たにみやんアーカイブ(新館)

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育児インフラがヤバい件について整理してみた

Twitterで「少子化なのに保育園が足りないのは何故?」という声があったので「逆だろ、保育園が足りなくて少子化が進行しているんだろ」とか思って実際そう返したんだけど、実際統計資料とかあった方がいいよねとか色々やっている内に何か色々面白いことになったので、この機会だからまとめてみた。

ていうわけで、唐突に長期時系列の表を貼る。

長くて申し訳ない。 とりあえずここ40年くらい(といっても都合により)の動向。 ポイントを簡潔にまとめる。

  • 幼稚園の在籍者数は1980年辺りを境に減り始めて、この30年で70万人減少。
  • 一方保育園の在籍者は1980年頃から漸減した後少しずつ増え始めているが、1980-2005の25年間では20万人程度の増加。

1980年は女子差別撤廃条約が発効(日本も署名)した年(ただし、批准したのは5年後なので直接関連性があるかといわれるとやや微妙)。ただこの年を境に育児インフラが転換しているように見える。幼稚園と保育園の児童数はここからの20年で完全に逆転してしまった。

幼稚園は保育園に比べ在園時間帯が短いので専業主婦かパートタイムとかでない限り結構しんどい。そのため共働きの増加と共に保育園に移行するようになってきているかというと、意外なことにそうなっていないのが実情。

そこで、次にこんなデータを引っ張ってみた。保育園の定員と実際の在籍者数の推移。

これは面白いデータだなあって思った。共働き需要を見込んで1980年代にいったん保育園の定員って上がってる。確かにそれは正解だったんだけど、しかしどういうわけかその後保育園への入所者数は減った。それにつられて保育園の定員を下げたわけだけど、ここに来て急速に需要が高まっているため、正直追いついておらず、結果として今は定員オーバーになっちゃってるという話。統計データの都合上ここ最近のがない(継ぎ足す暇がないのでそのうち補訂します)けど、ここ最近も傾向は変わっていないだろう。この辺の原因とかを探ると結構面白そうだ。

ここ最近の保育園入所者の増加は山一証券の破綻による平成不況あたりに始まっていて、実は就職氷河期とも割と重なっていたりする。今の若い世代は給与水準が切り下がりつつあり、共働き前提でないと子供込みの家計を構築できない。それ故に保育園の入所者数が増加しているというのが現状。そして今、保育園の数が足りなくなってしまっているために、出産数の低下には歯止めがかからないだろう。

じゃあ保育園増やせばいいじゃんという話になるのだけど、そうはいかないのがしんどいところで、それは何故かを解く鍵として再度この表を見てみる。すると、定員オーバーしているのが私営だけという事実が浮かんでくる。ここから推定されるのは、以下の2点。

  • 公営は定員を遵守しなくてはいけない
  • 私営は定員を敢えて超えて取らざるをえない事情がある

保育園というのはとっても労働集約的な事業である。子供のケアをするのは今の所人の手によってしかできない。それ故にものすごく手がかかるし、それを知恵と工夫でどうにかできるという余地は割と少ない。IT化で間接業務を何とかできてもたかだかしれてる。さらに採算は厳しい。左のリンク以外にも保育園の経営破綻は後を絶たない。無理をしている私営の保育園は多いだろう。

子ども手当の一律支給よりも保育園にっていうのはまさにその通りなような気がする。育児インフラはもう限界。これ以上子供減ったらヤバいよね。知らないよ、ご老公方。

しかしまあ統計を眺めながら色々考えるのって面白いよねー(実はここが今日一番言いたいことだったりする)。