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「Jazz the New Chapter」を読んで日本のポップスについても少し思いを馳せた

まずはお知らせです。このブログでも頻繁に取り上げている「レジーのブログ」を執筆しており、会社員と音楽ライターの二足のわらじを履いているレジーさんが作成した「レジーのポータル」というサイトで、お勧めJ-POP曲のプレイリストを書かせていただきました。僕が掲載させてもらったのは「someone's playlist」という所謂ゲスト枠ですね。今後も不定期にプレイリストをアップしますが、初回を飾れて光栄です。レジーさん、どうもありがとうございます。

さて、今回僕は「J-POPのJはJazzのJ!?JazzyなJ-POP13」ということでジャズ風J-POPを13曲紹介しました。その話に絡んで、最近個人的にジャズブームが来そうになっているのでその話を。

きっかけは1冊の本。


Jazz The New Chapter~ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平 (シンコー・ミュージックMOOK)

コルトレーンの時代にヒップホップやYouTubeがあったら、ジャズは別物になっただろう。そんな時代に生まれたのが俺たちの世代だ」という口上、そしてこの本で書かれているのはジャズとじゃ髄外の音楽の交錯する様。著者の柳楽さんのツイートがRTで流れてきて、即刻買うことを決心した。

「非ジャズリスナーのためのジャズ本」なんて、僕みたいな奴(上記のプレイリストを作ったりする位ジャズのサウンドは好きだけど熱心なジャズリスナーとはほど遠い奴w)こそ読むべき本じゃないですか!しかしその時にはどこも売り切れで増刷を待つしかなかった…

というわけでオンライン書店で注文してから待つ間に当のロバート・グラスパーの曲を聴いてみることに。そう、サブタイトルにもあるようにこの本は、2012年に「Black Radio」という作品でジャズ界に大きな衝撃を与えたロバート・グラスパーを軸に、現代ジャズの新しい動きを切り取った本。なので数多あるジャズ本みたいにマイルスやコルトレーンをきちんとおさえて、みたいな感じではない(ただし幾分かはジャズの用語を知っていた方が読みやすいのは言わずもがな)。そこで聴いたのは「Black Radio」のフルサイズ試聴なんだけど、かなり驚きだった。具体的にはアルバム最終曲のこれを聴いていただくのがいい。

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ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」ですよ。決してMAN WITH THE MISSIONのではないですよ。それはさておき、コンセプトアルバムというわけでもないのにジャズのアルバムでこの曲を選ぶというのが、想像の斜め上だった。そして確かにジャズなんだけど、R&Bやヒップホップっぽさも同時に感じる。ここにグラスパーの特徴が凄く出ていて、彼はジャズもロックもヒップホップも分け隔てなく聴いてきて、それをアウトプットしているのだ。ビョークレディオヘッドを愛聴し、コモンをカバーする。それがロバート・グラスパー

てなわけで、この本で書かれているのは、「様々なほか音楽ジャンルと交わり進化しようとしているジャズの現在地点」というわけで、様々なミュージシャンが挙げられている。ロバート・グラスパーのバンドメンバーはもちろんのこと、オバマ大統領のノーベル平和賞受賞授賞式でコンサートをやって一気に有名になったエスペランサ・スポルディングクラムボンのミトさんも彼女のファンだ)なんかもその一人だ。

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彼等彼女達世代の特徴みたいな話も出ていて、「きょうびのジャズミュージシャンは大学出が多く、ある種「お前どこ中?」みたいな感じになっている」「教会でジャムセッションして腕を磨き、大学に入って作曲技術を学ぶ」という話が面白かった。

あと彼等について凄く好感を持ったのは「長いソロの否定」。実際に会社の先輩にジャズバーに連れて行ってもらったりとかして苦手だと感じたのはソロが長すぎてだれることだった(それゆえにジャズ風J-POPをよく聴くというのがある)。サウンドはすごく好きなんだけどその格式張った感じが好きになれない、というところもあったので、より自由な音楽として前に進めようという気持ちは僕は支持したい。

というわけで、この本を起点に色々辿っていける感じで面白い。取り急ぎグラスパーの「Black Radio」「Black Radio2」とエスペランサの「Radio Music Society」は注文済みなんだけど、これまた品薄により取り寄せ中で、この文章を書いているときにちょうど発送通知が来た。週末聴くのが楽しみ。

と、本の内容についてこれ以上はジャズの熱心なリスナーでない僕には語れることはないんだけど、この現代ジャズ界の動きって、J-POPが過去から貪欲に色々な音楽を吸収してきたのと共通するところはあるのかな?と思った。ことジャズとの接近の話をすると、歌謡曲はジャズがルーツになっているし(江利チエミが「カモンナ・マイ・ハウス」の日本語版を歌ってそれを土岐麻子がカバーしたり、とか)、東京スカパラダイスオーケストラはヨーロッパ最大のジャズフェスであるモントルー・ジャズ・フェスティバルに出演したりしている。それ以外にもたくさん挙げられるよね、ということをあのプレイリストに込めている節も少しある。

