映画版「うさぎドロップ」の何が良くて何が良くないか

月曜日に見てきて、いろいろ思うところがあったので、書いてみることにした。

今フジテレビのノイタミナでもやっているうさぎドロップ。元はフィールヤングっていう雑誌で連載されていた漫画。いたっていうのがポイントで、原作は既にこの春完結している。芦田愛菜が出てくることや、独身男が子供を引き取るっていうストーリーから「マルモっぽい」という声もよく聞くけど、明らかにこっちの方が先だからね!

知らない人のために簡単にどういう話か説明しとこう。祖父の葬式に行った河内大吉(独身30歳→映画では27歳)は、祖父の隠し子りん(6歳)と出会い、引き取ることになる。その二人の共同生活と、その周りの人たちとの交流を描いたお話。因みに原作コミックス1巻〜4巻は子育て中心の話、5巻〜9巻は第2章ということでいきなり10年飛んでりんを中心とした恋愛模様の話になっている。因みにラストは衝撃。というわけではないけどハチクロ並みに僕はアレだなあと思った。

そんで映画版のキャストは大吉役に松山ケンイチ。そしてりん役には芦田愛菜。監督はSABU

さて、そんなわけでこの映画についてちょっと語りたい。因みに僕は2年前くらいに原作を会社の先輩と後輩に勧められてからのファン。そこは割り引いた方がいいかも。

 

まずは良かった点。SABU監督もちょうど子供が生まれたばかりということで育児が大きなテーマとなっているこの作品に関心があったことが引き受けたきっかけだったとか。そのため、「育児の大変さ」を短時間の映像の中に凝縮することはすごくうまかった。緊急一時保育への送迎と仕事の両立で疲弊するシーンとは躍動感がありかつ的確。そんでもって大吉が残業のない部署への異動を志願したり、いろいろなものを引き替えにしてもりんとの暮らしを選ぼうとするシーンは、子育て経験者ならではなのかな、というくらいうまく描写されていたように思う。 それから主演の二人はやはりたいしたもの。特に芦田愛菜。最初あまりにもこましゃくれた彼女はりんみたいな素直でいい子になれるのかと思ったが、なかなかどうしていい演技してる。りんは異常なほどにいい子なのだが、それはこういうくらいに大人びいちゃってる子にしか演じられないのかもな、と思ったり。

 

しかしだ。正直に申し上げてこの映画は良くない。少なくとも僕は何度か帰りたくなった。なぜか。理由はたくさんあるのだけど…

●コウキママのミスキャスト 唯一にして最大のミスキャストがコウキママ役の香里奈。原作におけるコウキママはやんちゃなコウキに振り回されながらもしっかりしたキレイ系のワーキングシングルマザーな訳ですが。なぜモデルに設定変更までするんだ…コウキ・コウキママとりん・大吉の対比もこの作品の一つの味だと思うんだけど、モデルという割と特殊な職業にしてしまうことで、リアリティが薄れてしまった感がある。小西真奈美とかにすれば原作のイメージに近いし良かったんだけどなあ…

●原作と監督の作風のミスマッチ コウキママがモデルになったのはこのためかと思うくらいにガンガン入れられたダンスシーン。正直引いた。というか、後述するけど原作が日常を淡々と進めていく中でいろいろ大吉やりんが発見して育っていく物語なのに、アバンギャルドな作風のSABUを当てたのはなんでなのかね。

というかね、一番思ったのは原作ホントにちゃんと読んだのかなってこと。原作厨じゃないんだけど、何かすごい疑問だった。というかひねろうとしすぎな感もあった(特に最初の方。シーン構成をやたら行ったり来たりさせる意味がどれだけあったのだろうか)。SABU監督の性格的なもののような気もするけど。とにかく映画版オリジナル要素として付け加えたり変えたりしたものがことごとくベースにある原作とマッチしていない。結果としてこの映画何がやりたかったの、ということがものすごくぼやけてしまったように思う。この映画はおくりびとのように淡々と進めながらもそこにいろいろな細かい起伏をつけていけば良かったんじゃないかな。

原作に「俺がりんを育てているのか、りんが俺に育てられているのか」っていう大吉の自問自答があって、これはこの作品の全体に通じるテーマであるのでこの言葉を締めに持ってくれば良かったのに、よりによって「りんの姿を見てると癒やされる」…ってなんだよ!アホか!そんな安っぽいまとめ方になってしまったことにものすごく僕はずっこけた。所々見られる感はあったからいいかなと思ったんだけど何かかろうじて残っていた残骸を全て焼き尽くされた気分になったよ…

因みに現在放映中のアニメは非常に出来が良いとの評判。僕もそう思います。追加シーンが実はあったりするんだけど、それも原作を踏まえてすごく丁寧に作っているから、違和感がない。

原作を読んだりアニメとみたりしたことのある人にはとりあえず薦められない映画。それ以外の人には…どうだろう。ただ、SABU色全開にするのかハートフルで行くのか迷ったあげくどっちもカバーしようとした結果中途半端になってしまった気がするなあ。残念。