たにみやんアーカイブ(新館)

音楽について何か話をするブログです

ヤングなでしこの青春ドラマ「やんなで!」が楽しかった話 その2

というわけで、次はサッカーの話するよ!!

ヤングなでしこ2012というチームの話

主力を大幅に欠いた状態でここまでやれたのは素晴らしいとは思うんだけど、客観的にこのチームの良かったところとそうでないところをまとめてみることに。

良かったところ

とにかく思い切りが良いプレーが多かった。日本大補yの試合って(特に調子悪いときは)中盤でだらだらパス回しばっかりしている印象が多かったけど、特に2列目の選手の飛び出しが多く、結果大量の得点に繋がっていたというね。昨日のエントリで天真爛漫さという話をしたけど、その辺が現れていたのが攻撃陣。

あとはテクニックに秀でた選手が多かったなあと。個別の選手にはあとでコメントするけど、得意技のある選手が多かったね。まあとにかくスイス戦での田中陽子による両足FKはとにかく驚いた。一発目は弾道がものすごく美しかったしね。あとは柴田・横山などテクニックがある選手が多くて、それぞれ魅せてくれた。

良くなかったところ

まあ最初にいうと監督の采配が謎だった。特に最終戦ではこれまで流れからの得点を産み出す起点となっていた柴田と西川をベンチスタート。そして結局早々に交代して出すことで貴重な交代枠を無駄遣い。まあ他の所でもわりとそういうのが多くて、なんかあまり戦略性はないんだろうなあと思った。ドイツ戦の「5-3で勝てばいい」発言は、結局絵に描いた餅で、U-17辺りならともかく、最後の世代別代表であるU-20ではある程度戦術思考というか行動様式を鍛える必要があるわけで、そういう視点はなかった。まあ監督がそこは全く重視していないとたびたびいってたのでその点についていえばもう諦めるしかなかったのかな。

あとはこれに関していうと凄くしょうがないところがあったんだけど、主力を欠いたFWとDFの選択肢が少ないのが非常に残念だったなあ。とにかくDF陣はつらかった(とはいえ和田とか使ってない選手を出すのも選択肢としてありだったんじゃないかとは思うくらいSBはしんどかった右狙われまくり…)。そしてFWはスピードのある選手が少なくて局面打開が難しかったね。むーん。

あとはこれもU-20だからしょうがないんだろうけど連動性が少なくて個人技便りだったところが大きかったかな、と。基本ビルドアップも猶本頼みだったし(ドイツ戦はそこを突かれて猶本が徹底マークされ、開始1分の失点に繋がった)、ドリブルの時にしろ何にしろカバーに入る動きは少なかったように見受けられた。そこがもっと上手くいけばドイツとの打ち合いも出来たんだろうになあと思い、残念なところ。その辺はそれぞれが所属チームで戦術眼を鍛えるしかないんだろうけど、代表みたいに普段慣れていない選手ともやる場で上手く出来るのか、という話もある。そこは心配。

個別の選手の話

それにしても今回は数々の新しい才能と出会えて良かった。発見の多い大会だったと思う。まあビジュアル的にもとかそういう話もあったんだけど、魅力的な選手は実際多くて、その中からピックアップして紹介。

猶本光

まあ文武両道・才色兼備のレッズレディースの次代を担うボランチ。とにかく的確なパスと周りを見回しての動きとかは本当に秀逸というか、次代の司令塔だなあと。田中陽子とダブルボランチを組んだときは彼女を自由に動かすためわりと下がり目なんだけど、ここぞというときには出てきて一気にたたき込む。その加減をわかっているのが凄い。ただその分負担も大きくて、全試合フル出場になった死後半2試合は徹底マークされて本来の力を出し切ることが出来ずかなり不完全燃焼だったんだろうな(そういう意味でも複線的な戦術オプションはあって欲しかったなあと)。彼女のプレイで一番凄かったのは、やっぱりメキシコ戦の2点目のミドルシュート

 

これは痛快だったね。女子で言ったら澤・男子で言ったら遠藤のような選手にこれから成長していって欲しい。今はレッズレディースで控えだけど、今回の大会で成長してレギュラーに定着できるんじゃないかなと思うわけ。彼女は次回のU-20W杯もあるしね。応援しますよ!

