たにみやんアーカイブ(新館)

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Spotify上陸間近な今、敢えて国内系音楽聴き放題サービスについて考える

なんか今年になってからSpotify関係のニュースを良く見かける。どうやら話によると今月中には日本でのサービスを開始するんだとか。

間もなく日本上陸!? 無料の音楽ストーミングサービス「Spotify」とは? (1) 無料の音楽サービスSpotify | マイナビニュース

そんな中、全く注目されずに埋もれてしまいそうな国内系音楽聴き放題サービス。実際は四半期ごとに契約者確実に増えてて存在感は出つつあるのだと思うけど、地位を築く前に吹き飛ぶ懸念はある。とはいえそんなんで終わってしまってはもったいないと思うので、いい機会だからこれらのサービスの使用感をさわってみて、それを元にSpotifyとかに何が求められるのかを考えてみたい。因みに2013年の6月〜9月でのサブスクリプションサービスの売上は7億4200万円。これを1/3すると2億4733万円、ということになるので、980円で割ると2013年9月末での契約者数は25万人位と推定される。それくらいなのか…

この話を思いついたのは、今やっているBABYMETALの楽曲のメタル愛を探るという記事で書くためでのオマージュ元探索をしていたときのこと。最初は基本的なところをTSUTAYAで借りまくっていたんだけど、すぐに借りる物が生活圏に無い!っていう事態に陥っちゃった訳。例えばAttack Attack!とか、新宿か渋谷に行かないと無い訳で、定期圏外だから仮に行くのも一苦労になっちゃうのね。そこで行き詰まりそう…と思ってたところに、「そういえば聴き放題サービスなる物があったじゃないか!!」となったわけ。そこでMusic Unlimitedに契約したんだけど、この機会だから…ということで勢いでKKBOX、後日レコチョクBestにも加入して、聴き比べ・使い比べしていた訳。そんな訳なので個人的な実感に基づくことはご容赦。先にスペック的な物は下記を参照して頂ければ。

【レビュー】月1,000円で聞き放題! 定額制音楽配信3サービス比較 – AV Watch

基本的にはここから大きくは変わっていない。ただ、実体験から得られる感覚は公称スペックとは別なのでその点を重視したい。

●契約まわり

現時点では全部無料体験期間で使っているんだけど、それなりの期間無料体験で利用するためにはいったん本契約しなくてはいけない(Music Unluimitedは30日、KKBOXは通常30日がキャンペーン期間中で60日、レコチョクBestは契約した月の間無料になる)。しかし、ここでMusic Unlimitedは本契約手続きがPCからでないとできないという問題が発生した。結局自宅のPCでやったから良いものの、PCを持ってない(もしくは充分に使えない)人も決して少なくはないので、スマートフォンタブレットでも決裁できるようにした方がいいのではないかと思った。

決済手段はそれなりに多様に存在していてまあ良いんじゃないと思う。ただ、前者と併せた話として、スマートフォンで使わせたいならクレジットカードオンリーのMusic Unlimitedは辛いと思う。レコチョクBestやKKBOXはキャリア決済ができるのは大きなアドバンテージだと思う(結局全部クレジットカードで申込みしたけど。ソフトバンクスマートフォン用キャリア決済が対応してない)。この辺はSpotifyでもプレミアムプランを選択する際に課題になるんじゃないかなと思う。

●曲数など

基本的に邦楽の方がメインである僕だけど、最初の方は洋楽(ヘヴィメタル)をかなり聴いていた。結果どう思ったか。

主にメタルばっか聴いていたんだけど、MetallicaArch Enemyなど数曲しか入っていない物もあって「洋楽に強いとはどういうことですか…?」という気持ちにもなった。逆に有名どころはどこでも揃ってる訳で。とはいえ、丁度グラミー賞の発表もあった時期なので色々聴けたのもまた事実。Daft Punkの「Random Access Memories」なんかはKKBOXで初めて聴いた位だ。そういう意味ではこういうサービスはありがたいな、と思う。

