たにみやんアーカイブ(新館)

音楽について何か話をするブログです

終わりと始まり、それから僕はあのとき何を話していたか

2ヶ月前に書いたこのエントリの続きの話です。今回は、僕の最近の文章としては珍しく日記っぽい感じ。

青春の、パーティーの終わり

3月15日にOK?NO!!のアルバムレコ発ワンマンライブに行ってきた。やれる曲は全部やりますよ~とのことだったので、本来その日に入っていた予定をうまくやりくりして行くことに。

ライブは1月にリリースされたアルバム「Rhapsody」の収録曲を頭から順番に演奏しつつ、その合間に過去アルバムの収録曲やtofubeats「水星」「SO WHAT!?」のカバーを混ぜていく形で進んでいく。ラップとタンバリン担当の菅野氏が床を見ながら「えーっと、残りは…」と言ってメンバーに突っ込みを受けたりしながら、アルバム最終トラックの「Rhapsody」が終了。別に最後の曲とか言わなかったけどどうするのかな?これから入り口でもらった新曲とかやるのかな?と思っていたところでMC。リーダー上野翔さんが「このOK?NO!!というバンド、もう5年間もやっているのです」とバンドのなれそめを話し出す。しかしその次に出てきた言葉は、まるで予想していない物だった。

「今日のライブをもって、OK?NO!!は解散します」

どういうこと?

「2nd「Party!!!」を出したときに、うれしいことにいくつかのブログで取り上げて頂きましたが、その中でも印象に残っているのが「青春ゾンビ」というブログのものです。「きっと無意識に「青春」を「パーティー」とイコールで結んでいたのでしょう。パーティーはいつか終わります。」という一節はとても印象に残っていて、その通りだなあと。そして僕にとってはOK?NO!!がそれでした。Partyはいつか終わるんです。」

※MCの細部までは再現できてません

そして演奏された最後の新曲「See You」もこれまた本当によい曲だったし、まさにOK?NO!!の音だった。

ライブはアンコールに「Party!!!」をもう一度演奏して終了。本当にパーティーは終了した。もちろん大好きなバンドが解散するのは残念だった(しかも解散宣言を聞いたり本当に最後のライブに行ったりというのは人生で初めてだった)けど、その終わり方はあっさりしていて、後に引きずらない物だった。そして家に帰ってから、入場時にもらった「See You」の歌詞カードの内容を確認していたら、だいたい全部納得した。

Hi, charlie! How have you been? Nice to see you. I'm fine. but it's tough for me to move from here. I know. I must found new apartment. Do you know nice one? やあ、チャーリー!調子はどうだい?久しぶりだね。俺は元気だよ。 だけど、引っ越さなきゃいけなくて大変なんだ。新しいアパートを見つけないといけなくてさ、わかってるんだけどね。 良い物件知らないかい?

ここで出ている人名「charlie」は彼等が敬愛しているCymbalsが結成された最初期の名前「Spaghetti Charlie」に由来する。彼等は「Party!!!」にもそこから取った「Meat Spa」というそのものズバリな曲を収録しているけど、最後の一曲を作るときにもここまでド直球なCymbalsオマージュを出してくるとは、と恐れ入った。まるで「最後にもう一度みんなで今まで通りのやり方で最高のものを作ろう」という意気込みで作られたビートルズの「Abbey Road」じゃないか。どこまでも青春で、パーティーで、とびきりアウトプットが良かったOK?NO!!。本当にありがとうございました。初めて(最後)を目撃したバンドがあなたたちで良かった。

始まりの日。あの日僕が話していたこと

ここで話はいきなり2週間ちょっとさかのぼる。渋谷、表参道。この日僕はTWEEDEESのプレミアムショウという名のデビューライブを見に来ていた。TWEEDEESについて改めて説明すると、結成時「Spaghetti Charlie」という名前だったことでおなじみのバンドCymbalsの沖井礼二さんがソロ歌手として活躍していた清浦夏実さんと結成したバンド。沖井さんも淸浦さんも自身名義の作品はここ3年出てなかったということもあり、ファンの期待は肌に伝わってくる程だった。

ライブ自体の内容についてはナタリーのレポートを参照ください(丸投げ)。1曲目からうなる沖井さんのベース、個性の強い沖井サウンドを軽々と乗りこなす清浦さんの上品だけど茶目っ気のある歌声(土岐さん・青野さんの系譜を感じるなあと思ってたらやっぱりそうだった!)、そしてめちゃくちゃ長いMC(FROGの時からそうだったのでわかってはいたけど、更に長くなっていたような)。2015年の沖井サウンドの現在地点を見られて満足。

ところで、その日の夜に上がった、2月発売のMARQUEEでTWEEDEESのインタビューを担当したライターの山本祥子さんによるツイート。

そこにぶら下がっているリプライを見ればわかるんだけど、ここで言われているTWEEDEES論をかましていた「右の方」は僕です。さて、この時僕が話していた「TWEEDEES論(そんなたいそうなものではない気がする)」とは、どのようなものだったのか、インタビューの内容に触れつつご説明したい。結論から先に言うと、「だからTWEEDEESはうまくいく」。

