たにみやんアーカイブ(新館)

音楽について何か話をするブログです

たにみやんセレクション「2011年アルバムベスト10」

今年もたくさん音楽を聴いたもので、色々ライブに行ったけど、ここいらでまず自分的にどれが良かったのかを確認してみようと思う。毎年恒例ですな。

まず先に。今年買ったアルバムは59枚。そのうち今年のものが43枚。その中から厳選したのが、以下の10枚+αでありまする。 では10位から順に。

10:So manytears「So many tears」 今年の僕的ベストライブはおそらく5月3日のFISHMANS@日比谷野外音楽堂なんじゃないかと思うんだけど、 そのコアメンバーであった茂木欣一と柏原謙、それにスカパラのギタリスト加藤隆志を加えたのがSo many tears。11月のANNEXUSにて一気にビビッときて購入。FISHMANSの先にあるようなサウンド。ダブ感とロック感の心地よい同居。これいいわ。聴いていて気持ちよくなってくる。スカパラでの欣ちゃんのボーカルって癖がありすぎて好きになれないというか正直異物感があるんだけど、このバンドでは逆に欣ちゃんのボーカルを前提に組み立てられているので、それが生きていると思う。ただのおじさんバンドではない、魅力ありのバンド。

 

9:LAMA「New!」 SUPERCARのナカコーとフルカワミキNUMBER GIRL田渕ひさ子Agraphこと牛尾憲輔による現代のスーパーバンド。特定の世代にはグッと来まくり。実は僕もその世代のはずなんだけど、大学時代って僕があまり音楽あさっていない唯一の時期なんだよね。 しかし、このモダンな打ち込みロックはすごくいい。特に前半の「Night Telepathy」〜「Rocki'n Youe Eyes」〜「Spell」の流れはめちゃくちゃヤバい。引き込まれる。特に「Night Telepathy」はどんよりしたところから始まる感じからフルカワミキのキュートなボーカルが刺さる感じがたまらない。これは傑作。ライブに行ったらこれまた素晴らしかった。特に田渕ひさ子のギターが切れ味抜群すぎて圧倒されていた。もっと聴きたい。これからが楽しみすぎる。

 

8:モーモールルギャバン「BeVeci Calopueno」 今年最後に聴くことになるであろうバンドが、 彼らモーモールルギャバンなわけだけど(CDJでカウントダウン)、3月に出た彼らの新作は、これまでの流れを踏まえつつ新しい味を出せていた作品といえると思う。初期衝動丸出し、という曲はちょっと少なくなったけど、その分聴かせる曲が増えた感じかな。そういう所ではユコ・カティがボーカルを務める「ワタシハワタシ」「kitchen」「rendez-vous」辺りが非常によい。それから「Smells Like SURUME!」ね。この曲は楽しい。特にライブで聴くと。「細胞9」の正当進化といえるんじゃないかな。もっと激しいのを期待していた人たちは多いと思うけど、なんだかんだで気に入っている、スルメのように聴くことで味わいが増すアルバム。

 

7:ふくろうず「砂漠の流刑地」 このアルバムにはまあ少々期待してた、って位なんだけど、かなりいい意味で裏切られたなあと思っている。1曲目の「もんしろ」は全然彼等らしからぬ曲で、 多分ふくろうずで1番BPMの速い曲。これがガツンと来て、そこから表題曲「砂漠の流刑地」に。今までのふくろうずの流れを思いっきり前に振り切った曲。曲調のアンニュイさというのは影を潜めたところがあるけど、叙情的なメロディ・アレンジが増えたな、というのが正直な感想。ドラマー高城琢郎の脱退という衝撃的なニュースがありつつも、彼等はまだまだ先に進んでいくんだなあということを感じた意欲作。

 