柴田華絵

正直に言って今回一番凄い選手だなと思ったのは柴田だった。田中陽子の個人技はそれだけで試合を打開する凄みというのがあるんだけど、彼女は流れの中からゴールを産み出せるというか、最も得点のにおいのする選手だったと思う。それが象徴的に出ていたのが韓国戦での2ゴールかな。

 

1点目のゴールは果敢な飛び出し、そして2点目のミドルシュートは猶本のミドルと同じくらい凄かった。というか、左で打ち込んで左のポストに当てるというのが凄い。というか基本的に技術力が平均的に高いなあと思った次第。ナイジェリア戦のスルーパスなんかもここぞという所に出したよね。

まあ彼女に関して言うと、攻撃だけじゃなくて守備での貢献度もむちゃくちゃ高くて、前線でのチェイシングによる相手のビルドアップを思うようにさせない動きなんかもたいしたもので。技術と完成が高度に融合していて、とにかく柴田あってこそのヤングなでしこであり、今回シルバーボールに選ばれたのも納得のエース。おそらく今回のメンバーの中でフル代表に一番近いのは彼女だろう。

田中陽子

そのビジュアル面での魅力もさることながらとにかくキックが半端なくうまいというのが特徴の今大会を象徴するヒロイン田中陽子。初めて国立競技場に見に行ったスイス戦で右と左でFK決めるという偉業をいきなり魅せてくれたという。

 

1点目はものすごくきれいな弾道を描いてた。2点目も決まりそうだなと思ったら、本当に決まった。スイス戦はもうこれのために行ったと言ってもいいくらいで。その技術力を存分に見せつけてくれたよね。高校時代怪我をしたときにとにかく徹底的に蹴ることを鍛えたらしく、右左どっちでもクオリティの高いボールを出せるのが凄い。

そして3位決定戦の無回転シュートね。

 

3位決定戦はフィジカルで圧倒されててきつい展開だなあと思っていたところだったので、そこをこのシュート一つで変えてしまった。それが出来るのが彼女の最大長所であり魅力であると言ってもいいんだろうな。ここで面白いのは本人が「フォルランスナイデル本田圭佑のシュートの映像を見て研究した」と言っているところ。映像へのアクセス機会が増えることで世界水準のいいプレーを学ぶ事が出来るんだね。これからはDVDだけでなくYouTubeで一流プレーを学んで大成しましたみたいな話が出てくるかもしれない。

あと、ここだけはどうしても述べておきたい韓国戦の3点目。

 

ここでの彼女のポジショニングは凄く良くて、一旦ゴール直前まで行っているところを戻ってるのね。おかげで高城からのパスを悠々とゴールに決めている。運動量も豊富だし、たいした才能だと思うね。やっぱり猶本とのボランチコンビが一番はまってたなあと言う気がした。

西川明

正直に言って力不足が目立ったFW陣の中でめっけもんだったなあと思うのが、西川。FW陣の中ではスピードもわりとあって、裏に抜ける動きが結構出来るので一番機能していた。連動性もあったし、かなり良い味出してたなあと。京川や岩渕が出られなかったのもあって滑り込みみたいな感じになっただろうけど、彼女自身は自分の得意な部分を伸ばして行くことでもしかしたらこれからのなでしこフル代表にも選出される余地があるんじゃないかなと思った。基本的には西川ワントップがあのチームでのベストチョイスだよなあ。

藤田のぞみ

今回のキャプテン。レッズレディースでは既に去年からスタメンはっているので経験豊富。というわけでチームを大いにまとめていたなあと。プレイ的には猶本がビルドしていたんだけど、雰囲気やいざというときの精神的支柱としては獅子奮迅の小さな巨人。足の調子とか良くない中で本当によく頑張ったなあと。特にグッと来たのは3位決定戦のナイジェリア戦。体格的には一番小さいのでどう考えても圧倒的不利な彼女。しかしながらものすごい危険察知能力を発揮してものすごく泥臭いスライディングとかで相手のチャンスをガンガンつぶしていき、日本の危機を幾度となく救った。それだけに後半のゴールは決めて欲しかったなあ。結果ノーゴールだったわけだし。ナイスキャプテン。体格的に今後の代表招集には高い壁があると思うけど、まずはレッズレディースで思いっきり戦って結果を出して、猶本・柴田と共にふたたび代表のユニフォームを着てピッチに立って欲しいな。

そんなわけで「やんなで!」特集もこれでおしまい。今月からは浦和レッズレディースの本拠地が駒場スタジアムになるので、折に触れて歩いてスタジアムへ行って応援したいね。なでしこリーグの試合は1試合1000円で見られるし。女子サッカーのこれからの発展に大いに期待!!