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2014年ポピュラー音楽関連書籍マイベスト10

さて、12月になってアイドル楽曲大賞の投票もしたし、いよいよ年間ベストを発表するシーズンになってまいりました。今年は沢山ポピュラー音楽関連の本を読んだのでまずそこからベスト10を挙げてみたいと思います。今年初の試み。それにしてもタワレコオンラインで10%ポイント還元の時にクーポン使って買うと実質20%オフかやったー!とか言って買いすぎた気がするw年末に向けて、本の収納については真剣に考えなくてはいけなくなっております。

では10位から。見ての通りですが僕の趣味嗜好を反映してJ-POPものが多いです。簡単なコメントと、印象に残った部分なんかを引用して紹介していく感じで。

10位:伊藤涼「作詞力 ウケル・イケテル・カシカケル」

意外と出てこない職業作詞家の世界を書いた本。著者は元ジャニーズスタッフで、修二と彰・テゴマスなどのディレクターだった。そこから転じて今はリリックラボという作詞家のためのコミュニティを主宰しているので、作詞者側と採用者側の両方の視点から話が進んでいく。お金の話など色々とぶっちゃけているのが面白いが、その一方でコライト(共同制作)のような制作手法についても話しているし、作詞家としてコンペをつかみ取るための自己プロデュースみたいな物もテーマと取り上げている。なかなか見ない話が色々出てきて面白かった。まあとりあえずこれはハウツー本では無いことは確かだ。でも作詞してみたい人は読んでみるといいんじゃないかな。

作詞家はどうしたらその期待に応え、アーティストに未来を提案できるだろうか?そんなパワーが作詞家にあるんだろうか?(中略)じゃあ、そのパワーってどんなもんか?それって半年後、1年後、3年後を見通せる眼力を持ち、イノベーターであることだと思うんだよね。まだ使われていない表現、言葉、表記を見つけ出し、それを詞とシンクロさせて、“クル”物にする。ブームを作れるセンスを持つこと。手前味噌になっちゃうんだけど、「青春アミーゴ」のサビ頭の「SI」はもともと「Yes!」だった。でも、なんか退屈だったので「SI」に変えた。これは俺がアメリカに住んでいるときに、南米系の友達が多かったので自然と出てきたアイデア

9位:玉井健二「人を振り向かせるプロデュースの力 クリエイター集団アゲハスプリングスの社外秘マニュアル」

既にブログでも1度書きましたねAKB48YUKI関ジャニ∞でんぱ組.incファンキー加藤など多数ミュージシャンの楽曲製作に携わっている音楽製作集団agehaspringsの代表である玉井健二さんのプロデュースに対する物の見方・考え方をまとめた物。日本人はグルーヴという概念がないというビハインドがあるけれども、そこからグローバルで通じる一定の水準に持っていくことこそが「プロデュースワーク」であるとして、その具体的な内容を話していく感じ。そしてそのキーとなるのが「ブルース。カントリーの要素」=「ブイヨン」である。

グローバルスタンダードの“音楽”とは、英語の発音自体が持っているグルーヴやブルース・カントリーの法則に則ったボーカルやフレーズや構造で表現されていれば、何語で歌われていても“音楽”なのです。

8位:磯部涼「新しい音楽とことば」

12人のソングラーターに、「歌詞をどう産み出しているのか?」ということを問いかける、「翼広げすぎ」みたいな話とは一線を画するインタビュー集。インタビュー対象も「今」を捉えることにフォーカスしたかのような人選で、どの話も読んでて面白い。その中でも一番最後に配された湘南乃風の若旦那のインタビューがめちゃくちゃ面白い。「ルーツはさだまさし」「マイルドヤンキー向けの作品を作っている」など、びっくりするような発言が連発されると共に、彼のしたたかさというか賢さが垣間見られる内容になっている。一部がRealSoundで公開されてるので是非読んでみてね。

決して最近の歌詞がつまらなくなったわけではなく、社会のリアリティが変容するとともに、歌詞が持つリアリティも変容し、ついていけなくなった人がいるにすぎないのではないか。

7位:若杉実「渋谷系

タイトルがどストレートな「渋谷系」なんだけど、そこから連想されるフリッパーズ・ギターやピチカート・ファイブなどの具体的なミュージシャンについて深く掘り下げた本ではなく、当時の「音楽シーン」を切り取った本、というスタイルだろう。肩すかしを食らう人も多いだろう(僕も最初はその一人だった)が、そもそも渋谷系フリッパーズ・ギターのようなネオアコ直系の音楽ばかりだったというわけでもないわけで、Cymbalsの沖井礼二がテレビ番組出演時に説明したように、「渋谷を発信地として流行した音楽・ファッション・映画・文学などから発信したサブカルチャー現象」である。という前提に立った上で読むと、この本のおもしろさが見えてくる。NHKで放送された番組を書籍化した「ニッポン戦後サブカルチャー史」でも渋谷という街の発展について書いてある項目があるのだけど、そこと併せて読むと色々見えてくる部分があると思うのでお勧め。

