今更ながらBABYMETALの快進撃に関する覚え書き

BABYMETALのさいたまスーパーアリーナのライブも大成功で、6月に行われる次のライブが大変楽しみな今日この頃だけど、ライブや、年末のNHKの特番を受けて彼女たちのブレイクにフォーカスする記事も多数出て来ている。しかし、その中には事実誤認を含む物もあったりする。そこで「じゃあ俺が書くか」となるのが私たにみやん。今回は普段から思っていたことを体系立てて整理するという事をやってみたい。

まず最初に結論から入ってしまうが、BABYMETALの成功要因は「徹底したこだわりに基づいている楽曲の作りとメンバーのパフォーマンス、そしてライブのエンターテイメント性がずば抜けて高かったから」だと考えている。でもそれだけではたいした説明になっていないので、その辺を解きほぐしていきたい。コンセプトやら何やらの話。楽曲の話、ライブの話、メンバーの話。今までされてきた話に+α出来るような内容にしました。

●コンセプト面と立ち上げ~ベビメタはあまり期待されてなかった!?~

まずはプロデューサーであるKOBAMETALが今から2年以上前に日経TRENDYのインタビューに答えた記事からいくつか抜粋。

BABYMETALは、さくら学院の重音部という位置付けだが、企画自体はメインボーカルのSU-METAL(中元すず香)が所属していた「可憐Girls」が09年に解散となった辺りから構想していた。 SU-METALを中心としてメンバーを探したが、彼女が独特な存在感を持っているので、まったく別のキャラクターを加えるのがいいのではという結論に至った。そこで、SU-METALの周りを天使のような子たちが踊っているのはどうだろうと、YUIMETAL(水野由結)とMOAMETAL(菊地最愛)に参加してもらうことになった。 曲にしても、ライブ演出にしても、過去にメタルシーンを築き上げてきた先人たちへの愛情と尊敬を込めてオマージュしつつも、決して懐古主義にはならないようにアレンジし、メンバーに体現してもらおうと努めている。今までもメタル風味のアイドルソングはあったが、BABYMETALの場合は、まずベースに本格的なメタルサウンドありきのアイドルソングをイメージしている。

ということで「メタルありき」かつ「SU-METALありき」で作られたのがBABYMETALなんだけど、知っての通りさくら学院の重音部という位置付けでスタートしている。因みに今は料理部としてゆい・もあが所属しているミニパティさくら学院より前に存在していて(メンバーは別)、さ学結成後ほどなくして合流している。この派生ユニットという手法により自由度が担保されたという説明がされることは多く、確かにその通りだけど、それ以上に「コケても別に痛くない」というリスクヘッジ的な側面はあったのではないだろうか。むしろ、最初は期待されていなかったからこそ単独の売り出しではなくさくら学院の一部活という位置付けでスタートせざるを得なかったのではないだろうか。

僕が興味あるのは、このベビメタに関する方針が長期的な視野をベースにしたものに変わった瞬間がどこにあるか、という話。Dragonforceのハーマン・リは「Road Of Resistance」のギターについて2013年から作業を進めてきたという発言をしている。

この時点でメタルレジスタンス第3章まで決まっていたのかどうかは知るよしもない。さすがに「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の別バージョンへのクリストファー・アモット(ex. Arch Enemy)の参加位の位置付けだったということではないだろうけど、2013年の終わり頃(LOUD PARKに出た辺り?)では既に海外展開を含めた相当先のことまで考えていたことは間違いない。ただし、先述したように結成当初はおまけ程度の扱いだったのも事実。「ド・キ・ド・キ☆モーニング」のMVを公開後海外からの反応があったりした辺りからそれなりに考えてたのかもしれないけど、キツネサインの発祥のエピソードなどミクロレベルの話も含め、創発的に現状をキャッチアップしてうまく売り出していく方向に持っていったのはお見事としか言い様が無い。

