レジェンドとフェスのストーリーと:ARABAKI ROCK FEST 2013に行ってきた話

4年連続で宮城県のARABAKI ROCK FESTに行ってきた。夏フェスはいつも別の所に行ったりしているけど、春のARABAKIと冬のCDJはずっと行き続けている次第。結構出演者の好みもフィットしてるしね。そんなわけで今年も行ってきましたのでその感想やら思ったことやらを書いてみたいと思う。

今回見たのは下記の通り。

DAY1:パスピエKEMURI→the day→EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX→くるり
DAY2:怒髪天the band apart奥田民生加山雄三&ARABAKI YOUNG KING BAND→クラムボン→THE GREAT PEACE YOUNG SPIRITS RESPECT FOR 忌野清志郎

1日目は寒くてかなり早い段階で帰った。雨みたいな霧と強風で体温が奪われていくのを実感した。正直に言って辛かった。そして1日目はともかく、2日目は部分的に見る予定だったハナレグミ岡村靖幸を全く見ることが出来ないなど、当初の計画に比べると消化不良感はあった。しかしそれを補ってあまりあるほどの体験をすることが出来たのは確かだ。

●1日目のハイライトの話

1日目のハイライトは、個人的に一番期待していたパスピエ。予想外にバスが長蛇の列でちゃんと到着するか不安だったけど、ついてみたら時間にも間に合って無事見ることが出来て。最新シングル「フィーバー」を先頭に持ってくる気合いのセットリスト。大規模なロックフェスに出るのは初めてという状態ながら、それを全く感じさせない堂々たるステージング。

いやもうなんというか、大胡田さんの笑顔凄かった。完全にこのステージが楽しくてしょうがないという感じで、それに影響を受けた他のメンバーの熱量も大いに増してたしというわけで最終電車では既に僕的にはクライマックスを迎えんばかりの勢いでしたとさ。パスピエは去年知って今年ようやくライブ見てから東京であるライブには全部行ってたけど、着実にブレイクへの道筋をたどっている感じがしたしホントにフェス初出演なの!?というくらいで、相変わらず満足度が高くてこれからの可能性を感じるライブを魅せてくれた。

というとめでたしめでたしみたいな感じだったけど、まあ1日目はとにかくそこに尽きたかな。あとはKEMURIで子連れが多くて子供達がスカパンクのリズムでご機嫌だったことが印象的だったかな。きっとKEMURI解散後に産まれた子達なんだろうなとかそもそもこの子達の親もKEMURI解散後に結婚したんだろうなとか余計な想像をした。the dayは新曲もやってくれたのが良かった。くるりはホント今いい時期だね。演奏に張りがあるというかメンバーがまず楽しめてる。

●2日目のハイライト以外の話

正直に言うと2日目の方が1日目よりずっと良かった。それは天気が良かったから過ごしやすいということもあったけどそれだけではない。それぞれのバンドのアクトのクオリティが高かった。

最初の怒髪天。前半のホトトギス→酒燃料爆進曲→押忍賛歌→オトナノススメの流れは気合いが入りまくりでシビれた。去年の1日目トリよりもずっと良かった。そして、結成30年を控えてついにメインステージで堂々たるステージングが出来るようになったということがまたグッとくるものがあるよね。

因みにこれについては僕も含めてみんな曲知らないもんだからきょとんとしてた。まあしょうがないよね。

それから午後イチのthe band apart。久しぶりに見たらすごく良かった。

2ndから入って遡って1st聴いて完全にハマった人間としてはこのセットリストはもう感激しきりだよなあ。coral reefとかバンアパで一番大好きな曲だし。しかし、客のノリがかなり変わってて驚いた。オイオイコールとモッシュの応酬で要はキッズノリだったんだけどというか4年前のひたちなかですらあんなんじゃなかったぞ。あと最初2曲と最後だけってわかりやすすぎるだろ。笑。しかしながら最新アルバムの曲良かった。最近マンネリかなーと思ってたけど全然そんなことなかったわ。