渋谷系とはとりもなおさず日本盤アシッドジャズではないか、というのがぼくなりの持論だ。逆に言うとアシッドジャズはイギリスにおける渋谷系だった、と言いたいところだが、それはやっぱりちがうだろう。その両者を結ぶことばをひと言で表すなら、やはり“温故知新”となる。過去の音源を掘り起こして新たな知識を発見し、現代に蘇生させる。なにもそれは、渋谷系やアシッドジャズにかぎったことではないだろう。ただ、88年から音楽メディアがCDに代替し、それにともない旧譜、名盤、レア盤の類が一気に再発された流れは、東京・ロンドンを中心とした都市部の文化水準をいっきに向上させた。アシッドジャズも渋谷系もその時代が重複する。

6位:マキタスポーツ「すべてのJ-POPはパクリである」

J-POP形態模写芸でおなじみのマキタスポーツが、その芸の構成要素を公開していく、という内容。カノン進行や「翼広げすぎ」な歌詞など楽曲作りの類似点を挙げていき、最後には「J-POPはノベルティソングなんだ!というすごい結論に行き着く。このノベルティソングとは何かというと、要はアーティストの「人格÷規格」に付随する音楽である、ということ。人格とはそのアーティスト自身のキャラクター、そして規格とは音楽のスタイル。あくまでも規格がベースに合って、そこに各アーティストが独自の味付けをしているから、人格に従属したノベルティソングなんだというわけ。因みにこの本が佐村河内守・新垣隆のゴーストライター騒動のまっ最中に出版されたというのはなんたる偶然なんだろう、と感じた。

何度も繰り返しになりますが、日本におけるポピュラーミュージック(=ポップス)は「元ネタ」ありきであり、「全てがノベルティー・ソング」なのです。これは既にある音楽的企画や手法をどう解釈するかと言うことですから、アーティストは大前提として良きリスナーであり、批評家でなくてはならないと思っています。つまり、元ネタをどう解釈して自分の物にするのか、という解釈をなしにしてポピュラーミュージックという物は作れないのです。

5位:柳楽光隆etc.「Jazz The New Chapter」

21世紀以降になってから新たに出てきた「ジャズの新しい潮流」にフォーカスした本。具体的にはロバート・グラスパーを主軸に置いて、他のジャンル(ヒップホップ、ロックなど)なども参照して取り込みながら進化していくジャズの姿を紹介している。こういう取り組み自体は今までなかったものであり、コンピレーション盤も出るなどかなりのムーブメントに。個人的にもかなりインパクトがあった本で、この界隈の作品を結構聴くようになったのが自分の音楽嗜好にとって今年一番の変化だったかな。ディスクガイドも含めて内容の全部を読み込むのは大変だけど、まず最初の50ページくらいでも読んで見ることをお勧めしたい。ロバート・グラスパーの言葉を読むと、ジャズが今の音楽として身近に感じられるはずだ。

「かつてのマイルス・デイヴィスだって、その時代におけるベストをやり遂げただけのことさ。当時と比べて、今の時代は選べる音楽の数や種類も圧倒的に多いんだから、影響の受け方だって全然違うはずだよな。もしもマイルスの時代にYouTubeがあった、ジャズは全然違う物になっていただろう。そんな多くの音楽から選べる時代に生まれてきたのが俺たちの世代だ」「Black Radio」は全ての始まりなのだ。次の世代による新たなジャズの歴史はここからスタートする。

4位:磯部涼九龍ジョー「遊び疲れた朝に~10年代インディーを巡る対話」

2010年代に色々と独特な方向へ進化しだした日本の(特に東京の)インディーミュージックシーンについて二人のライターが対談する、という本。色々偏りがあるよなあとは思いつつも話されている内容が抜群に面白い。情報量が物凄く多い、という意味でも10年代インディ・ミュージックへの有効な批評になっている本。

磯部 下町もあれば山手もあるように、もともとはバラバラな場所だったわけで、東京を一つの歳と捉えるようになったのは近代だし、今だって実際のリアリティはちがうでしょう。そういう意味では、<東京の演奏>やceroの「正座を見出すように自分たちなりの東京の地図を描いていく」やり方の方が、現代的とも言えるし伝統的とも言えるんじゃないかな。 九龍 「幻想」であるからこそ、そこにはまだ多様性を受け入れる土壌があるってことだからね。その多様性とか寛容性を減じないよう、嘘くさくないやり方で社会と交渉していく術を身につけたいね。

3位:香月孝史「「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う」

アイドルの話はとかく荒れやすい。それはなぜかというと、「アイドル」というものに帯する共通認識が語る人によって全く違う上に、広く共有されている「アイドル」のイメージが既に存在していない物だからだ。「アイドルらしからぬ」という言葉はよく聞かれるものの、実際そこが参照している「アイドル」という概念を体現しているアイドルはもういないのではないか。そのすれ違いをなくすために現代に合ったアイドルの定義・コンセンサスを作ろう、という本。結論としては、アイドルが現場やSNSなどを通じてパーソナリティーを開示する一方でファンの側は承認欲求を投影する、そのコミュニケーションの往還こそがアイドルだと。すなわちアイドルは「場」なのだ、という話になる。ここに到るまでの説明が極めて丁寧なので、極めて納得感が高い(そういえば「あまちゃん」でも、特に潮騒のメモリーズのライブシーンはファンと一体となり盛り上がる物だった)。これからアイドルについて話をしようと思うのであれば、まずはこの本の議論を元にするべきでしょう、と感じた。

