄かった。

あと、今回大成功だったわけでこれからもこういうブッキング増えると思うけど、メインがベテラン大物ばかりになるとその年のモードの見本市としてのフェスの役割が弱まらないか、というのは考え過ぎですかね。もちろん彼等も今年出た最新シングルとか披露してはいるわけだけど。

とはいえTOKIOはフェスの光景にいい感じにはまっていてよかったしまた見たいのでCOUNTDOWN JAPAN辺りのEARTH STAGEとかに出ちゃえばいいんじゃないかと思います。間違い無く彼等に一番ぴったりの舞台で20周年を華々しく締められたら最高でしょう。