邦楽に関してはMusic Unlimitedはちょっとイケてない。KKBOXは元々「LISMO unlimited powered by レコチョク」だったのをリニューアルした関係上、レコチョクからの曲提供があるようで邦楽はそれなりに充実している。なのでKKBOXにある邦楽はレコチョクBestにもある。その上でレコチョクBestはそれよりちょいと邦楽が充実している。いうてもそれを実感したのはマキタスポーツの「推定無罪」がKKBOXになくてレコチョクBestにあるのを発見したとき位だけど。

あと困る話として、Music Unlimitedは自レーベルの歌手でも移籍した人についてのケアがなかったりする。9nineとかはKKBOXにはビクター時代の「first 9」なんかもあるけどMusic Unlimitedにはない。それからもう一つは海外メディアに指摘されていたこの件。

Why Japan’s Music Industry Is Booming… For Now | Billboard

ここで指摘されているのはざっくりいうと「Uulaというサービスを提供してるavexの楽曲がMusic Unlimitedに提供されていない」という問題。そしてレコチョクにはavexが参加していないのでストリーミングサービスではavexの曲は一切聴けない。その点を除けばKKBOXやレコチョクBestはまあまあだ。蓮沼執太フィル七尾旅人の新曲なんかもすぐに聴けたのは大変ありがたい。そんな訳で、検索した特徴的なやつをちょっと表にしてみた(あくまで一例です)。

アーティスト Music Unlimited KKBOX レコチョクBest
サカナクション DocumentaLy」までにCDリリースされた全アルバム DocumentaLy」までにCDリリースされた全アルバム・シングル(ただし原則表題曲だけなのでカップリングを拾えない) DocumentaLy」までにCDリリースされた全アルバム+シングル「セントレイ(カップリングは無し)」
チャットモンチーソニー 「変身」以外の全アルバム・シングル(カップリング含む) 「変身」以外の全アルバム・シングル(カップリング含む) 「変身」以外の全アルバム・シングル(カップリング含む)
cero なし シングル「Yellow Megus」 シングル「Yellow Megus」+アルバム「My Lost City」
AKB48(元ソニー デフスターレコード時代の全シングル・アルバム(劇場版含む) デフスターレコード時代の全シングル・アルバム(劇場版含む) デフスターレコード時代の全シングル・アルバム(劇場版含む)
GLAY なし フォーライフ移籍後の全アルバム+「THE GREAT VACATION」 フォーライフ移籍後の全シングル・アルバム+ベストアルバム「REVIEW」
東京スカパラダイスオーケストラ(元ソニー、現エイベックス) ソニー時代のベストアルバム「ベスト(1989〜1997)」 ソニー時代のベストアルバム「ベスト(1989〜1997)」 ソニー時代のベストアルバム「ベスト(1989〜1997)」
Yngwie Malmsteen 「Trilogy」以降の殆ど全てのアルバム(19枚) ベストアルバム「Yngwie Malmsteen Collection」から3曲のみ 「Trilogy」〜「Fire And Ice」まで4枚とベストアルバム・ライブアルバム各1枚、最新アルバム「Spellbound」
Metallica シングル「The Unnamed Feeling」といくつかのオムニバス収録曲 なし シングル「The Unnamed Feeling」

意外に各社で差があったwざっくり結論を言うと、Music Unlimitedは2,000万曲、KKBOXは300万曲、レコチョクBestは100万曲あると公称しているが結局自分が好む曲があるかどうかなので、曲数の数字自体はあまり意味ないなあと感じた。あとKKBOXには台湾・中国の曲が随分入ってるらしくそれがかさ上げしてる面もありそう。

 ●実利用

実際3サービスの内どれを一番使っているのかというと、KKBOXだ。PC(Mac)/スマートフォンの両方で使えるし、PC用には専用アプリあるし、その上で曲数も洋邦それなりに揃っている。自宅ではPCで音楽かけているのでそこは重要。レコチョクBestはスマホだけでPCがないのが非常に痛い。Music UnlimitedはPCではブラウザでの再生になるのだけどこれが超使いづらい。まずPC再起動する度にログアウトしてて使う度にパスワードを入れ直さなくちゃいけないのが激しくだるい。

