たにみやんアーカイブ(新館)

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亀田音楽専門学校SEASON2のケーススタディをしてみよう〜#03「元気が出るリズム学」

週末恒例アップの亀田音楽専門学校ケーススタディ第3回です。今回から講師はmiwaちゃんだ!やったね!!

過去の記事はこちら。第1回 第2回 第1部の最終回

さて、第3回目は「元気が出るリズム学」ということで、miwaちゃんに合わせた今風なテーマ。んで、リズムだから色々やるのかな、と思ったら、ほぼひとつだけのようで。例により前半で講義を要約して、後半ではそれにコメントや補足を入れつつ現代のJ-POPで実際に使われている例を探りますよ。とは言っても今回のテーマは最近流行のリズムについて、なので番組に出てなかった実例を入れて補足するような形になるのかな。

●番組の内容

4つ打ちとは

最近J-POPの中で流行のリズムがある。それを確認するために昨年の紅白歌合戦から何曲かピックアップ。miwa「ヒカリへ」、ゴールデンボンバー「女々しくて」、E-girlsごめんなさいのkissing you」、きゃりーぱみゅぱみゅにんじゃりばんばん」、AKB48恋するフォーチュンクッキー」で使われている。思わずノリノリになってしまうリズム、それが4つ打ち。

4つ打ちとは、バスドラムが等間隔で4つ刻まれているビート。1970年代のディスコミュージックが発祥。この頃の代表的な曲としては、Village People「Y.M.C.A」、BOYS TOWN GANG「君の瞳に恋してる」、Quincy Jones愛のコリーダ」等が挙げられる。ディスコなだけに、踊りたくなるリズムと言える。そして、1970年代にこのディスコミュージックを日本のポップスがこぞって輸入したのです。その典型が西城秀樹の「Y.M.C.A」。

この4つ打ちが体に何を起こしているのかを確認するためにいくつか実験。上を向いて歩こうに4つ打ちを重ねてみると、元気が出てきて踊りたくなってくる。逆に、4つ打ちが基調の「ヒカリへ」を8ビートにしてみると横揺れの感じになると言う風にリズムによって変化が生まれた。

「ヒカリへ」は、ドラマがIT系社長の恋愛話だったので最先端のイメージを出すために4つ打ちにしたとのこと。この曲ではメロディーのシンコペーション第1部第8回参照)と4つ打ちの規則的かつ土台がしっかりしたバスドラムが組み合わさうことでメロディにスピード感や前向きな効果をもたらしているのだ。それを支えるのが4つ打ちのバスドラム。土台が正確なのでメロディが前のめりになっても安定感があり、前向きな気持ちをもたらしている。miwa先生自身ループ感の中でメロディを作ったという感覚があるとのことで、等間隔だからメロディや歌詞の自由度を増すという効果があるのだ。

miwaが選ぶ4つ打ちの名曲

  • ケツメイシ「さくら」 4つ打ちだから切なくても前のことを向こうと思うようになってくる。
  • YUKI「JOY」 カラオケで絶対歌う。キュートだけどポップで不思議な感じ、おしゃれな感じ。4つ打ちとおしゃれは関係があるのかな?凜としながらも節度があるので、歌やアーティストの魅力を引き出す効果があるのだろう。

聴く人にとっての4つ打ちのリズムとは?

実は4つ打ちとは聴く人にやさしい、開かれたリズムなのではないだろうか。ソーラン節を流しながら手拍子を打とうとすると、普通は1・3拍目で手を打つことになる。2・4拍目で手を叩くようにするとものすごくノリづらくなる。そこで4つ打ちにして全部の拍を叩くようにして誰もが自然にのれる。続いてmiwa先生が映画「アナと雪の女王でおなじみの「Let It Go」を4つ打ちと共に歌ってみるとなんだかノリノリになったりもする。

J-POP No1“モテ”リズム、“4つ打ち”のマルチな才能

実はアイドルソングの中でもものすごくたくさん使われている。例としてももいろクローバーZ「行くぜっ怪盗少女」、AKB48の「フライングゲット」などが流れる。元々4つ打ちがディスコ見ユー十区発祥なので、踊りやすいという特徴があるほか、リズムが等間隔だから歌い分けしやすいというメリットもある。

そして、今はバンドサウンドの中でも大流行している。古くはBUMP OF CHICKEN天体観測」、チャットモンチー「シャングリラ」、そして今年リリースされたSCANDAL夜明けの流星群」と4つ打ちの楽曲が例として挙げられる。今のJ-ROCKチャートを見ると大部分がこれなんじゃないか、という位。なぜだろうか?大きな要因として、90年代の小室サウンドの影響が挙げられる。例としてtrfの「BOY MEETS GIRL」が流れる。今の若いバンドは子供の頃にこういった音楽を主に聴いていたから馴染んでいる。それをバンドサウンドと混ぜてみた結果このようなバンドサウンドが生まれたのだろう。

