たにみやんアーカイブ(新館)

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亀田音楽専門学校SEASON2のケーススタディをしてみよう〜#01「J-POPギター学〜主役編」

亀田音楽専門学校のSEASON2が始まりましたね。昨年のSEASON1ではケーススタディなる企画をやってましたが、今回もやろうかどうかは凄く迷いました。とはいえ多分他に誰もやる人いなそうだし、今度こそ自然消滅するかもしれないぞと思いながらやることを決意した次第です。昨年のはこちら(最終回の記事)からどうぞ。

今シーズンは講義のまとめの割合を出来るだけ簡単にしようと考えています。というか内容まとめを見たいんならReal Soundが翌日くらいには上げているのでそっちを見た方が良いです。僕はあくまでそれを元に現代のJ-POPに当てはめたりする+1のアウトプットをすることを重視しているので、今期はそっちにより重きを置きたいです。

さて、第1回は布袋寅泰さんを講師に迎えての「J-POPギター学・主役編」。前半で講義を要約して、後半ではそれにコメントや補足を入れつつ現代のJ-POPで実際に使われている例を探ります。あと課外授業の内容は省略します。

あと、今回から新設したルールとして、ケーススタディの曲は何かしらの制約がない限り2010年代の物を使います。(特に今回は)古い曲が例に出てくることが多いんだけど、それが今と繋がっていることをきちんと示しておきたいのです。

●講義の内容

イントロのギター学

ギターが一番活躍できるところとしてイントロがある。例として「ラブ・ストーリーは突然に」「innocent world」「ONE NIGHT CARNIVAL」「ワインレッドの心」「風が吹いている」「ヘビーローテーション」といったイントロのギターの音が特徴的な楽曲が流れる。これらのイントロのフレーズはまさに曲の顔であり、流れた瞬間にどの曲かわかる。ギターの音はインパクトがあり、かつ種類に富んでいる。これはエレキギターならではのこと。ギターは、電気回線を通って、サウンドを増幅させて、空気を振動させて、アコースティックとは違うインパクトを出すことが出来るのだ。エレキギターにしかないきらめき・ひらめき・気持ちの良さがある。

さて、そんなエレキギターで奏でられたイントロが印象的な名曲としてBOOWYの「MARIONETTE」が流れる。この曲の特徴はイントロでサビと同じメロディーを流していること。ここでギターがイントロを担当していることでバンドサウンドなんだという決意表明をしている(ピアノでやるとなんだかもの悲しい感じに…)。

もう1曲、布袋先生の代表曲である「バンビーナ」。この曲のイントロはメロディーを取らずにコードストロークだけで曲の顔を担っている。鍵盤でやると奏法上無理があるが、ギターはアップダウン奏法を使って早いフレーズに対応することが出来る。。

また、エレキギターの機能にも主役になれる大きな秘密があるという。例として「Hello Again」「CHE.R.RY」の2曲が流れる。ストリングス・アコギ・ピアノと並んでもエレキギターは負けずにメロディーを主張できるのだ。ピアノだと自然減衰していってしまうがギターはエフェクターで音を伸ばせる(機械的に音量を保てる)ので、音が途切れないから埋もれずにメロディを主張できるのだ。

布袋寅泰が選ぶギターイントロの名曲

  • Char「闘牛士」 Charさん世良さん原田真二さんゴダイゴさん…本物のロックの生音をテレビを通じて初めて感じられた時代の音。軽快なカッティングから始まるカッコいいギターを弾きながら歌を歌う姿は衝撃的だった。ギターを始めるきっかけになった曲。
  • 沢田研二「危険なふたり」 日本のデヴィッド・ボウイ。艶やかで色っぽい。ロックとかどうこう以前にギターの音が印象に残っている。
  • キャロル「ファンキー・モンキー・ベイビー」 8小節の間で完結している。因みにヒムロックはキャロルのコピーバンドをやってた。

