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改めて、音楽はどう死に、どう生きるのかみたいな話

Music

改正著作権法が衆参両院で可決されてしまった。恐ろしいほどあっさりと。これにより、下記のようなことが変わることになった。

  • 違法にアップロードされたファイルをそれと知りながらダウンロードすると刑事罰がつく
  • 市販のDVD、Blu-rayなど、アクセスコントロール技術(特定機器でしか再生できないようにしている)の施されたパッケージコンテンツを、保護技術を解除してデータを吸い出す行為が違法に(刑事罰は無し)。
  • 上記行為を行うソフトウェアの販売が禁止に(これまでは不当競争防止法での禁止という形だった)

詳細:違法ダウンロードに刑事罰・著作権法改正で何が変わるか 壇弁護士に聞く - ITmedia ニュース

ネット上には悲観的な声が上がっているのだけど、まあ僕も多分に漏れずこの改正(なんてとてもじゃないけど呼べたもんじゃない)には反対。なので、今までも色々言ってきた僕としてはココでもう一度自分の言葉で考えていることを書きたいな、と思う。タダ、前提ってものがあるので、今回の過程とかその辺も踏まえて色々考えてることを書きたいと思うのです。

●政治的なプロセスの話

国会は国民の代表による討議の蟆、という言葉のむなしさをこんなにも感じる日が来るとは思わなかった。いや、思っていたかもしれないな。こんな形で、とは思わなかったけど。

衆議院ではろくな審議もされずに数日で委員会を通過(しかも、議員立法で修正案として違法ダウンロード刑事罰化を潜り込ませるという始末)、そして参議院では参考人招致などはあったけど、結局235の投票に対して賛成223,反対12。圧倒的ではないか!………orz本当に、国会議員には音楽を楽しむ市井の人たちがどういうふうにしているかということに想像力が及ぶような人はいないのか?それもさることながら、今回の法案は消費税増税法案を通すために民主党が自民・公明に対して相当な妥協を図った中の一つという見立てが一般的で、見事に僕らの楽しみは党利党略と政争のだしにされてしまいましたとさ。まあ実際彼らにとっちゃたいして重要じゃないんだろうな。

そう考えるとますます無力感が募ってくるところ。ていうかこの暴力的な行為に僕らは対抗できたのか。という問いへのクロサカさんの回答。

ぼくらの七日間戦争:クロサカタツヤの情報通信インサイト - CNET Japan

津田さんたちが反対の活動をしていたのは知っているんだけど、今回はまったく歯が立たないというか、そもそも勝負にすらなっていない印象が強かった。正直、前回の「違法化」の時の方が、まだ一応、カタチにはなっていたような気がする。

まあ何というか無理だったよねという話で、「反対者が誰だかわからない」「消費者の声を代弁する強力な組織の不在」による無力というのはまさにその通りで、為す術無く決められてしまった。それゆえに、覆し方も見当がつかない、というのが正直なところ。MIAU?一つの可能性としてはありか。入るかな。ただいまのままではあまりにユーザー側は無力すぎる。ミュージシャン側は何も思わないのかな?という話で次のお話しへ。

●この法律で誰が幸せになるの?

まあはっきり言って誰も幸せにならないよ。今よりはね。ただ、そのままという人はいるね。

なぜネットだけは“特別扱い”なのか 違法ダウンロード刑罰化を巡る非常識|岸博幸のクリエイティブ国富論|ダイヤモンド・オンライン

1つは、売上が減少し続けている音楽などの日本の文化を守るために必要という点です。もちろん、売上減少の原因にはコンテンツ業界の側の(制作力とビジネス展開の両面での)努力不足もあります。しかし、ネットの普及と反比例する形で1998年以降音楽の売上が継続的に減少していること、2010年時点で違法ダウンロードは正規ダウンロードの10倍もあった(レコード協会調査)などの事実を踏まえると、やはり違法ダウンロードの蔓延が大きく影響していることは明らかです。

業界の幹部の一般的な見方はこんな感じでいいと思う(国会ではあまり触れられていなかったけど岸博幸はエイベックスの取締役)。ただ、本当に違法ダウンロードに罰則をつけて、リッピングを禁止して、CDやDVDの売上げが伸びるようになるかというと、大いに疑問符がつく。津田さんは萎縮しか起きないと言った。その通りだろう。あまりにもこの法律は恐ろしすぎるから。