と思いを馳せながら読み進めていたら、筆者の中に吉田ヨウヘイgroupの吉田ヨウヘイさんの名前が!!僕が大好きなバンドOK?NO!!のriddamさんも最近参加していて、独特のリズム感とそれこそ様々な音楽のエッセンスを取り込んだ音楽は聴き心地良くて、そして僕好み。

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どうやら吉田ヨウヘイさんはジャズ・SSW・レアグルーヴ等を専門に扱うWebレコードショップ「メリトカリ」の店員さんなのだそうだ。そして吉田ヨウヘイgroupも包括される東京インディーズシーンでは最も人気のあるceroもまた、この流れの影響下にいる。昨年発売のシングル「Yellow Megus」の発売にあたって行われたオフィシャルサイトでのインタビューロバート・グラスパーからの影響を公言している。そしてフロントマン高城晶平はQuick Japanで行われたtofubeatsとの対談でより端的に語っている。

インタビュアー:ブラック・ミュージシャンに関しては、ディアンジェロ(90~00年代に活躍した伝説的な米国のネオ・ソウル・ミュージシャン)が参照点になってるとか?

高城:そもそもはディアンジェロから始まって、ロバート・グラスパーR&B系ピアニスト)とか色々……クリス・デイヴ(同じくR&B系ドラマー)って人のドラムとかも面白いと思って。僕らは「見えないポリリズム」って呼んでるんですけど。こういう人たちが使っている、異なるノリのものが一緒の流れに乗ってるっていう手法を、生でやってみたかったんです。tofuくんの曲にもそんな感じの曲がいくつかあるし、最近の日本のヒップホップ、ブダモンクとかのトラックからも感じてて。最近、00年以降のR&Bとかヒップホップの、ちょっとアブストラクトなノリみたいのがわかってきて、これを今の日本語の音楽でやれたらいいなって。

ロバート・グラスパーとクリス・デイヴをR&Bと記載しているのは「Black Radio」が2013年のグラミー賞で最優秀R&Bアルバムになったから(因みにこの年の最優秀ジャズアルバムはエスペランサ・スポルディングの「Radio Music Society」だ)なのでご愛敬として、上記の発言を踏まえながら「Yellow Megus」を、特にドラムに注目しながら聴くと、より面白い。

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そしてそのceroのダイレクトな受容の仕方にちくりと一刺ししているのはシャムキャッツ。彼等もまたthe sign magazineでのニューアルバムにまつわるディスク紹介で「Black Radio」を挙げつつ、こんなことを言っている。

大塚「俺は、結構普通なんですけど、ロバート・グラスパーの『ブラック・レディオ』。取りあえず、1枚目に推そうかなと思って。今の感じっていうか、流行りものすごい好きなんで、俺は意外に(笑)。あのカッチリしたフィーリングは正直、今のメインストリームだと思うし、あの感じをさらにマッシュアップして、取り入れたらいいだろうなって思って。でも、その取り入れ方として、ドラムのクリス・デイヴのフィーリングをドラムの人がやったらつまらないだろうな、と思って。まあ、別にceroを批判するわけじゃないんですけど」  ●でも、それ、結構ジャストな分析だな(笑)。 

菅原「でも、『ceroにどう勝つか?』っていうのはすごい考えるよね」  大塚「勿論、俺もああいうフィーリングを出す人達は好きだし、ああいう風に出したいって素直に思うほうなんですけども。それをドラムには求めずに、俺一人でやるっていうのが面白い」

シャムキャッツのニューアルバムも音が締まってて良かった。それにしてもcero、大きくなったが故にこの界隈では相当意識されているんだろうな。しかし色々なところで色々な物が繋がってて、それは日本だってそうで、決してガラパゴスではないよということがわかる。そして、ロバート・グラスパーが前に進めたジャズをまた日本のポップス歌手は吸収してアウトプットしてるわけで、ほんとこの自由さは恐れ入る。ジャズも面白いし日本のポップスも面白い。

プレイリストにあげたような音楽は基本的に「これまでのジャズ」の意匠を持つ物が多いけど、現代ジャズの最前線も面白いことになってて、ホントどっちももっと聴きたい。この本、かなりお勧めです。

そんなわけで3年くらい前は全然ダメだったブラックミュージックも比較的聴けるようになっていきて凄く嬉しい。さて次回も一応ブラックミュージックについて、アングルを(超劇的に)変えて話をする予定〜。