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携帯3社の新製品発表会に見る「世界観」

Mobile

昨日今日で携帯電話大手3キャリアからの新製品発表があった。

au softbank docomo

個別の機種についてのコメントとかすることはせずに、率直に感じたことを言うと、今回の新製品発表会からは「スペック競争の終焉」と「脱ガラケーへの試み」を強く感じた。まあ後者は全てのキャリアについて言えることではなく、個別に色の違いとかもあるのだけれど。その辺含めて、エセ業界人(笑)としての所感など述べようかと思う次第。

まず、今回の発表会で久しぶりにauが復活したな、と言う印象を受けた方も結構多いのではないか(そもそも3社比較して見てる人間なんて少数派とかそういうツッコミは甘んじて受けるけど)。持っている方には申し訳ないけどここ2年くらい、auの製品はドコモやSBMの半年前やら1年前のモデル相当だったりで、完全に「周回遅れ」なスペックとなっており、発表会毎に2ちゃんねるにはお通夜スレッドが立つというのが恒例行事だったわけだが、今回に関して言えば前の世代から最も飛躍を遂げたのは間違いなくauである。

ただし、それはドコモとソフトバンクが今回スペック上での大きな進化をしなかったからであり、決してauが頭ひとつ抜けたわけではなく、単に追いついただけなのではないだろうか。ITジャーナリストの松村太郎氏が実況したソフトバンクの孫社長のコメントは象徴的である。

「ハードで差別化しにくくなった。シャープは3社に同じものを出している。」

確かにそうなのだ。今回のシャープの旗艦機種は、全キャリアで共通のスペックなのだ。1210万画素のCCD、3.4インチのWVGA液晶、1.4インチのサブ液晶。サイズも殆ど同じである(113×52で、厚みだけ微妙に違う)。docomo向けであるSH-07BでWifiが無いくらいで、他に大きな違いはない。

これはどういう事なのか。おそらく、「スペックが行き着くところまで行き着いた」ということなのではないだろうか。今の大きさではこれ以上ディスプレイを大きくすることも出来ないし、カメラの画素数もそろそろ行き着くところまで来ている。光学ズームはサイズの問題があるからそれに特化した機種という断りでもつけない限り搭載できない。そういった制約の壁にぶつかったのがもろに現れたのが今回の新機種ラインナップなのではないか。

そうなってくると、「どのキャリアでも殆ど同じラインナップ」となり、そこでは競争は起こらなくなってくる。そうなってくると何を持って勝負するか、という話になってくる。

先に結論から言ってしまう。ソフトバンクは「サービスにアクセスする端末」、auは「従来型のエコシステムの追究」、ドコモは「フルラインでどちらもカバーする」という形になっている。その中で重要なキーワードとなってくるのが「スマートフォン」である。

iPhoneのヒットを例に出すまでもなく、スマートフォンの勢いは日に日に高まっている。docomoXperiaが発売後20日で10万台売れたことで、iPhoneだけではなく、全体としてスマートフォンのニーズが高まっていることが改めて認識された。国内メーカーもスマートフォン端末を出し、最大の移動障壁と言われていたキャリアメールへの対応もドコモとauが相次いで打ち出したことで、これからスマートフォンはさらに広がっていくだろう。間違いない。

しかし、スマートフォンには、携帯キャリアにとっては毒まんじゅうになりかねない要素を持つ。それは「携帯独自のコンテンツに非対応」だということである。これは今まで携帯電話キャリアがひたすら作り続けてきた収入源の崩壊に繋がる、非常に重要な問題である。それ故、携帯電話キャリアスマートフォンに及び腰だった。しかしスマートフォンユーザーはヘビーユーザーが多いため取りに行きたい。このジレンマへの回答が、今回の新製品発表会で如実に見えた。

まずはソフトバンク孫社長ははっきりとこう言っている。

「一般ケータイはスマートフォン化していく」

「ソフトバンクはモバイルサービスを売る会社だ」

完全にこの流れに乗る事を表明した。その象徴的なものが、全機種へのtwitterクライアントの搭載。自前のクローズドなサービスではなく、世界で展開されているtwitterを活用していくことを表明。孫社長twitterへの系統ぶりが反映されているが、自前でサービスを構築する、今までの「ガラケーモデル」との決別宣言とも言える。ただし、ソフトバンク自体はコンテンツを自前で作る体力がないため、こういった戦略を「取らざるをえない」側面もある。

それに対し、「スマートフォンのニーズは少ない」と言わんばかりの勢いなのがauである。あくまでも「普通のケータイ」を打ち出し、今までの戦略を踏襲していくことを表明している。ISシリーズの発表直前にも言明していたが、スマートフォンに関しては現段階では「2台目」としてのニーズしか想定していないようである。日本の携帯電話はガラパゴスケータイ、略して「ガラケー」とよく言われるが、むしろガラパゴスなのはユーザーであるとも言えるので(これについてはいずれ別エントリで書きたい)、現実的かつ堅実な戦略とも言える。

そしてドコモ。今回は一挙に3機種を発表した上に、Xperiaのアップデート、Samsung Galaxy Sをベースにした機種を秋に発売(おそらくXperiaのように別枠での発表になると思われる)、とスマートフォンへの対応を打ち出す。さらには、iPad争奪戦への壮絶なリベンジにも見えるモバイルルーターの提供開始、データ通信料金プランの大幅改訂、などととにかくスマートフォンユーザー(及び通信量の多いユーザー)の取り込みに積極的な様子が見て取れる。特にモバイルルーターはドコモの最大の武器である通信インフラを最大限に活用したアイテムとなるのは間違いないだろう。従来のコンテンツモデルを維持しながらスマートフォンの市場も広げていく。まさに横綱相撲。最も体力のあるキャリアだからこそ出来る芸当。

来月には次世代iPhoneが発表され、夏商戦の駒が全て出揃う。その場ではおそらくドコモとソフトバンクによる激しいヘビーユーザー争奪戦が起こるだろう。競争の軸は端末からサービスに写るが、その上でも依然として重要なのは「ユーザーに使いたいと思わせる」キャリアであり続けることである。ガラパゴスと揶揄された日本の携帯電話はどこに向かっていくのだろうか。今回の新製品発表会は、各社の提示する世界の違いをまざまざと見せつけた。変わろうとするソフトバンク、変わることないau、どのようにも攻めようとする したたかなドコモ。全く持って3者3様。個人的にはソフトバンクが提示する世界に分があるとは思うが、日本の消費者がそこについて行けるかどうかは全くの未知数 である。