失敗からこそ学ぶことは多い:書評「ビジョナリー・カンパニー3 衰退の5段階」
もう出てから半年経つし、買ってから相当放置していたなけど昨日どーっと読み通した。このシリーズはどれもいいんだけど、今回も期待を裏切らなかった。じゃあもっと早く読めよっていう声が聞こえてきそうだけど。
第1作目は偉大な企業の条件というか共通する特徴を描いて、第2作目はそういった偉大な企業になるプロセスの特徴を描き、この第3作目はそういった企業が輝きを失ってしまうのは何故なのかということにフォーカスを当てている。
最近特に思うことなんだけど、成功事例ってやっぱり美しくなっちゃってるような所があって、それだけを参考にするのはどうなんだろう。むしろ失敗から学ぶこともたくさんあるしかないんじゃないかと。意外とそういう切り口の文献って少ないなあと思う。
この本では衰退の五段階という概念を提示しているが、これは成功こそが産み出す副産物みたいな所があって、ちょっとイノベーションのジレンマと近いんじゃないかとも思う。
- 成功から生まれる傲慢
- 規律なき拡大路線
- リスクと問題の否認
- 一発逆転策の追及
- 屈服と凡庸な企業への転落か消滅
うまくいったからこそ、緩みが出てくる。リスクを直視できなくなる。いい話しか出てこなくなる。成功することしか見なくなる。失敗から学べない。
ここに挙げられるくらい大きい企業じゃなくても、この本から学ぶところは大きいと思う。うまくいかなった企業なんて殆どない(そういう所は潰れてるはずだから)。成功体験があるからこそ、そしてそこからさらに成功していくためには、失敗からも学ぶ勇気を持たなくちゃいけないんだと思う。決して後ろ向きではなく、前向きな気持ちで。
そういえば第1作目において日本企業から唯一選ばれたソニー。ソニーもずいぶん残念なことになっているんだけど、今回は選定されなかった。入っても良かったと思うんだけどなあ。わりと綺麗に5段階をたどっているので。
今までの2冊と共に、読まれるべき本。そして、3冊の中で最も大事な本になるのではないかと思う。