たにみやんアーカイブ(新館)

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亀田音楽専門学校SEASON2のケーススタディをしてみよう〜#05「恋するコード学〜純情編〜」

毎週恒例アップの亀田音楽専門学校ケーススタディ第5回です。前回あーだこーだ言ったけど何とか間に合いました。そういえば去年のこの時期もナビスコカップ決勝の会場で記事を書いてた記憶。11月最初の3連休っていつも忙しいんですよね…

過去の記事はこちら。第1回 第2回 第3回 第4回 第1部の最終回

さて、第5回はスキマスイッチ先生を迎えて「恋するコード学〜純情編〜」。そういえばSEASON1・2を通じてコンビおよびグループの講師は初めてですね。例により今回も前半で講義のポイントを説明して後半部分でケーススタディやりますよ。昨年のものでは楽譜を読む系の話では総じて苦戦してる気がしますが今回はいかに。

●講義の内容

純情コード進行とは

まず、最初に「C→G/B→Am→Em/G→F→C/E→Dm→G」というコード進行が示される。 そのコード進行の代表例としてAKB48恋するフォーチュンクッキー」が流れる。校長と大橋先生曰く、この曲は純情なコードだという。

(このページを見る人は知ってる人が多いかもだけど一応念のため、)コードとは、メロディーを伴奏する和音のことで、さらにいうとその和音を記号化したもの。一番下の音をルート音と呼び、その音を基準に記号化することでわかりやすくしているのだ。コードがわかれば、楽譜が読めなくても伴奏は出来てしまう、というわけ(編注:例えばMacや最近のiPadなどに標準で付いているGarageBandというソフトはコードを鳴らす専用のモードがあったりする)。そして、純情か純情じゃないかのような雰囲気を作るのはコードの流れ、つまりコード進行というわけ。

というわけで、純情コードを弾きながらいろいろな曲を歌ってみる、という実験をすることに。純情コード進行を弾きながらKAN 「愛は勝つ山下達郎「クリスマス・イヴ」森山直太朗さくら(独唱)」の3曲をかわるがわる歌ってみているが、違和感なし。歌うと純情になる、コード進行が綺麗といった特徴があるとのこと。

純情コード進行が使われている名曲

AKB48恋するフォーチュンクッキー松任谷由実「守ってあげたい」光GENJI「勇気100%」LINDBERG「今すぐKiss Me」の4曲が例として挙げられる。ところで、純情コードにはあるシカケがあるという。「クリスマス・イヴ」を例に説明。この曲のコードを楽譜に落とすと、ルート音が一小節に一音ずつ下がっていっている。下から2音目も同様になっている。この綺麗な進行が日本人にウケているのではないかとのこと。こういったコード進行のことを順次進行と呼ぶ。この進行の原点は、パッヘルベルのz「カノン」。(この曲ではルート音は綺麗に下がっていないので、純情コードはカノン進行の改良版といえる)カノンは動きがはっきりしている一方、純情進行はやさしさ・開放的・前向き・流れが綺麗というような感じが出る。試しに、おなじみの亀田専門学校校歌に純情コード進行をつけて演奏してみると一歩先に出るような感じになるという効果が見られた。

スキマスイッチ先生が選ぶ純情コード進行が使われている名曲

  • スピッツ「チェリー」 コードの勉強をしていたときに初めて出会って感銘を受けた
  • 大事MANブラザーズバンド「それが大事」 途中で上がったり下がったりに変わる。でも、半分(4小節)までやればもう勝ったも同然(効果が持続する)
  • Mr.Children「Any」 ゆったりでも早くても純情コード進行は効果あり。

ここでテンポという話が出てきたのでそこを少し深掘り。宇多田ヒカル「First Love」大塚愛さくらんぼ」の2曲は、同じ純情コード進行だけどテンポが違う(編注:「First Love」は88なのに対して、「さくらんぼ」は168)。テンポの違いで色々な感情を表現できるのも、純情コード進行の特徴である。実際に弾いてみると、純情さは残るが違いが際立つ。純情コードは奇抜なメロディを乗せても馴染んで届きやすいメロディーになる。因みに、純情コードは使用されてる例が凄く多いためスキマスイッチは敢えて使わないようにしているとのこと。。

まとめ

スキマスイッチ先生曰く「こうしてみてみると音楽ってよくできてるなと思うし、みんなに親しまれているコードには理由がある。」とのこと。

校長からは、「日本人がカノン進行という西洋由来のコード進行をJ-POP独自の方法で磨き上げたもの。ラブソングから応援かまで幅白い表現力を持つこのコード進行は、永遠に使われ続けるでしょう」ということで締め。

●補足

既に番組の中で言及されてたけど、この「純情コード進行」は、いわゆる「カノン進行」の変形版とも言えるものです。そして、亜種も含めた広義の「カノン進行」はJ-POPにものすごくあふれてますよ、ということを以前から主張しているのがお笑い芸人のマキタスポーツ。それ以外にもJ-POPの傾向について解き明かしている「全てのJ-POPはパクリである」は煽りっぽいタイトルながら本質に迫っている面白い本です。

ケーススタディ

今回のケーススタディは、楽器.meというサイトのコード表記で一応確認しております。僕音感ないからね。とはいえ、意識して聴くとルート音が下がっていく感じはわかりました。てなわけで行ってみよう!

星野源「ギャグ」

www.youtube.com

この曲はAメロ最初の「紙を重ねて 指を重ねて」の所が純情コード進行。少し細かいけど、結構わかりやすい感じがすると思う。映像見ればわかる通りアニメ映画「聖☆おにいさん」の主題歌で、イエスとブッダの素朴な感じを表している曲、と言えるんじゃないかな。これから上げる2曲と比べるとテンポが速いので、雰囲気はちょっと違った感じになっているかと。

乃木坂46「何度目の青空か?」


乃木坂46 何度目の青空か?

この曲はAメロとサビの所が純情コード進行のようにルート音が綺麗に下がるようになっている。もう曲名も曲の中身もMVも全部純情の塊じゃないですか!!生田さん良いですよね〜。

豊崎愛生「CHEEKY」

https://www.youtube.com/watch?v=h8Vlp7YKwM4www.youtube.com

これは純情コード進行というよりもカノン進行の変形なのかな。Aメロもサビも入りの部分でD→C→B→Aと下がっている。因みに提供者は安藤裕子です。「けいおん!」でのイメージとは違う柔らかなイメージの彼女のソロ楽曲に上手く合わせた物になってる。それを規定しているのが、コード進行、と言うわけですね。

なんだかんだで探してみれば意外にわかりやすい感じになりました。次回は引き続きスキマスイッチ先生と共に「恋するコード学〜小悪魔編〜」。純情の逆で小悪魔、ということか……