清浦 私はその、最初に映画談義をしたんですよ。で、好きなジブリ映画は何?って話になったら、お互い「紅の豚」で。更にイタリアの話、映画音楽の話から、エンニオ・モリコーネが好きなんですっていったら 俺もだよ!!って返されて。あれ?って。 沖井 「紅の豚」はデカかったと思う。他にも数多くある中で、豚の泣きが好きだっていう。 清浦 あれは大人の青春映画だ!って盛り上がって。うん、そこをとっかかりに合致していった感じがありましたね。

この日(最初に会話を交わした日)の翌日にTWEEDEESの結成が決まったのだ。細かい話だけど価値観が一致しているのは大事。ちょっと話してそれがわかったのであればとてもハッピーなことだ。それにしても「紅の豚」という共通項はなんかわかる感じがする。

しかし、僕が重要と思ったのはこのくだりよりも、その後の初レコーディングの話。ちと長いよ。

清浦 沖井さんに比べて主張が無いと思ってるんですけど……どうなんだろう? 沖井 プライドが高いし、気も強いので、彼女の中で明文化できてない部分もあると思うんですけど、「月の女王と眠たいテーブルクロス」が初の歌録りだったよね? 清浦 その話、しますかぁ(苦笑) 沖井 僕がディレクションして歌ってもらうのも初めてだったから、お互い試行錯誤しつつ、時間がかかったけどいい歌が取れたねって一段落した後に、ほら、僕、多重コーラスが好きじゃないですか。 ——沖井礼二の持ち味ですからね。 沖井 でしょ?いつもの調子で始めたら怒り出して。なんで怒ってるんだろうと思ったら、ソロでは自分だけで歌ってたから、自分の声の曲に他人の声が乗っかるのがイヤだと。 清浦 許せなくて喧嘩したんですよ。なんで勝手にどんどん入れていくんですか?しかも沖井さんの声で!って言い合って。最終的に朝8時のスタジオで私が泣く、みたいな。 沖井 エンジニアさんは凍り付いてて。 清浦 要は互いの持ち場をただ守ってただけなんですけど。 沖井 でもそこまでその持ち場を守ろうとする人は初めてだったし、驚くと同時に、年齢もキャリアも上の人間にそこまで食ってかかれる何かを持っていることに対して、大人の僕は頼もしく思うことも出来るわけで。

まずは沖井さんの言っている通り、とにかく自分をしっかり持っているなあという感想が浮かぶんだけど、その一方で僕は「沖井さんはようやくベストパートナーに巡り会えたのでは?」という気持ちになった。なぜかというと、過去に沖井さんのこんなツイートを見たから。

これを読んだとき、Cymbalsの頃の沖井さんは孤独だったんじゃないかな、ということを 感じた(もちろん憶測に過ぎないけど)。特に後期に至っては土岐さんや矢野さんもソロ仕事が増え、別に何か言おうというモチベーションもなかったんじゃないかな、とか思うわけで、それゆえにCymbalsは続かなかったんじゃないか。でも清浦夏実という人は、制作時には自分を貫いてマジで沖井さんにぶつかっていくし、ライブなんかのトークでもひとり突っ走る彼をたしなめる役割を務めている。こういう風に真剣に渡り合おうとしてくる清浦さんは、もしかしたら沖井さんにとっての最良のパートナーなのではないだろうか。

面白いのは淸浦さんが沖井さんより二回りくらい年下な事。決して100%対等というわけではないのだろうけど、逆にその年齢差ゆえのマジックが生まれてきているんじゃないかな、というのはライブのMCや日々のTwitterなんかでの会話を見ても思うところ。というわけで改めて結論。「だからTWEEDEESはうまくいく」。

そしてその絶好の組み合わせで作られたTWEEDEESの1stアルバム「The Sound sounds,」はどうだったか。清浦さんがナタリーのインタビューで語っていたように、花澤香菜竹達彩奈(時系列の都合上言及されていないがもちろんさくら学院バトン部Twinklestarsもだ)等への楽曲提供を経て、ポップスとしての普遍性を獲得してきた沖井礼二による、珠玉のポップス作品がそろっている。

いつもの沖井節ともいえる「電離層の彼方へ」とかももちろん良いが、どちらかというとそこから小難しさを少し薄めてすっきりとした「沖井ポップス」になっている曲が大半で、FROGやSCOTT GOES FORよりも遙かに幅広い層に届きそうだ。特にM-3「月の女王と眠たいテーブルクロス」や最終トラック「KLING!KLANG!」なんかは特にそうで、軽やかなポップスの中に沖井さんの個性的なベースラインが乗っかる面白い曲だ。

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そして清浦夏実が作詞だけでなく作曲にも取り組んだ「Rock'n Roll Is Dead!?」は、軽快でどことなくみずみずしさの漂うメロディが特徴的なナンバーで、このバンドの伸びしろを感じさせる。ミュージックマガジンの評通りカバー曲に異物感は否めないけど(ジミヘンの「Cross town traffic」なんかはCymbals時代のカバーとほぼ同じようなアレンジだ。まああれはいつもシングルの3曲目で、アルバムには収録されなかった物だし…)、まだまだこの組み合わせで色々聴かせてほしい、と思える仕上がりだ。

そして3月23日、僕はタワーレコード新宿店で開催されたTWEEDEESのインストアライブとサイン会に行った。

沖井さん、清浦さん、どうもありがとうございます(ぺこり)。6月の1stライブ、楽しみにしてますね。TWEEDEES大好きです。