さらには、コンピューターミュージックを使って4つ打ちビートを取り入れるミュージシャンたちも。例としてはSEKAI NO OWARI「炎と森のカーニバル」サカナクション「ミュージック」。打ち込み(コンピューターでプログラミングさせて自動演奏させる音)は4つ打ちと相性が良い。コントロールされたりすむから生まれるおしゃれ・クールな感じも4つ打ちで表現することが出来る。。

まとめ

4つ打ちは平成ビート。いろんなジャンルと交わる中で出てきた今っぽいビート。意外な曲も4つ打ちだと言うことに驚くと共にこれからどんな4つ打ちが出てくるか楽しみ。J-POPは取り入れ上手だからいろんな物が出てくるかもしれないし、4つ打ちはありとあらゆるビート/テンポ/ジャンルに対応できる。4つ打ちはいわば白いご飯で、そのうえになにをかけてもOK.。しかも食べると元気が出る!!ということでお後がよろしいようで。

●コメント・補足

4つ打ちがJ-POPの中で使われる頻度が増えた、という話は音楽ライター柴那典さんがブログで発表した「2010年代のJ-POPのテンポが高速化しているという話」の中で取り上げられて以降、リスナー界隈ではものすごく話題になっている話です。なのでテンポの高速化と絡めて語られることも多いです。

その上で番組で語られてた内容は非常に明快な説明で、今回はSEASON2のこれまで3回の中で一番面白かったです。んで、今までこのブログでお話ししてきたことと色々とリンクしている重要なポイントが、4つ打ちが「リスナー側」にも「ミュージシャン側」にも優しい、ということ。ここについてはもう少し詳しく補足説明。

まずリスナーにとって優しいというのは番組中でも様々な実験をして確認していたけど、(特にロックフェスに来る)リスナーのニーズ自体が「フィジカルに体感できる音楽」「踊れる音楽」にシフトしてきているのです。その辺は今年の春の「VIVA LA ROCK」後に書いているので、そこを見るとよくわかるかも。あとは今回miwa先生のカラオケの十八番として紹介されたYUKIの「JOY」をプロデュースしたクリエイター集団agehasprings代表の玉井健二さんは著書の中で「日本人にはグルーヴという概念が無い」と言いきっていて、この辺もシンプルな4つ打ちリズムが重宝される一つの要因なのじゃないかと思う。

一方でミュージシャン側にも優しいいう話なんだけど、亀田校長が「4つ打ちは規則的なのでメロディに自由がきく」という話をしてたくだりを聴いて、「これって曲を作りやすいってこと?」と感じた。特に4つ打ちを多用するロックバンドなんかは最近定期的に話題が挙がり繰り返される「洋楽にルーツのないバンド」であり、「小室サウンドの影響大」という話とも一致するなあと。

こういうところから、今回の話はものすごく納得感があります。今まで色々感じてたことが色々繋がった瞬間。これぞ勉強の楽しみだね。

最近CINRAで「ロックシーンの4つ打ちはもう一段落」という旨のコラムがあったけど、こうやってテレビを通じてオーバーグラウンドに話題が出てくるくらいだし、上記で挙げた話も含めるとバンドも含めたJ-POPシーンで4つ打ちはまだまだこれから当分は重宝され続けるんじゃないかな、と思うわけです。

ケーススタディ

そんなわけでケースなんだけど、よくよく考えてみたら僕自身は4つ打ちの楽曲がそんなに好きというわけではないのでiTunesから探そうとしたら意外と無かったよ!!とはいえこんな感じで選んでみました。

4つ打ちアイドルポップス

でんぱ組.inc「でんでんぱっしょん」

www.youtube.com

まあ4つ打ち高速ビートの典型例といえば間違いなくこの曲でしょう。今年日本武道館公演を成功させ、来年には代々木第一体育館2DAYSを控えている彼女達が今の地位を気付いたのがこの曲でしょう(W.W.Dでは?という声もあるけどこの曲が一番のロングヒットなので採用)。因みにこの曲を作ったWinnersの玉屋2060%が今年提供した「さくらあっぱれーしょん」も同じように4つ打ちチューンです。

μ's「友情ノーチェンジ」

www.youtube.com

はいラブライブ!です。この曲はAメロで4つ打ちによって歌い訳がきっちり区分けられている、という特徴があるのでその辺に注目して聴いてください。μ'sのアルバムを今年になってから聴いたけど、彼女達の歌は今までのいろんなアイドルポップスを参考にして作られていて面白いなあというのが感想。

4つ打ちバンドサウンド

KANA-BOON「フルドライブ」

www.youtube.com

まあ4つ打ち+バンドサウンドの話をするのであればこのバンドの話を避けることは出来ないでしょう。柴さんのブログでも取り上げられていたKANA-BOONが今年に発表した曲。高速テンポで4つ打ち叩いて縦ノリを誘発する、というとにかく「今っぽい」1曲。

 

まあ先に書いたとおり僕は4つ打ち音楽は好んで聴かないんですね。じゃあ何をっていうのは別の話なのでいずれ書くこととして、次回は「お客様もアーティストです」というタイトルでシングアロング(いわゆる合唱)について。なんでmiwaちゃんの時に限って僕のきr……いや、なんでもないです。