そこでさっきの壇弁護士の文章に戻るんだけど、この法律で一番気になるのは、『どう運用するの?』もう少し具体的に言うと「違法ダウンロードをしている人をどうやって発見するの?」ということ、更に言うと「違法ダウンロードされたファイルをどうやって判別するの?調べるの?」ということ。よく例としてあがっているのが、Twitterなんかで「DVDから変換した映像をiPadで見てる」ということを言うと、それを誰かがたれ込んで逮捕、みたいな素晴らしい構図。昨今の一般人炎上を見ると、他のちょっとしたことがきっかけで芋づる式に出てくるかもしれない(こいつの発言イラッとするな→TL見る→違法行為発券ktkr!みたいな)。まあ実際そういうたれ込み全てに京都府警以外の警察が大まじめに取り合うとは思えないんだけど(主に手間とかの問題で)、まあいやな社会になるなあって気はするんだけど。その操作の過程でファイルをどう見るの?全部PCの中見るの?そして違法かどうかを判別する手法とかはどこにあるの?と非常に気になる。

例えばミュージシャンが「みんなに触れて欲しいから」っていってリリース予定の音源を先行配信したとする。そこにDRMとかなかったら、リリースしたあとは正規音源なのか違法音源なのか全く分からなくなるんじゃないかな。どうなんだろう。自分たちがよかれと思ってやったことでユーザーが傷つくことに繋がるんだったらミュージシャン側もそういうことをやらなくなるだろうし、ユーザーも無料ものとかに手を出そうとしなくなってしまうのではないかな。

DVD/Blu-rayリッピングも、理屈は分からなくもないんだけど、今はスマートフォンTabletでデジタルコンテンツ見たいという需要があるのだから、正直に言うとようやく増えてきた映像コンテンツの売上げに若干は水を差すだろうな(映像ソフトのリッピングはそれなりに手間がかかるのでそ子までやってる人はいないと思うけど…)。

おびえて暮らすユーザーも、幸せになれない。メーカーも結局売上げ増にはならないから幸せになれない。じゃあ誰が?それを高みの見物してる人?

●未来はどうなる

この話って、「音楽業界の縮小」として語られるけど、実際は「レコード業界の縮小」だよね。ミュージシャンの収入は少しずつライブに移ってて、昔より音楽の楽しみっていうのは増えてると思うし、実際ミュージシャン側の収入もグッズ販売とか音源収入以外にも複線化してきているので、「音楽業界」自体で考えると言うほどではないのかもしれない(この辺は以前書評した牧村憲一・津田大介「未来型サバイバル音楽論」に詳しい。)。決して楽ではないだろうけど。ただ、音楽はレコード会社だけではなくてマネジメントもいればレコーディング・ライブの音響・証明・効果など色々な人たちのお仕事で成り立ってるわけで、そのバランスというのが1998年辺りを境に変化してきているというのは大いにあると思う。その変化はひたすらレコード会社が冷や飯を食い続ける構図になってて、そういう観点からすると何とかしたいという思いは彼らにあるんだということは想像できる。ただ、何度も僕が言ってるとおり、あくまでもレコード業界の縮小というのはマーケティングの失敗というか商売的に失敗していることによるものなので、それを取り戻すのはあくまでも商売的な努力によってなされる物であるべき、というのが僕の考え方。

この前のサカナクションのツアーファイナルで山口一郎さんが言ってた。

「テレビとかラジオって無作為に人に入ってくるじゃん、それをきっかけにたくさんの人に知ってもらえれば、できることが増えるし。どんどん外に挑戦していこうと思います。外に出ていくことで、変わるかもしれないけど、必ず意図があるから。戦略を立てて、音楽好きを増やそうと思います。でも、歌番組には出ないと思うけどね(笑)。」

この発言って、実はわりと本質をとらえてると思うんだけど、実際今の時代歌番組ってコンテンツとしての魅力はかなり低いと思うのね。 趣味が多様化しまくっていて「ただ曲を演奏するだけ」をわざわざ見る人って、そりゃあ元々音楽に興味がある人だけでしょう。だから民放のゴールデンタイムの歌番組は+αをつけようとしてどんどんバラエティ番組化していってしまった。だからそれ以外の切り口からサカナクションという言葉に興味を持たせて、CDやライブへの導線にする(まあそうすると今の即完当たり前な彼らのライブ事情では新規ファンを吸収できないという別の問題があるんだけどさ)。そういう観点、あらゆる媒体に音楽はついてるから、それを入り口にしてもらうというのが現代においてミュージシャンがファンを増やすために取れる最善のアプローチなんじゃないかな。

そのときに、今のレコード会社の体質だとちょっとしんどいかもね。その辺はレンタル・配信・物理媒体(CD等)の3形態がそれぞれ見事にバッティングしてしまっているので何とも。個人的にはレンタルの価格を上げて物理媒体の販売価格を下ゲルのが良いんじゃないかと思うんだけど、短期的にはぐんと収入が落ち込むと思うので、簡単には取れないと思うけど。ただ、今のアイドルバブルが消し飛んだら物理媒体は本当に何も残らなくなっちゃうよ。ユーザー締め上げてないで、どうすればCDを買ってくれるか(というよりも音楽に触れようとしてくれるか)を正攻法で真剣に考えるべき。

だから、今回の著作権法改正には、断固として反対です。