たにみやんアーカイブ(新館)

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亀田音楽専門学校SEASON2のケーススタディをしてみよう〜#12「サビサビ大作戦」

年間ベストの合間に毎週恒例アップの亀田音楽専門学校ケーススタディ第12回です。番組の最後で言われてたけどやはり今回が最終回なんですね。というわけでこちらのコーナーも今回で一旦区切り。

過去の記事はこちら。第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回第11回  第1部の最終回

さて、第12回はクレイジーケンバンドより横山剣先生を迎えての「サビサビ大作戦」。

●講義の内容

サビとは何か。校長の説明によれば、サビとは「曲の一番の聴かせどころ」だ。J-POPのサビが兼ね備える要素を知りサビの作り方を学びましょう、というのが今回の趣旨。その「サビが備える要素」とは、「高い音」、「長く伸びる音」、「リフレイン」の3つだ。

高い音

例として流れるのはクリスタルキング「大都会」、レミオロメン「粉雪」の2曲。 高い音は強く届き、周りの音に埋もれないので伝えたいことを伝えるのに向いている。「粉雪」についてもう少し詳しく見てみると、Aメロとサビは旋律が同じだけどサビのメロディーはオクターブが1つ上になっている。歌い手としては高い音を出すときに声を張るので伝えたいことを伝えられるというメリットがある。

長い音

例としてはMr.Children「es」、美空ひばり川の流れのように」が流れる。「川の流れのように」は長いだけでなく、音も高い。サビの特徴を2つも備えている曲。長く伸びる音で強い思いを伝えることができるのだ。

リフレイン

リフレインとはつまり同じフレーズを繰り返すこと。例として流れるのは円広志夢想歌」、THE BLUE HEARTSリンダリンダ」、DREAMS COME TRUE「何度でも」。呪文のようなインパクトや、刷り込み効果がある。

さて、クレイジーケンバンドの「タイガー&ドラゴン」は今まで挙げてきた全ての要素が詰まっている曲。 冒頭の「おれの、おれの」という部分は音が高く、リフレインになっている。そして「はなしをきけ〜」の部分はロングトーン。因みに、「俺の、俺の」というリフレインは当初はそのようになってなく、レコーディング中にエンジニアが「俺の」と歌う部分が何か気になったのか確認のためループしているのを聞いて思いついた、偶然の産物であるとのこと。

横山剣の選ぶサビが印象的な名曲

  • 由紀さおり「生きがい」 美メロの極地。声がシルキー。
  • 矢吹健「あなたのブルース」 情念が伝わる。

曲の構造の中でのサビ

この番組で何度も示してきたJ-POPの基本構造は、「Aメロ→Bメロ→サビ」というものである。しかし元々は「Aメロ→Aメロ→サビ→Aメロ」の方が多かったのだ。例としていしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」、山下達郎「クリスマス・イヴ」の2曲が流れる。この2曲はAメロもサビと同様に印象的なメロディである(註:むしろサビより有名だろう)。しかし、サビがサビの3要素を備えているのに対し、AメロはあくまでもAメロで、伴奏や声は盛り上がっていない。実は「タイガー&ドラゴン」もこの作り。

まとめ

サビは感動を生む場所、感情が高まる曲の一番大事な場所。これからも素晴らしいサビが若い世代から生まれてくることを願ってます。

そして今回でSEASON2もおしまい。音楽は素晴らしい、我々日本人は長い時間をかけて音楽に様々な魔法をかけてきた。しかし、まだまだ魔法はいっぱいあるからこれからも教えていきたいです。

●補足・コメント

最後のお言葉は継ぎシーズンあるよということなんでしょうか。坂本龍一のスコラみたいに年間の決まった時期に放送していくシリーズみたいな。

サビという概念は日本独特のものですよ、みたいな話がSEASON1の第9回「ダメ押しのメロディー学(大サビの話)」で述べられてたね。そう考えるとAメロとサビだけの曲はヴァースとコーラスから成り立つ洋楽と構造が近いんじゃないか、という気もしたりする。

ケーススタディ

今シーズンのケーススタディでは2010年代のものに絞ってやってきたので、今回はさらに踏み込んで今年の曲からサビの印象的な曲を見てみましょう。

高音のサビ:サカナクション「さよならはエモーション」

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サカナクションの曲はこういうのの格好の素材だよねってくらいにほとんどの曲がAメロの音が低くサビの音が高い。そんな中でこれを選んだのは単純に自分がこれ好きだから。というのもあるけどこの曲が取ってる音楽的なアプローチが面白いからです。その辺は過去の記事で書いてるので併せてご覧ください。

ロングトーンのサビ:きのこ帝国「東京」

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前回の記事「2014年マイベストソングトップ10」にて1位にした曲。初っ端の「日々ー」のところから既にロングトーン。しかもこの高BPM曲全盛の世の中で際立ってテンポが遅いので、その効果がより強く出ている。本当に良い曲だけど、その良さというものがどのようにして形作られているかというのがこうしてわかるのは面白いよね。

リフレインのサビ:きゃりーぱみゅぱみゅきらきらキラー

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きらきらキラー ラッキーラッキーラッキー」とひっくり返したリフレインまでしてるのが面白い。海外に出てってる日本のアイドルは結構この手法を使ってるよね。Perfume「Cling Cling」やBABYMETAL「ギミチョコ!」なんかもサビで同じことを繰り返してるタイプの楽曲です。

というわけで亀田音楽専門学校SEASON2のケーススタディも今回で終了。なんだかんだでJ-POPで使われている手法は今もきちんと引き継がれているということや、今のJ-POPもいい曲がたくさんあることがわかって頂ければ幸い。次のシーズンがあったときにやるかはわかりませんが、ご覧頂いた皆様ありがとうございました。

あ、それから今年のマイベスト的な記事を書いてるのでそちらもぜひご覧くださいね〜!