6:Perfume「JPN」 正直にいうと、アルバムリリースの間隔がずいぶん空いてしまったことにより、去年出たシングル曲の印象はかなり薄れてしまっていて、その上LAMAと発売日が一緒だったこともあって個人的にはそこまで盛り上がらず購入したわけだけど、やっぱりやばかったという1作。とにかく最初がすごすぎる。「レーザービーム」〜「GLITTER」のノンストップミックスはテンションが高まるのを押さえられなくなる。年々中田ヤスタカのクラブ志向、フロア志向って高まってるよねえと初期Capsuleが好きな僕は歯がゆく思うところもあるけど、でも今のところこの方向性はプラスに働いているからいいと思う。まあそれ以外はふーんってかんじだったけど、軽い気持ちで何度も聞いたらやっぱり良かった。個人的にグッと来たのは「575」。でもやっぱ序盤が神過ぎるな。うん。

 

5:南波志帆「水色ジェネレーション」 南波志帆かわいいよ。というかね、 「ポップス」という言葉を突き詰めていくと南波志帆になるんじゃないかな。女子高生だからとかそういうんじゃなくて、この歌声に充ち満ちてる瑞々しさっていったい何なんだろうな、って思う。Cymbals土岐麻子矢野博康NONA REEVES奥田健介西寺郷太キリンジ→堀込泰之といったおしゃれポップの権化みたいな人たちが愛を注ぎ、山口一郎・小出祐介YUKIコトリンゴら様々なミュージシャンが彼女をかわいがった結果、彼女はとてもかわいくなりましたみたいな感じかな。声と楽器のバランスも最高。既に前に言ってるけど、シングル曲「こどなの階段」「オーロラに隠れて」以外では「もんだいとこたえ」「2センチのテレビ塔」辺りは派手な曲ではないけどミディアムポップとして一つの金字塔を打ち立ててるんじゃないかなとか。そして表題曲「水色ジェネレーション」はひたすらかわいい。今のみずみずしさをたもちつつ来年もがんばってほしい。早速「家族八景」のドラマ版の主題歌でタイアップ決まってるしね。

 

4:星野源「エピソード」 基本的に僕の「好きな曲・いい曲」を選ぶポイントっていうのはアレンジだったりリズム隊だったりなんだけど、この作品に関して言うと、「歌詞」という部分がクローズアップされる。星野源の書く歌詞はすごく好き。「くだらないの中に」はその中でも特に好きな歌詞であって、本人は変態の曲って言ってるけど、何とも優しさに満ちあふれているなあと。それがアコースティック基調の楽器隊と絡みあい、まとまってるよい作品として完成している。他の楽曲では「ストーブ」が出色。お葬式を描いた歌。僕が聴く限りではThe虎舞龍の「ロード」以来のお葬式の歌なんだけど、若干の比喩的表現と、限りなく優しいメロディとアレンジによって不思議と悲しさを感じない暖かい曲に仕上がっている。この曲こそが、このアルバムの表現、星野源の表現を最もよく表している曲といえる。そしてその導入としての「エピソード」。この曲が最初に一本筋を作っているともいえる。そういう意味で、前作より好きなアルバム。

 

3:ももいろクローバーZ「バトル アンド ロマンス」 まさかとは思っていたんだけどね。ももクロちゃんですよ。まさか自分がアイドルの曲をいいとか言うとはあまり思っていなかったけど、ももクロは実際よかった。最初に自分が気に入ったのが「Z伝説~終わりなき革命~」「行くぜっ!怪盗少女」である辺り、ベーシックなアイドルソングを求めて聴いてるわけではないのがよくわかるけど。どちらの曲もアレンジが秀逸。「Z伝説」についていうと、ヘヴィメタル、特にシンフォニックメタルの作法が使われていて、サビ前のクワイヤとかは無条件で高まってしまう。あとサビの歌詞の「我らはアイドル」って。「我ら」って。この辺は相当にツボだったな。「行くぜっ!怪盗少女」はバックの音がすごくかっこいい。オリジナルバージョンよりもなんか音が引き締まった感じ。いずれもヒャダインこと前山田健一の楽曲。思いっきりまじめにふざけているけど、完成度は高いと思う。ああ、勿論他のもいいですよ。でも基本的にはヒャダイン楽曲が好きだな。いずれにせよ今年になって初めて聴いたミューシャンで一番ハマったのはももクロ。ライブは客側の歌中のコールが激しすぎてちょっと性に合わないけど、とにかく聴きまくっているのであります。

 

