たにみやんアーカイブ(新館)

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書評「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」

先週の金曜日に(日本時間では正確には土曜日だけど)、スティーブ・ジョブズがiPhone4の電波問題についてプレゼンをした。その内容の正当性については賛否両論分かれるところで機会があったら書くかもしれないし書かないかもしれないけど、とりあえずその時もスティーブ・ジョブズのプレゼンはいつもの調子の、見る者をエキサイトさせ、強烈に納得させるプレゼンだった。

http://www.apple.com/jp/apple-events/july-2010/

そんないいタイミングで、本書を手に取ったので早速一気に読んだ。

確かにプレゼンを学ぶのであれば、今世界で最も一番面白いプレゼンをする人から学ぶのが一番いい。オバマ大統領が当選したときには彼の演説集が売れたが、おそらく多くの人にとって演説よりプレゼンの方がする機会はありふれているだろう。僕はプレゼンらしいプレゼンをする機会が非常に多いので、大いに楽しみにしながら読んだ。

「ストーリーをアナログで作る」「3点ルールを活用(因みにこのルールに従って本書も3部構成で書かれている)」「twitterの様に短いヘッドラインを作る」など、一般的に応用が利くことが目白押し。何のことはない、ジョブズはとにかく徹底的にいいプレゼンとは何かを考え抜き、それを鍛錬し、実践してきたのだ。ただし人の何百倍も。その彼の努力の成果を研究し、自分のプレゼンに取り込み、成果を出せるのであれば1,600円という価格は超お買い得値段だ。

しかしながら、この本のいいところは、豊富な実例(ジョブズ以外の人間の例も含む)、それから彼のプレゼンをわかりやすくまとめた表形式の発言−プレゼン対比だ。最初に著者が書いてある通り、Youtube等に大量にある彼のプレゼンを見れば、この本の内容への理解はより深まる(これとか)。ただし、映像は見るのに時間がかかる。2回目に読むときにリファレンスとして映像を見るのならともかく(というか2度目は絶対に映像を見ながら読んだ方がいい)、最初に読むときに都度10分20分のプレゼンを見ながら本を読むと、集中力が途切れ、読んだ内容を忘れてしまう。なおかつ、KeynoteMacにおけるPowerPoint的位置付けのプレゼンテーションソフト)のプレゼンをベタベタ貼っていくとページが飛んでいくし、流れを追いにくい。なのでこの構成は非常に理解しやすい。

そして訳も非常にこなれている。小飼弾氏(@dankogai)のブログを読んで気付いたのだけど、「ウィキノミクス」の訳者なんだ。道理でわかりやすいわけだ。あの本も驚くほど読みやすかった(しかも内容が「Web2.0時代の経営戦略」的内容でありながらあくまでWebから見たこちら側にフォーカスすることを忘れないというスタイルですごく良かった。経営書としてはここ10年のトップ5に入れていいと思う)し、今回も非常によかった。訳者で本を選ぶっていうのも大いにアリかな(山形浩生氏も「その数学が戦略を決める」「戦争の経済学」など非常にいい言葉運びをする)。

プレゼンということだけでなく、何かを人に説明する機会がある人にとっては、非常に薦めたい本。この本は要約した方がいいだろうなと思っていたら解説の一番最後にそうせよって書いてあった。せっかくだからKeynoteを使って、ジョブズ流プレゼンっぽく作ってみようか。

One More Thing(ジョブズKeynoteで、最後にもう一つとして目玉級の物を紹介するときの決まり文句)として、2006年にスタンフォード大学で披露した素晴らしい伝説のスピーチの解説もあるのがニクいよね。