3曲とも古いが、イントロからウキウキする、心つかまれる感じは伝わったんじゃないだろうか。

間奏のギターソロ学

まず例として「ギブス」「勝手にシンドバッド」「PRIDE」の3曲が流れる。これらのJ-POPにおけるギターソロは「イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→大サビ」という構造の中で、歌と沿うでない部分を繋ぐ、歌の無い部分で主役を務める役割を持つ。ギターから歌にバトンを渡し、歌からギターにまたバトンを渡す。歌が作っ世界を転じるもよし、受け継ぐも良し。起承転結の承・転のいずれかの役割を担う。そこから大サビに写る際のフックとなるわけだ。それゆえに間奏はギターがチャレンジできる場所であり、際立たせてほしい。最近はなんとなくソロを乗せているような楽曲が多いのが残念。

また、インストゥルメンタルでは全編ギターが主役になる。その例として映画「キル・ビル」でも使われた「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」を例に。この楽曲では三味線のようなフレーズや、和太鼓のような刻みで日本らしさを感じることができる曲になっている、ということで演奏コーナーではこの楽曲を披露。

まとめ

布袋:最近主役になれるギターフレーズは減ってきた。バンドでひとつの世界を見せるのが増え、総合芸術化するJ-POPで、もっとギタリスト頑張れという印象。時代は主役を待っているんじゃないかな。

亀田:時に口ずさめるメロディはボーカルのような表現力をもっている。だからこそ、メロディやワビサビを大事にしているJ-POPの中で、永遠に使い続けられていく楽器なんじゃないかと確信した。

●コメント・補足

番組終了後にも少しツイートしたんだけど、布袋さんが言っていたギターソロの停滞とJ-POPの総合芸術化の背景には、日本でもオルタナティブ・ロックが浸透してきたからではないだろうか。この辺は何度となく「オルタナティブロックの社会学」を参照しながら話をしていることだけど、ギターリフが厚くなり、フィジカルに訴えかけて踊らせる楽曲が増えてきたことで、亀田校長が提示していた「J-POPの基本的な構造」において主役が交代するタイミングが曖昧になってきている、ということ。それゆえにバンド全体で音を塊としてぶつけてくる手法が増えてきてギターが主役として単独で出張ることが減ったのではないかな、というのが僕の見立て。この辺は次回の名脇役編にてリフの話とか出てきたらある程度出てくるのかな。あまりそこまでは踏み込まなそうな気もするけど…

ケーススタディ

というわけで、2010年代の「現代のJ-POP」から、ギターが主役として役割を果たしている楽曲を挙げてみました。というかいわゆるギターロック的な物を近年あまり聴かなくなってしまっているためか選出にかなり苦労しましたw

イントロでサビと同じフレーズ

ナンバタタン「ガールズ・レテル・トーク」

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南波志帆タルトタタンの混合ユニットナンバタタンのファーストアルバムより。ファニーなギターの音がとても特徴的で、これもまたこの楽曲がどういう楽曲なのかを自己紹介する役目を果たしてると思う。こういう音を出せるのもエレキギターの強みかな、と。

ナンバタタンのファーストアルバムについては別途記事を書いてますのでそちらをご覧ください。

印象的なイントロ

Homecomings「You Never Kiss」

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京都の若手バンドHomecomingsの昨年のアルバムより。個人的には近年のJ-POPで一番心を鷲掴みにされたイントロはこれ。もう聴いた瞬間即座に青春!!とかそういったワードが思い浮かぶ。この音に瑞々しさが詰まってて、これは本当にエレキギターでこその音だと思うんですね。

UNISON SQUARE GARDEN「天国と地獄」

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ギターロックをやるバンドの中で今一番格好良いと思うのがUNISON SQUARE GARDEN。この曲のイントロもアップダウンのやハイフレーズや助手の中村さんが「キュイーン」とか言ってたエレキギターらしい音も全部盛りの、スーパーカッコいいギターイントロ。3ピースなのにこんなに厚くて力強い曲を出せるのはホントたいしたもんだと思います。この夏に出たアルバム「Catcher In The Spy」良かったですよ。

Catcher In The Spy

さて、次回も布袋さんを講師に迎えて「J-POPギター学〜名脇役編」。伴奏部分が主に語られると思うけど、どういう風な話の展開になるのか楽しみ。