2:サカナクション「DocumentaLy」 今まで「サカナクションを初めて聴く人にお勧めの1枚」 というのはすごく悩む話であった。kikUUikiは「アルクアラウンド」があるけど全体的に暗すぎるところがあるというかアルクむしろ浮いてるし、シンシロはキャッチーな曲が多いけど後半失速して全体的にはアレだなあとか、NIGHT FISHINGは「ナイトフィッシングイズグッド」のためだけにっていうのも何ともなあというか最近そもそもあの曲東京だと特にほとんどやらないし(と思ってたら12/28のCOUNTDOWN JAPANでやったとのこと。うらやましい!)、「GO TO THE FUTURE」は前すぎる…どれもいいアルバムなんだけど。というなか、このアルバムの絶妙感はかなり高いと僕は思っている。シングル3曲と「エンドレス」「ドキュメント」などの秀逸なアルバム曲、そして純度の高いミニマルなインストゥルメンタル曲「DocumentaRy」。「kikUUiki」ほど暗すぎず、「シンシロ」ほど明るすぎず、絶妙なバランス感を保っている。昨年の第1位としてあげた「kikUUiki」を超えたアルバム。これぞサカナクションというにふさわしい傑作。まだまだやってくれそうな感じも十分なので、来年も期待。

 

1:レキシ「レキツ」 そして、今年一番のアルバムはこれ。去年はまさにサカナクションの年というにふさわしい年だったけど、今年はレキシの年だった。ライブで見た回数はサカナクションの5回を上回る6回。大いに楽しませてもらった今年。 さて。このレキシの「レキツ」、とにかくすごいアルバム。まずゲスト陣が豪華。椎名林檎安藤裕子スチャダラパーMummy-D堂島孝平、浜野謙太、いとうせいこうグローバー義和と物凄い。並のコンピレーションアルバムでもないよこんな豪華さ。 そして歌詞の世界観が相変わらず突き抜けている。1曲目の「そうだ、レキシーランド行こう」でまず爆笑必至。突き抜けてるにも程があるでしょ、レキシのおじちゃん!さらには「ペリーダンシング」の「ねえ、ペリー?開国して欲しい?」や 「妹子なぅ」の「法隆寺、建立おめでとう!」ときて、今年屈指の名作である「狩りから稲作へ」の「縄文土器、弥生土器、どっちが好き?」「高床式〜ねずみ返し」とくる。というかこの「狩りから稲作へ」、狩りから稲作へ移行するという時代の流れになぞらえて「あなたと一緒にいたいから稲作定住」という切ないラブソングに仕立ててしまうもんだからたいしたもんだと思う。 歌詞で十分遊びながら音楽的には全然手を抜いていないのもレキシの特徴で、 とにかく音楽的にもかっこいい。「ペリーダンシング」のファンキーな踊れる感はすごいし(まさにSUPER BUTTER DOGみたいな曲!)、「ほととぎす」で聖徳ふとこ(安藤裕子)とお館様(池田貴文)の織りなすハーモニーは物凄く美しい。「きらきら武士」「妹子なぅ」のポップさはかなり計算されていると思わせるし、「狩りから稲作へ」の叙情的なイントロはあの時代を連想させるに足るものだ。ただのコミックバンドなんかではなく、楽曲の高いレベルの上に立脚したレキシワールド。前作もすごかったけど、今回はそれ以上の出来になっていると断言できる。文句なしのNo.1!!キャッツ!

 

というわけでしたが、次点もいくつかご紹介。

bonobos「ULTRA」 これは良かった。最後にええめっけもんしたなあという感じ。「あなたは太陽」の名曲っぷりと、そこを挟む「Wanderlust」「Go Symphony!」の素敵なポップさ。CDJ31日の締めくくりに聴けるのが楽しみ。

ねごと「ex.Negoto」 冒頭曲「サイダーの海」がめちゃめちゃ良かったんだけど、まあアルバムとしては…と言うところかな。前半に 既発曲を集中させすぎたかな。聴いた数だと結構上の方ではあるんだけど。

 

いやあしかし今年も沢山のいい曲に出会えて良かった。来年も楽しみなのであります。