●楽曲面の話~メタルじゃなくね?という問い~

こだわり、という部分がとても良く出ているのが楽曲。引き続きKOBAMETALインタビューからまた引用。

 メタルは非常に細分化されたジャンルで、一言で語るのはとても難しい。パブリックイメージとしてのメタルは、長髪でレザーの服を身にまとい、尖ったギターで「ギャーッ!!」とシャウトするというような感じかもしれない。しかし、日本のメタルシーンだけでも、いわゆるアイアン・メイデンに代表される正統派メタル、マキシマム ザ ホルモンのようなミクスチャー・コア系、パンクやハードコアの混じったエモ・スクリーモ系、ヴィジュアル系のなかでもメタルアプローチを取り入れたV系メタル、などさまざまなタイプが存在する。 各ジャンルでメタルの世界観が異なるため、バンド形式の場合は音楽性を変えることが容易ではない。その点、BABYMETALはアイドルからメタルへアプローチしているため、バリエーション豊かな展開ができる。また、それが楽曲に合わせてメンバーの良さを引き出すことにもつながると考えている。

どの曲も、楽曲のコンセプトを先に立ててから作曲家に発注する。発注の段階では、コンセプトや歌詞の雰囲気、曲調、振り付け、ライブパフォーマンスと観客の反応までをすべて想定している。

 「ヘドバンギャー!!」に限らず、作詞、作曲、ミックス、振り付けの方々とは、かなり綿密に話し合って作業を行っている。NARASAKI氏とも相当な回数のやりとりを繰り返し、「シンバルの位置をここにしたい」など、かなりの細かい部分まで相談させていただいた。

あとはヘヴィメタル雑誌「ヘドバン」には、「メギツネ」の編曲をしていたゆよゆっぺ氏が「36個もデモを作ることになった」と述懐するなどこの手のエピソードには事欠かず、コンセプトの追求と先人へのリスペクト・オマージュを忘れていないことがメタルファン含めて納得させてるみたいな話は今迄も語られてきている。

なんだけど、ここであえて言いたいのは「BABYMETALをメタルとして聴いてるリスナーって意外と多くないんじゃない?」みたいな話。というのもベビメタの楽曲は所謂様式美的メタルよりも、マキシマム ザ ホルモンSlipknotの流れを汲むメタルコア・ラウドミュージック的な物の曲数の方が多い。この辺の音楽は21世紀におけるロックフェスの拡大と並行して広がりを見せてきており、轟音を体感し、踊る・もしくは暴れることの快感を求めるようなリスナーは多い。そういう所からベビメタに触れるようになった人は少なくないはずだ(この辺の体感する音楽云々の話は何度も取り上げているけど南田勝也「オルタナティブロックの社会学」に詳しい)端的に言うとマキシマム ザ ホルモンが今ここまで大きい存在になっていることが、ベビメタが受け入れられる素地になっていたんじゃないかと考えられる。

メタルと言いながらそのサブジャンルを押さえているから色々な層にアプローチでき今のファンの多様さに繋がっているのもその通りなんだけど、その中でもとりわけヘヴィロック・メタルコア・ニューメタルと称される今っぽいフェス対応の曲が多いこと自体がまず国内での人気の広がりに貢献している、というのは見逃せないんじゃないかと思うわけ(因みに、海外で日本のV系バンドががんばっているというのも大きいじゃないかとも感じている。DIR EN GREYなんかはメタル系のフェスにもよく出てる。)。

もちろん年季の入ったメタラー諸兄にもウケる出来になっているのは今まで言ってきた通りなので特には語らない。昨年から続けてきたオマージュ・元ネタ深掘りをご参照頂ければ。

●ライブの話~興業のプロ・アミューズ

ベビメタのライブは本当にすごい。これは単独ライブに行ったことのある人ならわかって貰えると思うけど、エンターテイメント性を徹底的に追求しており、そのためにMCを排除してムービーを通じて世界観を作ったりドレスコード(1万人全員コルセット着用)、惜しげも無く使われる特殊効果などとにかく作り込みが凄い。