あとこの日のベストアクト次点だったクラムボン

フェスのクラムボンはどうしても物足りなさを感じることが多かったんだよね。シカゴやってサラウンドやってバイタルサインやったらもう3曲じゃない。はなればなれとかパン蜜、最近だとKANADEも結構やるじゃない、あと何を入れる余地あるんですかみたいな。しかしながら1曲目にナイトクルージングっていうのは完全に意表を突かれた。んでKANADEっていう流れはわりと世間一般の「ゆるポップ」的なクラムボンへのイメージを真逆の行く感じで意表を突いててすごく良かった。それこそ穏やかなポップスからアンビエントなポストロックまで幅広くこなせちゃうのがクラムボンであって、その幅広さを存分に見せつけてくれてる。そして今日初披露となった「LOVER ALBUM 2」からの「DESIRE 〜情熱〜」。まさかクラムボン中森明菜のカバーをやるとは思っていなかったのでどんな物になるのか全く想像ついてなかった中での初披露。結果聴いてみればなるほどクラムボンでした。具体的には「Re-意味は無い」とか「Ka-Ka-KaLMa」とかみたいにベースとドラムが前面に出てくるタイプのアレンジ。ARABAKIの客層を考えても絶妙な選曲だったね。さらには最後には「あかり from HERE」を同じステージ一つ前のアクトだったTHA BLUE HERBと一緒にオリジナルバージョンでやってしまうのだからもう至れり尽くせり。アラバキならではのステージ、だったね。

●2日目のハイライトだった加山雄三とARABAKIのストーリー

ARABAKIに加山雄三が出ると発表されたのは開催の1ヶ月半前。バックバンドだけが先に発表されている状態で、そのバンドが 佐藤タイジウエノコウジ武藤昭平・名越由貴夫・山本健太・高野勲というメンバー。 YOUNG KING BANDとは言うけれど、全員僕より年上なのにヤングとかどういうことやねんと思ったのを覚えている。そんなわけで完全に記念で見とくかくらいでしかなかったんだけど、見てみたらものすごく良い方向に期待を裏切られた。

まず最初の5曲はエルビス・プレスリーのカバー。2曲目の「Blue Suade Shoes」で分かったし思い出した。加山雄三ってかつて和製エルビス・プレスリーっていわれてたこともあったロックンロール・ヒーローだったこともあったんだってことを。それゆえにバックバンド、特に武藤・ウエノのリズム隊の迫力が桁違いだったし、この選曲にものすごくマッチしていた。圧倒的。

そこで「今のはエルビスプレスリーのカバーなんだ。次は、おれの曲をやらせてもらうよ」っていって若大将オリジナル曲のスタート。2曲英詞のボーカル曲をやってから「CRAZY DRIVING」「ブラックサンドビーチ」のインストゥルメンタル・メドレー。これはもうね、実力派のバックバンドそろえただけあって演奏の凄みが半端なくて、特に佐藤タイジと若大将のギター合戦が熱気にあふれてた。若大将も演奏している間にどんどん若くなってるんじゃないかと錯覚するくらい。御年76歳ですよ!アラバキ出演者最高齢ですよ!去年出演したさとう宗幸よりも12歳上だからね!(書くために調べたら予想以上で驚いた)いやあ、めちゃくちゃかっこよかった。

そして終盤には「青い星くず」「夜空の星」といったヒットナンバーを連発して、超名曲「君といつまでも」。イントロが鳴り響いた瞬間に僕がいた最前エリアでどよめきと歓声が起こる。ああ、やっぱりこの曲みんな待ってたんだなあ。観客のテンションも最高潮の中、最初のサビでなぜかモンパチのキヨサクが登場!そのまま更に盛り上がり、超有名なセリフである「幸せだなぁ」のくだり派ももちろんやってくれましたよ。しかもアレンジして。「幸せだな~、こんなに素晴らしいオーディエンスに恵まれて、そしてこんなに素晴らしいミュージシャンにも恵まれて、こんなに素晴らしい場所でライブが出来るなんて、僕は幸せだなぁ」このセリフの時がおそらくこの日一番の盛り上がりを見せた瞬間だったのではないだろうか。泣きそうな程良かった。ここで大団円、と思いきやキヨサクイルし東北では桜の咲く季節だしということで、まさかのサライに突入。キヨサクが谷村新司の代わりということらしい。笑。最後はみんなで大合唱して終わり。なんと14曲。約50分。あまりにも、あまりにも濃厚な時間。間違いなくこのフェスにおけるベストアクトは加山雄三だ。僕が見た分に関してはそう言える。

