これからのサカナクションの話をしよう〜Zepp ALIVE 2012〜
というわけで行ってきたよ、サカナクションの今回のツアー。ツアー前プレライブ(むしろ公開リハーサル?)という位置付けのCITTA' ALIVEとZepp ALIVE最終日のZepp Tokyo。そこで感じたり思ったりしたことをつらつら書き連ねようかなあと。 まずはセットリスト。
- Klee
- アルクアラウンド
- セントレイ
- モノクロトウキョー
- フクロウ
- 壁
- ネプトゥーヌス
- インナーワールド
- サンプル
- 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
- ホーリーダンス
- 僕と花
- Instrument(僕と花Remix?)
- ネイティブダンサー
- アイデンティティ
- ルーキー
- エンドレス (Encore)
- Ame(B)
- ライトダンス
- 夜の踊り子(新曲、東京公演のみ)
- ナイトフィッシングイズグッド (Double Encore)
- 三日月サンセット(他会場ではドキュメント、白波トップウォーターなども)
まず思ったのが、「今までのライブのフォーマットを崩して、次のステップに向かおうとしている」ということ。まず超定番だったアルクアラウンド〜アイデンティティの流れを分離。去年春くらいにもVersionとかROCKS TOKYO辺りで試みていたけど結局元に戻っていたあのつながりを、今回は何度もやることになるツアーセットリストで解体。新しい流れを常に模索しようとしている、ということなんだろうなと。その代わりに出てきたアルクアラウンド〜ルーキーの流れは、BPMが近いところで唄が切り替わるっていうのはなかなか面白いアイディアだった。CITTA'の時は「ん?」って思ったけど、Zeppでは客も含めて慣れてきたからか、なかなかしっくりくる感じになってた。
それらと合わせて、今回はライブに当たって曲のアレンジを大きく替えてきたものもずいぶん多かった。インナーワールド〜サンプルというのは逆にこれまでの定番の流れを復活させたわけだけど(去年のZepp ALIVEではインナーワールドしかやらなかった)、インナーワールドのギターリフを(半音下げて)そのままサンプルにも持ち込むという、両曲を更にシンクロさせるようなアレンジ変更。意外性に満ちてて面白かった。そして個人的には最高にツボだったのが、ネイティブダンサーをラップトップスタイルでやったこと。元々その名の通りのダンサブルな曲なんだけど、ミニマルなアレンジが施されたことによりクラブ感が増してよりいっそう踊れる曲になってた。これ音源化してくれませんか!!!!僕と花のRemix音源と共に!!!
それからZepp Aliveでは過去の曲もやってくれるんだけど、一郎さんがアコギを持ってるタイムが素晴らしい。今回白眉だったのは壁。暗転状態でやったんだけど、その分めちゃめちゃ曲の良さが際立ってきたというか、曲の圧力が伝わってきた。CITTAよりもむしろZeppでこの曲が大化けしてた。1日でこの曲物凄く好きになったわ。
あと個人的に嬉しかったのはアンコール。久しぶりのAme(B)〜ライトダンス。今年のROCKS TOKYOでやったと聞いていたのでやってくれないかなあと思っていたらこのタイミング。というか、アンコールの手拍子に重なって少しずつ雨音が聞こえてあのかつての定番だったAmeサウンドがかかる様はなかなか斬新!そしてライトダンスはとても好きな曲なので、久々に聴けて良かったなあと。やっぱりこの2曲の流れは好きだな。
それから新曲ね。ネプトゥーヌスは本当に一度も聞いたことのない状態で行ったので、まずは曲の独特の浮遊感にもってかれたわけ。壁からのアコギしっとりタイムの流れだからすごくしみた。サカナクション流バラードっていう感じで、なかなか気に入ってる。そんでもって僕と花はワードみたいなしっとり系ながらライブで映えるだろうなあと思っていたらやっぱり!ワードや白波のようにしっとりしながら踊れるライトハウス的な感じとでもいうのかな。アルクアラウンドやアイデンティティよりもよっぽどこっちの方がサカナクションらしいと言えるんじゃないかな。そして完全なる新曲「夜の踊り子」。モード学園のCM曲として出てきたときから思ってたけど、めちゃめちゃ踊れるダンサブルな曲。それでいてクラブミュージック感とロック感を上手く調和させた一品に仕上がっているのがいい。ロック感(というか縦ノリ感)が少なめなのが個人的に好き。センスいいな、あの曲。8月29日発売。早く出て!!アイデンティティの時みたいに(夏フェス予習用で)先行配信してくれたら買いますよ!!!
というわけでセットリストには基本的には満足。というか物凄く端的に言うと、面白かった。とにかく意図を感じるセットリストだったなあというのが感想。定番の流れを逢えて外してるけど、その意図とかは十分分かるし理解できるものなので、僕は肯定的にとらえてる。 というかね、サカナクションはまた次のステップに進もうとしているし、ある程度その世界観というのは提示できてきてる(更にいうと出来るようになってきた)と思うんだよね。だからね、僕は敢えてお願いしたいのは、そろそろセントレイ・アルクアラウンド・アイデンティティに甘えるのはやめようよということ。別に嫌いな曲というわけではないんだけど、サカナクションらしさというのはむしろ僕と花や今回の新曲でこそ伝わるんじゃないかな、と。そりゃあこれらの曲をやれば盛り上がるよ。でもそこばっかに甘えることからもたらされるのは縦ノリと手拍子と腕挙げ腕振りのワンパターンなノリだけでしょ?それだけがサカナクションの求める世界ではないでしょ?(その反応自体を否定するわけじゃなくて、それしかないということに異を唱えているわけです)だからこそドラマタイアップにアイデンティティみたいなのをリクエストされながら僕と花を書き下ろしたわけでしょ(それは正しいと思う)。元々撒き餌的なシングル曲、という位置付けで作ったのがセントレイやアイデンティティなわけだから、十分撒いたと思うし、その先の「サカナクションの世界」にみんなを案内するためには、これらを全部やらなくちゃ行けない道理もないんじゃないの?と思う(別に全部やるなと言ってるわけではないよ)。僕は、サカナクションにはもっともっと面白いライブを期待してる(もちろん今日のライブはめちゃめちゃ良かったけど)。ロックキッズもクラブ住人もみんなサカナクションの深海にもってっちゃってほしい。サカナクションの世界をもっと追求して、それをオーディエンスに提示して欲しい。もっと音楽の楽しみ方を教えて欲しい。そうやって、リスナーを動かすことが出来る力を持っている希有なバンドだと僕は思っているからこそ、サカナクションにはもっと高みを目指して欲しい。それはできるはず。今回の新曲、新アレンジの曲を聴いて本当にそう思ったから。
それにしても次が楽しみ。今回のファイナルを終えて、本当にそう思った!!