ただ、ベビメタのライブだけが凄いんじゃなくて、アミューズ所属のミュージシャンの多くが行う大規模コンサートは凄い演出をする者が結構ある。Perfumeなんかも言うに及ばずだし、昨年12月に話題になった福山雅治の男性限定コンサートもだし、サザンオールスターズも復帰後すぐのスタジアムライブではわざわざ松茸とアワビの巨大オブジェクトを作成して激突させるというとんでもない演出をしていた。とにかくアミューズはコンサート・ライブの質の追求にはこだわりがある、というのが実感。

そう考えるとSEKAI NO OWARIのマネジメントをする株式会社TOKYO FANTASYが昨年アミューズの連結対象子会社として設立されたというのはとても納得のいく話である。

余談だけど、アミューズは昨年の紅白歌合戦に単独事務所としてはジャニーズ事務所の6の次に多い5ミュージシャン(セカオワ含む)が出ている。昨年BABYMETALがNHKで特集されたにもかかわらず紅白歌合戦に出演しなかったのは、単純に事務所のパワーバランスへの配慮・枠がないとかそういった問題だったのではないかという気もしてくる。

ともあれこういったステージのすごさは実物を見て色々感じてほしいところではあるんだけど、ライブは当面無いのでBlu-rayなんかで見て頂ければ良いんじゃないかなw

www.youtube.com

しかしこの「黒の夜」の入場シーン(2:00辺り)、あからさまにスターウォーズだろwww

 ●メンバーの話と神バンド

次はメンバーの話。冒頭でも話したとおり、ベビメタはSU-METALの類希なる歌唱力を活かすことを念頭に置いて作られたユニットである、というのはとても重要な話。2008年に可憐Girl'sでデビューした頃から既に凄いと言われていたそうで、確かに歌上手い。他の曲のカバーなんかを聞くとよくわかる(前はYouTubeにあったんだけど消えてしまった)。

しかしYUIMETALとMOAMETALも存在感は確実にある。フロントダンサーみたいな形でSU-METALより前に出てきて踊っているのが大きいかも。意外にこういう形って無いような気がする。

それから神バンド。その筋の人には日本国内屈指のプレイヤーを集めた存在として知られており、今やベビメタのライブには欠かせない存在になっている。しかし、ベビメタが世界的に広まる過程で「神バンドが本格的だったから」という理由付けがなされるのは若干違うんじゃないかな、という感じがする。なぜなら海外の人達に繰り返し再生された「ド・キ・ド・キ☆モーニング」や「ギミチョコ!!」のMV(の中身たるCD音源)には神バンドの演奏は一切無く、打ち込みで音源が作られているからだ。外国で受け入れられた大きな要因は(日本でもそうだけど)やはりコンセプトや楽曲の新規性と、SU-METALの歌唱力、そしてメンバー3人のダンスパフォーマンスなのではないかと。ただし、その後実際に外国でライブを見せるに当たってはやはり生バンドは必須だっただろうし(ライブだと特に音の違いが際立つ)、内外問わず実際にライブを見た人に「演奏も凄かった!」と思わせベビメタの価値を高めるブースター的な存在になっているのも間違いない。実際に武道館のライブCDが日本国内で1週間で2万4千枚も売れたのは、「神バンドが演奏している音源が今までなかったから」というのが大きな理由だろう。

 ●BABYMETALから何を学ぶか

長く書いてきたのでまとめるけど、正直に言うとBABYMETALの成功から学べることというのは当たり前なことばかりである。

  • コンセプトを守り、極端と評されるくらいにコンテンツの質を高めた。
  • リスクヘッジをしっかりして立ち上げ、反応を元に適切なタイミングで売り込んでいった。
  • 音楽面ではオーディエンスの流行なんかも(少々は)意識されていた

あまり面白くない結論になってしまいそうだ…笑。まあそもそも「いやこれ違うだろ」みたいな文章を見て勢いで書いた文章なのでしょうがない。ただし、自分がいつも考えていることを体系立てることが出来たので、満足しているwただし、こう書いてみたものの、それを愚直に追究できるところと言うのは少ないように感じられるところで、そう考えるとやはりアミューズの懐の深さと軌道修正力など含めた組織的なノウハウには色々と学ぶところは多いんじゃないかな、ということを感じた。アミューズの企業研究本とか誰か作ってくれないかな〜笑