毎週恒例アップの亀田音楽専門学校のケーススタディ第9回です。いよいよ終盤が近づいてきましたね。これを含めてあと4回くらいでしょうか。
過去の記事はこちら。第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第1部の最終回
さて、第9回はゆず先生を迎えての「無敵のボーカル術〜相棒編〜。今回もスキマ先生の時のように二部制なのか…?
●講義の内容
J-POPでは同性デュオが凄く多い。このデュオでしか出来ないことを探ってみよう、というのが今日の趣旨。と、いうことでザ・ピーナッツ「恋のバカンス」、コブクロ「蕾」、猿岩石「白いくものように」、Puffy「アジアの純真」、ゆず「虹」が流れる。
男女デュオじゃなくて同性デュオだと何が良いのかというと、異性ではなくて同性だと出来ることがあるのだ。男女デュオとどう違うのだろうか。それは「おいしい音域」。男性女性それぞれにおいしい音域があり、異なっているのだ。J-POPで一般的な地声とファルセットの音域によると、女性はト音記号のどの部分から上2オクターブ分、男性はヘ音記号のドから上2オクターブ半くらいが出せる音。そのうち女性のおいしい音域はド~レ(1オクターブ上)くらい、男性はド(1オクターブ下)~ソとなる。そうすると重なる部分がド〜ソの半オクターブくらいしかない。逆に同性デュオなら男女どちらかのおいしい音域を丸々使える。つまり、おいしい音域を把握して音作りをするとなると、同性デュオの方が使える音が多いということなのだ。
同性デュオのボーカル術① ソロ
KinKi Kids「硝子の少年」が例として流れる。
ソロ(一人で歌うこと)によって、それぞれのボーカルのキャラクターがしっかり見えてくる。ゆず先生もそれぞれのキャラ、声質、おいしい音域を意識してそれぞれのソロを作っているとのこと。単純に歌い手が変わることでワクワク感が生まれる効果もある。
同性デュオのボーカル術②ユニゾン
狩人「あずさ2号」、Puffy「アジアの純真」が例として流れる。
ユニゾンとは同時に同じメロディーを二人が歌うこと。これにより、二人で歌うことで音量が倍になる。違う声質は混じり合うことで新しい魅力が生まれる。それがアーティストの名刺代わりもになる効果があるのだ。
ただ純然たる同性デュオって最近あまり出てきてないような…自分の観測範囲の問題かな?
同性デュオのボーカル術③ハーモニー
ゆず「栄光の架橋」
ハーモニーで世界が広がる。「メロディーの花束」によってお互いの声の個性が出る。ハーモニーすると気持ちいい。ただしやり過ぎると飽きるのでうまく量を調整することが必要。
ゆずが選ぶ同性デュオの名曲
- とんねるず「情けねえ」 柚子が最初には持ったのがこの曲
- 井上陽水奥田民生「ありがとう」 個性的なソロシンガーが合わさったときに凄く面白くなる、という例。井上陽水はソロが殆どなので奥田民生がそこにどう寄り添うのかが聞き所。
- 桑田佳祐&Mr.Children「奇跡の地球」 キャラとキャラのぶつかり合い。
同性ボーカルの応用編「歌い分け」
ゆず「夏色」
冒頭のAメロで歌い分けることで歌の情景や二人のキャラクターが見える。そしてBメロの「Ah」というコーラスが効いている。元々はゆったりとしたフォーク調の曲だったが、路上で飽きさせないための工夫をしてどんどん曲が変わっていった。「おおきな~」のところで拍がいきなり2/4になって煽ってくる(そしてまたすぐ戻る)ここで早めることで追っかけるが可能になった。ライブを通してどんどん変化して行っている。「ほぼスポーツですね(By亀田校長)」
総括
同性デュオはJ-POPの中でずっと愛されてきた無敵のグループ。歌のテクニックを使うと1+1が無限大になる。
●補足・コメント
桑田佳祐&Mr.Children「奇跡の地球」だけど、これでコラボしてから桜井さんは歌い方に桑田さんの影響が凄く見えてくるようになってきたよね。
音域のところは説明があまりちゃんと出来てないかもしれない。やはり図を書いた方が良いのだろうか…
●ケーススタディ
さてどうしようかなあと探し始めてから気がついたんだけど、僕殆ど同性デュオの曲聴いてなかったわ…ということで、変則的な形でバンドとシンガーのコラボという形で歌の掛け合いの妙を表現している物を二つ用意しました。楽しんで頂ければ幸いです。
2010年に発表された曲。カジヒデキがriddim saunterとコラボレーションしたユニット。リディム自体もボーカルのKeishi Tanakaが美しい声を持っているんだけどそれをほぼバックに使うというめちゃくちゃ贅沢なコラボ。この曲では主にハーモニー、ユニゾンでカジさんのボーカルを補強することに徹している。
彼等のライブを見られなかったことはここ数年でも割と大きな後悔です(全くスケジュールが合わなかった)。リディム自体が2011年に解散してしまっているのでもうこのコラボを見ることは出来ないんですな…
平賀さち枝とホームカミングス「白い光の朝に」
若手女性シンガーソングライター 平賀さち枝が、京都を拠点にするインディーズバンドHomecomingsとコラボして制作した曲。これは今年の曲なんだけど、ユニット名の付け方が「カジヒデキとリディムサウンター」に酷似しているのはリスペクトかオマージュかなんかなのかな?この曲では1番が平賀さち枝、2番がHomecomingsの畳野彩加によるボーカルで、メインボーカルと相棒の役割を入れ替えている。まあ一番シンプルな形ですよね。そして間奏のあとのCメロでまた平賀→畳野の順番で歌うんだけど平賀さち枝が最後のフレーズの辺りからコーラスを重ねてくるのが凄く美しい。
さて、次回は「タタタのリズム学」。三連符のリズムについて学ぶ訳ですが…あれ、ボーカル術の後編じゃないんだね。