しかしまあ、ここ数年でベテラン歌手のロックフェス進出が毎年ニュースになったりしてるけど、今回の加山雄三は相応のニュース性とそれに見合うだけのアクトの価値があった。そして、ニュース性はあったけれどもあくまでアラバキのストーリーの延長上の物として今回は位置付けることが出来る。つまりニュースではあるけど「事件」ではないという話。レジーさんのブログでロックフェスのストーリーとアイドルのストーリーの話していたけど、アラバキって国内大型ロックフェスの中では基本的に出演者の硬派度合(おっさん度合ともいう)が高いことと、温故知新というか昔の曲を演奏する企画を多数やることの二つが他のフェスと際立って違う特徴である。ここ4年の内3年は忌野清志郎トリビュートセッションが行われているし、THEATRE BLOOK主催のGTGGTR祭では古今東西のロックの名曲をカバーしているくらい。そして子供ばんどアラバキで復活したし、当初はB.B.クイーンズもその予定だった(震災で日程が順延してしまったけど)。去年は怒髪天が日本の名曲を歌うというイベントで、さとう宗幸がゲスト出演して青葉城恋歌を歌い、地元民は大盛り上がりだった(これは仙台の人からしたら凄いことだと言われた。企画自体は微妙だったけどね…)。それゆえかは良くわからないけど、だから、既に半分スタンダードというか日本の名曲化している加山雄三が出るとしたら、アラバキがもっともふさわしかったんじゃないか。そして加山雄三という役者のために、とてもアラバキらしいバックバンドを用意したセンスは拍手だ。これもセッション・競演がやたら多いアラバキだからこそ自然だったわけだ。そもそもYOUNG KING BANDがボーカル抜きで先に発表されたときも、「ボーカル誰?」とかいう声は殆どといって良いほど聞こえなかったもんな。他のコラボ・セッション企画と同列な物なのかな、と思ってた。僕も。笑。

そして15年前に買った加山雄三トリビュートアルバムのことを思い出し、棚の奥底から引っ張り出してまた聴いてみた。当時聴いていた赤坂泰彦のミリオンナイツで激推しされてたので買ったんだよね。これを聴いていた高校時代の自分に教えてあげてあげたい。お前将来加山雄三生で見ることになるぞって。しかもステージ相当近くで(10分前くらいにステージ前に到着したら空いてたので最前エリア前から10番目くらいに陣取った。滅多に見られないのにもったいない!と思ったけどあとで写真とか見たら普通に客が入っていたようで良かった)って。このCDをかつて聴いていたおかげでライブをより楽しむことが出来て、改めて音楽って繋がってて面白いなあと思いましたとさ。


A Tribute To Kayama Yuzo 60 CANDLES

因みにこのアルバム、今みたいにレコード会社を越えたトリビュートアルバムが出るようになったさきがけのアルバムで、参加ミュージシャンも恐ろしいほど豪華だったりする。竹中直人と一緒に参加しているスカパラを代表してコメントしているのが青木さんだったり、色々感慨深い。

それと最後に。サライの演奏が終わったあとに若大将はステージを回ってYOUNG KING BANDのメンバー一人一人に握手をしていってた。手拍子が上手く合ってないとやり直しさせたりとかちょっと大物然とした態度があったりしてたけどすごい真摯にこのフェスに向き合い、そして歌い上げ楽しんだんだなあと思い、こちらも良い気持ちになった。若大将、最高でしたよ!

 

あと少しだけ。今年は震災の年ですらなかったチケットのソールドアウトが起き、どうなるのかなと思ったら想像以上の混雑具合で、結果的にハナレグミ岡村靖幸といったアクトは結果的に「捨てる」ことになった。道は常に混んでおり、食事やトイレにも毎度長蛇の列。ある程度はフェスにつきものだからしょうがないだろうなあと思いつつ、やはりその辺りはRIJFのような快適性重視のフェス以外の物と比較してもちょっと足りないなあ、という感じがした。SETSTOCKap bankの休止など、中途半端なフェスの淘汰と大規模フェスへの集中が進んでいくことが予想される。となると、例年の「まあまあな集客」前提のインフラ設計はきっときついんだろうなあと思った。機材車のルートも含めて(このフェスはとにかく道が狭い!)、抜本的に考える時期に来ていると思う。しかしながらそれさえ克服すればもっと良いフェスになると思うし、なんだかんだで一番好きなフェスなので(それだけに最近最も推してるパスピエが出たことは本当に嬉しかった)今年も感謝だしこれからに期待。