このジャンルに共通して求められる物を指摘するとすれば、主に第4章(註:「アイドルの虚と実を問い直す」という章)で述べてきたように、アイドル自身のパーソナリティの享受を中心に据えたコミュニケーションの往還ということになる。その往還のなかで、送り手、受け手それぞれが投影する欲求を承認し合う饗宴こそがアイドルという「場」の本体である。

因みに、著者の香月さんが今レジーさんのブログで今年を振り返る対談してるのでぜひご覧ください。

あと、ポピュラー音楽とは関係ないけど戦前からドルオタ的存在はいましたよ、という「幻の近代アイドル史」という本も超面白かった。もぐもぐさんのブログで紹介されてるのを読んで知ったんだけど、この紹介読むだけでもすごく面白いのでこちらも是非。

2位:細馬宏通「うたのしくみ」

これは衝撃的に面白かった。何というか今迄に読んだことのないような「歌」についての解説本。サンバ・ボサノヴァ・童謡「お正月」・ブルース・古典的ロックンロールからユーミンaikoモーニング娘。つんく♂)・Perfume中田ヤスタカ)などの歌の「しくみ」について丹念な構造分析を施していく。「そもそも歌と歌でないものの違いは何か」「ブルースは掛け合い」「“っ”は無音(だと言うことにボカロを使うと気付く)」など思わずうなる解釈が連発されて素晴らしく面白い。こんな分析見たことなかったです。そんな中でも膝を打ったのは「LOVEマシーン」のサンドイッチ効果。そこを引用するので是非おもしろさを感じてみてほしい。

つまり、「恋愛って→いつ火が点くのか」「いつ火が点くのか→DYNAMITE」。この二つを「いつ火が点くのか」を挟んで強引に食わせるわけです。「恋愛っていつ火が点くのかDYNAMITE」、はい、サンドウィッチいっちょあがり。具を抜き取ると「恋はDYNAMITE」これがサンドウィッチ効果。(中略)「日本の未来は→世界がうらやむ」って言われてもウソまるだしなわけでしょう。そんなまるだしを言い放っておいていきなり「世界がうらやむ→恋をしようじゃないか」と国家レベルから個人レベルに突入する。つまり国家の責任はお前が取れ、と「世界」をはさんで国家と個人を強引なサンドウィッチで食わせたろ、という強引な大詐術に聞こえるわけです、ここが。

1位:南田勝也「オルタナティブ・ロックの社会学

ここ20年くらいのロックミュージックに起きている位相の変化を丹念に追った一冊だけど、出版時期がものすごくタイムリーだった。というのも「ロックのスポーツ化」「フェスの盛り上がり重視傾向」みたいなものが、ミュージシャンも含めて激しく議論されたこの年にその背景をつかんだ本が出版されたから。このブログでもVIVA LA ROCKの時にこの本を元に今っぽいフェスのブッキングなんかについて色々分析した。この本では、1990年前後に起きたエフェクターなど機材面での進歩がギターソロ重視からギターリフ重視の音楽へ、「波」から「渦」の音楽に位相転換し、より体感的な物・よりスポーティーな物に変貌していったと説明している。今のフェスのノリが云々とか言う人は是非この本を。というか去年の円堂都司昭さんの「ソーシャル化する音楽」と並ぶ、日本における音楽受容の現状を的確に捉えた本だと言える。というわけでこの本が1位です。

ここまで説明してきたように、音圧を高めてノイジーなギターでリフを刻むオルタナティブ以降のロックは、身体を激震させることに特化したかのようなサウンドで、ライブ会場に音の渦を産み出し、聴衆を棒が的な踊りと汗まみれの興奮に誘っていいる。もちろんミュージシャン達は自分たちの楽曲が作品として聴かれることを放棄したわけではないし、とりわけジェネレーションXの感情を背負った初期のグランジオルタナティブの場合は、量過多に思想と哲学を背負いながら、一方で爆音をとどろかせていた。しかし時を経るにつて、また十分な体感音響の舞台がテクノロジーの進展によって整うにつれ、音そのものという素材を聴衆の身体という素材に直接的にぶつけるタイプのミュージシャンは増えていった。

なんだかんだで色々読みながら、読み終わったときにちゃんと感じたことや気付きを書くようにしたのでなかなか勉強になったなあという感想。これ以外にも色々読んだけど良かった物も悪かった物も有意義でした。悪かった物はそれはそれでどう良くなかったかを説明することが必要になるからね。さて、来年も楽しく本を読みたいけど、音楽以外の積み本も消化しないと!!!ってことで今月はしばらく他の本を読もうと思います。笑

というわけで今年の総まとめシリーズ、次回は楽曲ベスト10の予定ですよ〜。