KKBOXはプレイリストの同期をバックグラウンドで自動的にやってくれれば言うこと無しなんだけど、なんで手動でやらなくてはいけないんだろう。因みに各アーティストの「人気曲ランキング」が見られてこれをそのまま再生したリプレイリストにしたりすることが出来るのがポイント高い(人気曲ランキングはレコチョクにもあるけど、プレイリスト化などはできない。その代わりにダイジェスト再生みたいな機能がある)。

因みにソーシャル連携は殆ど使っていない。ユーザーが少なすぎてシェアしても意味がないからだ。試しに次のツイートのリンクを踏んでみてほしい。

レコチョクBestのアプリを持ってないと曲を聴けないはおろか、楽曲情報も見られずにApp Storeに飛ばすこともしてくれない。意味がない。KKBOXとMusic Unlimitedのリンクは飛んだ先でPCは曲ちょっと聴けるのにスマホだと聴けない。あとMusic UnlimitedからiPhone本体の機能を経由してツイートしようとするときにきゃりーぱみゅぱみゅの楽曲がエラーで文字数はみ出したりとかこの辺は詰め切れてないなあと思う。試聴位はさせてあげなよ、と。

あと重要なことが一つ。意外にこのサービス、パケット通信量が多い。長々といろいろな曲を聴いているとすぐに数百MB単位の通信になってしまうため、常にいろいろな曲を聴くタイプの使い方では月7GBのLTE通信制限に引っかかってしまう可能性が高い。なのでキャッシュ機能を活用して家のWi-Fi環境であらかじめ楽曲を仕込むという手順になる。なんかスマートではないなあという気がする。因みにMusic Unlimitedはキャッシュになるとビットレートが大きく下がる。納得いかん…

●総評とSpotify上陸後について

ざっくりまとめる。

最後のレコメンド機能について。Music Unlimitedは聴いた履歴からオススメ出してくれるんだけど、ありきたりでなんか面白くない。個人的にはKKBOXの音楽ニュース+関連アルバムというのは面白いなと思った(量が少ないけど)。ちなみにKKOBXはアプリを起動すると最初に検索画面が表示される辺り、「聴いたことない音楽を聴くためのサービス」であることを結構意識してるのかな、と思った。既に持っている楽曲を再生する普通の音楽プレイヤーと違って、選択肢がたくさんあるのでそこから自分に合ったものを提示してくれる仕組みは大事だな、と思った。海外勢はその辺が強いという話は聞くので、これから工夫が必要になりそう。

実際今後どれかのサービスを使うかと聞かれたら、KKBOXが一番濃厚だけど980円はちと高いなあと思う。現状のSpotifyは広告入りでオフライン使用不可のプランを通常プランとして無料提供していてもっと使いたいとなると有料でね、といういわゆるフリーミアムモデル。実はKKBOXも日本国外ではフリーミアムプランを用意しているのだけど現状はお金を払わない登録会員のできることはたいしてない。この辺は著作権者の抵抗以外にも会計制度(というか四半期ごとの開示やそれを踏まえて事業計画を練ること)の影響で日本でそういったサービスを提供しにくいんじゃないかと推測している。基本的にフリーミアムは設計と収支計画が練りにくく、上場企業がやるのには向いてないような気がしてる。とはいえSpotifyが上陸することで、対抗策としてその辺のプランを用意する必要性という物は出てくるだろう。

新しい音楽との出会いがSpotifyで実現されるか、というと正直よくわからない。音楽を聴く機会が増える人はそれなりにいるだろうけど、YouTubeで充分という人がスイッチするのが大半でそこからお金を落としてくれるかは不透明。とりあえず最初はiTunesよりカタログ少ない、という事態が予測されるけど、注目されてるからそれなりに使われるんだろうなあと。国内勢の方が最初は曲多いんだろうけど、いかんせん目立ってないのが痛いね。しかし、タダなのは魅力的だからまずはSpotifyに流れていっちゃうんだろうなー。国内勢もそれなりに曲数を揃えてきたのだからそのアドバンテージを活かしてほしいところ。