たにみやんアーカイブ(新館)

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亀田音楽専門学校SEASON2のケーススタディをしてみよう〜#11「トドメのメロディー学」

毎週恒例アップの亀田音楽専門学校ケーススタディ第11回です。いよいよあと2回…のはずだけど来週の放送には最終回の表記が無いですね。もしかして年をまたぐのか…?

過去の記事はこちら。第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第1部の最終回

さて、第11回はクレイジーケンバンドより横山剣先生を迎えての「トドメのメロディー学」。トドメとはいったい…!?

●講義の内容

トドメとは、メロディーの結びの部分。特に、その最後の2音がどうなっているかがポイント。ということで、まずは尾崎紀世彦「また逢う日まで」、松田聖子赤いスイートピー」、長渕剛「乾杯」が流れる。これらの3曲は、サビの最後の2音でちょっと上がって下がる。曲の終わりはキーの音、中心の音。その前の音が最後の音より1個大きい。メロディーはキーの音に着地したがるが、敢えてその1音上にすることで9thの不安定さがでる。9thはルート音から数えて9音目。ルート音と一緒に弾くと不安定に聞こえるので、不安定から安定に着地することで余裕ある達成感を感じさせることが出来る。

逆に下から上に上がる形でトドメを刺すパターンもある。KAN「愛は勝つ」、TOKIO「AMBITIOUS JAPAN!」、いきものがかり「ありがとう」が例として流れるが、これらの曲は最後2音が下から上に上がる形になっている。この場合、最後から2番目の音はルート音から数えると7音目。ルート音と一緒にならすとメジャー7thになる。メジャー7thコードも不安定だが、上からトドメとちがって爽やかさ、若さを感じさせるメロディーとなる。

別の例として、狩人「あずさ2号坂本九上を向いて歩こう」は同じ高さでトドメ。安定した音同士の繋がりでゴールインするので安定感がある。

ここで実験として、和田アキ子あの鐘を鳴らすのはあなた」のトドメを変えてみる(元メロディーは上からトドメ)。やはり上からトドメと下からトドメで全く印象が変わるが、同じ音でのトドメだと落ち着きがなく変な感じになった。実は、前のメロディーと合っているかどうかによりトドメにも向き不向きが出てくるのだ。手前のメロディーが着地の伏線になる。つまり、トドメに至るストーリーがあるわけだ。

横山剣が選ぶトドメが魅力的な曲

  • 石原裕次郎「ふたりの世界」 ABCDメロと歌のメロディーが変わり続ける中で最後に一気に飛んでエクスタシー!となるトドメ。一度着地したかなと思わせて飛ぶ、ダブルトドメ。
  • ザ・スパイダース「あの時君は若かった」 トドメが空に飛んでいくような終わり方をしている。そこからジャンジャンとギターをかき鳴らしてあっさり終わるのが良い。
  • 松崎しげる「銀河特急」 自分のキーが低いので一気に上がるようにする歌声にあこがれる。

応用編

あの鐘を鳴らすのはあなた」の最後のサビには隠された仕掛けがある。それまでのサビと違って、どことなくゴージャスに聞こえるのだ。両方とも上から着地。ただし、伴奏のコードが切り替わるタイミングがちがう。これまでのサビは「あなた」の「な」の時点でCのコードになるが、最後のサビでは「な」と一緒にコードもCになる。そのタイミング調整のためにブレイク(SEASON1第7回参照)が入るのだが、これは伴奏・メロディみんなで大団円するための準備、ジャンプ台。因みにここのブレイクで息を吸って最後のサビの最後ではロングトーンで歌えるようになっている。

まとめ

メロディーの着地点を変えるだけで音楽に様々な表情が生まれる。歌って気持ちのいい、聴いてて心地いいいろんな形のメロディーをさがしつづけてきたJ-POPの、終着点探しの旅にこれからも期待。

●補足、コメント

メロディーの最後がルート音になるというのは聴いたことある話だけど、どう締めるかだけで凄く変わるんだなあということは恐れ入りました。因みにこの後ケーススタディやるわけですが、圧倒的に上からトドメが多かったですね。

ケーススタディ

上からトドメの曲:Negicco「光のシュプール

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上からトドメの曲はものすごく数が多いので、完全に好みで。新潟出身ローカルアイドルNegiccoの最新シングル。今年最高の冬ソングだと思ってるこの曲、とにかく最後のサビが素敵なんだけど終わり方もちょっと余韻を残したような感じになる。それはまさにこの上からトドメの効果なんですね。因みにアレンジをORIGINAL LOVE田島貴男さんがやっているんですよ。

下からトドメの曲:東京女子流「おんなじキモチ」

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avexの5人組ガールズダンスユニット、東京女子流の2ndシングル。ライブなどでも高頻度で披露される彼女たちの代表曲の一つなんだけど、「10年後でも同じ歌を歌えるように」というコンセプトから非常に大人っぽい雰囲気の曲が多い彼女たちの曲では逆に異色の若さあふれる曲になっている。その若さを強調するかのようなサビ最後の下からトドメ。同じメロディーを繰り返すサビで、最後だけが上からトドメの形になっていることでその効果を強調する効果があるわけですね。

てかこのMV4年半前か………みんな若いというか幼い……

 

そんなわけで同じアイドル楽曲でもしっとりした感じの前者と若々しい後者ではサビの最後のところで全然印象ちがうよね?という話でした。同じ音と応用編は時間の都合により省略でお願いします。音感無いのホント辛い……

 

さて、次回は引き続き横山剣先生と「サビサビ大作戦」。「サビ」という概念について考える1回、だそうな。確かに日本独特の概念という話はよく聞くので興味深い感じ。