亀田音楽専門学校SEASON2のケーススタディをしてみよう〜#02「J-POPギター学〜名脇役編」
というわけで、遅くなりましたが連休過ぎての第2回更新です。前回はこちら。
さて、第1回に引き続き布袋寅泰さんを講師に迎えての「J-POPギター学〜名脇役編」。前半で講義を要約して、後半ではそれにコメントや補足を入れつつ現代のJ-POPで実際に使われている例を探りますよ。今回は前回に増して要約がさらっとしてるので番組内容確認したい人にはごめんなさいだよ!
●講義の内容
前回はJ-POPの基本構成である「イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→大サビ」の中でギターが主役となるシーン(イントロ・間奏)を説明したが、他のシーンでもあらゆる音色を使って名脇役となることが出来るのだ。
まず「宙船」「小さな恋の歌」「やさしくなりたい」「プレゼント」「DRIVER'S HIGH」「紅」が流れる。これらの曲では、歌のバッキング(伴奏)でギターが独特のフレーズを奏でている。ここからは布袋さんがこれまでに作ってきた名曲を題材にその名脇役ぶりを確認していく。
●名脇役のエレキギター
COMPLEX「BE MY BABY」 ボーカルの主役が歌ってるところではボーカルをサポート、そうでないところでは出てくる。吉川晃司に踊っていただく、歌って頂くためのギター。
今井美樹「PRIDE」 「BE MY BABY」と全く違う音色。アルペジオ(コードをいっぺんに引かずに分散させて奏でる和音。)奏法により、楽器同士が重なり合い、新しい魅力を引き出している。
BOØWY「BAD FEELING」 ギターはリズム楽器にもなる。エイトビート:弾ませたり三連符使ったりビートと合わせて刻んだり長さ変えたり。ギター一本で音色や長さを変えながら、色々な顔をこなせる。
●エレキギターのさらなる可能性:パワーコード
パワーコードとはドとソの2音だけをおさえたコード。パワーコードがあると上に乗っかる楽器に自由度が与えられる。メジャー/マイナーどっちのメロディも乗せることが出来る、J-POPの土台を支える存在。安室奈美恵「You're My Sunshine」、浜崎あゆみ「Boys&Girls」などのダンス的な楽曲でサビに来ると温度が上がる効果を出す。布袋さん曰く、「簡単だけど、どこで使うかが重要」とのこと。
●名脇役後編
THE THREE「裏切り御免」 KREVAのラップに対して素晴らしいバッキング。布袋さんのリズム感がラップを支える一方、サビは布袋さんのメロディが主役になっている。布袋さん曰く、「自分の新しい面がセッションから引き出される」。
ももいろクローバーZ「サラバ、愛しき悲しみたちよ」 ありとあらゆる種類のメロディーが込められていて、布袋さんのギターがそれらを繋ぐ役目を果たしてる。この曲は5曲分くらいのメロディーを使って作るというデザイン的な作曲がされていて、自分のギターをその接着剤のような役割にした、とは布袋さんの弁。
●まとめ
理想のギタリストとはという質問に、「相手をリスペクトすると、相手が高まり自分も高まる。人にとって気持ちの良いギタリストでありたい」と応える布袋さん。脇役という風に意識しすぎても行けないし、主役だと意識しても良くない。まずはギターが楽しいというナチュラルな気持ちでバッキングするようにするといいという総括。
亀田校長からの総括。時代が変わってコンピュータで曲が作れるような時代でもギターが中心になり、主役にも名脇役にもなっている。この流れはずっと続くだろう。
●補足
前回からの繰り返しになるし、このブログでは度々話をしているんだけど、ギターロックの構造は1990年代の欧米から大きな変化が出て来ています。端的に言うとギターソロの衰退とリフ重視。パートパートが代わる代わる主張をする(次から次へと波が寄せてくる)音楽から各パートが密接に絡み合って塊として音を鳴らすような音楽へと変化したわけです。MY BLOODY VALENTINEなどが一つのルーツとなっており、技術的背景としてはエフェクターの進化なんかもあるんだけど、これが日本のロックで現れてきたのが1990年代後半(端的に言うとナンバーガールをはじめとする「98世代」がその端緒だろう)。なので、名脇役としてのギターの重要性はますます高まっているんじゃないかな、というのが僕の見立てです。
●ケーススタディ
今回遅れた理由のひとつは、ケーススタディの選考が難航したこと。2回目でこれとは、先が思いやられるぜ…
この項目は主観が入ってきちゃう気がするんだけど、伴奏のフレーズが色々な種類の音色・リズムを含んでいて、なおかつボーカルを殺さないようにしてるところから、名脇役感あふれるギターだと思う。1番Aメロなんかだとリズムに合わせて刻んだりしてるしね。 かなりJ-POPのお手本みたいなバッキングギターだと思います。
この曲が収録されている赤い公園の最新アルバムは今日ようやく聴き始めたんだけど、とにかく音が飛びだしてくるような強度を持ちながら、瑞々しさも兼ね備えてる若さあふれるアルバム。でもそれだけで終わらずに表現の幅が前作よりも増しているので、かなりお勧めです。
彼等はアルペジオを使っている楽曲が多く、僕的にはアルペジオと言えばPolarisというイメージな位。そんな彼等が一昨年活動を再開したときに出してきたのがこの曲。ある終え塩のギターがゆったりとしたダブっぽいリズムに乗ることで浮遊感を醸し出している、まさにPolarisとしかいいようのない曲。
パワーコード:ASIAN KUNG-FU GENERATION「スタンダード」
僕的にはパワーコードと言えばアジカン。更に言うとですね、アジカンは補足の所で述べたようないわゆるギターリフの時代のど真ん中を走ってるバンドで、とにかくギターの音が強度を持って塊のように伝わってくるのがサウンドの特徴。ここ10年くらいの日本のロックシーンを牽引している存在でもあり、時代にアジャストしてる存在でもあるわけ。ギターの鳴り方に記名性があって鳴ったら「あ、アジカンだ」ってなるバンドはそうそういないと思うんですよね。
そんなわけで布袋先生による豪華なギター学は今回で終了。次のテーマは「元気が出るリズム学」で、講師はmiwa!!miwaちゃん大好きなので楽しみであります。