たにみやんアーカイブ(新館)

音楽について何か話をするブログです

ももクロのアルバムとライブとあといくつかの話

ももクロの2ndアルバムを買って、10日ほどが経過しようとしている。大体話し尽くされている感はあるんだけど、凄い久しぶりにライブにも行ったしそれも合わせて喋りたいので喋る。


5TH DIMENSION

1:アルバムの話

まあ既に言われていることなんだけど、ジャンル縦横無尽な感じがものすごい。1曲目の「Neo Stargate」からしてカール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」から「O Fortuna」を冒頭に使うという。

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これテレビでしかももクロ見たことなくてCD買うの自体久しぶりだったっていうくらいの人どう感じたんだろう(サカナクションの「sakanaction」を初めて聴いたときにも同じこと思ったけど)。しかしまあ「5 to POWER」はいとうせいこう作詞のヒップホップだし、既発曲だけど「猛烈宇宙交響曲第七楽章・無限の愛」はヘヴィメタル(シンフォニックメタル)だし、「月と銀紙飛行船」のイントロはビートルズの「Strawberry Fields Forever」だし、他にも沢山のジャンルの音楽が一堂に会している。既に出ているシングル4曲がめちゃくちゃ個性的というかそれを通り越して異形の物みたいな感じになってた感もある中で、「だったら全部異形にしちゃえばいいんじゃないか」という逆転の発想でもあるかのような(いやそんなんじゃないんだろうけどさ)めちゃめちゃ濃い楽曲群。「乙女戦争」とかどうすんだろうと思ったら、結果的にそれより長い曲が1曲、殆ど同じ長さの曲が1曲。

んで持ってさっき言ったとおり1曲1曲がものすごく濃いので、最初聴き終わったときには正直に言うと疲れた。今は慣れたのかそうでもないけど。まあ疲れたのはもう一つ理由があって、今回のCDではおちゃらけた感じの曲が殆ど無い。おそらくなんだけど、前回13曲中4曲を作詞作曲編曲までやって更に1曲作曲していた前山田健一が同様に作詞作曲編曲全てを手がけているのは既発の「猛烈宇宙交響曲第七楽章・無限の愛」だけで、あとは締めの1曲の作曲だけ。なので全体的な印象としてはものすごく緊張感があった。なんだろう。脱ヒャダインが今回のテーマだったのだろうか。

個別のアルバム曲の話。Neo STARGATEは一応ももクロの新たなスタンダードとしたいんだろうなあというところで、最近だとももクロがテレビで取り上げられる時には怪盗少女とかではなくてこの曲がかかることが多くなってきたと感じている。仮想ディストピアはかっこいいロックチューンという所で結構ライブでアガる曲と言えるなあ。ファーストインプレッションはこの曲が一番良かった。5 The POWERはライブ映えする曲。新しいアンセムといって良いかも。それくらいライブで良かった。ゲッダーンはわりとミニマルなオケで進行する感じで、音が面白いなあと思った。月と銀紙飛行船。間奏で語りが入るアイドルポップらしい曲かと思いきやイントロがまずもって僕のものすごく大好きな曲のパロディだったり音が徹底的に遊んでる。BIRTH Ø BIRTHはサウンドは一番かっこいい。上球物語はホーンズやパーカッションなど、セッションしたら面白そうだとは思った。空飛ぶ!お座敷列車ももクロのニッポン一周の代わりになる曲を目指したの曲なんだろうなあと思うけど、どうにも中途半端な気がする。灰とダイヤモンドはメロディがいいね。ヒャダインの「ツボを押さえたメロ作り能力」が発揮されているというかなんというか。

いずれにせよこれが初週で約20万枚というなかなかたいした売上を記録してオリコン1位をかっさらったという話だから凄い。バトルアンドロマンスなんて発売してから1ヶ月近く初回限定盤残ってたのに(お盆明けに僕が買ったCDはとうに終わったはずのよみうりランド公演への申込券が封入されていた)。メインストリームのど真ん中と言うにはなんかまだそこまで行ってないし意図的にそこを避けてる気がするけど(この話は後述)、メジャーという物に思いっきり食らいついている勢いを感じさせる出来事。いずれにしろこのアルバムはおそらく2013年の日本の音楽シーンを代表する一枚になるだろうと思う。

2:ライブの話

4月13日に西武ドームのライブ行ってきた。初めて、というわけではない。これこそもう1年半前の話になるけど独占!ももクノ60分という不定期にやっているイベントの第1回でチケット当選して1度観に行っているのだ。(余談だけどPeaTixっていうイベント仲介サイトを使ったけど申込時間の1分前にサーバーがダウンして急遽先着が抽選に切り替わったのを覚えている。)まあその後第2回も外から見てたけど。その時はアイドルのコンサート行くの自体初めてで全然勝手が分からなくて戸惑ってコール連発のライブに全くついて行けなかったという思い出が。でも彼女たちのパフォーマンスは良くてその時に「紫推しに、俺はなる!」と決意したのを思い出す。

んでもってライブ。フルサイズのライブは昨年の夏ツアーのNHKホールをスカパーによる生中継で見ていたのだけど、思ってた所と違ったのはあった。まずは着替えタイム。着替えタイムで一旦切っちゃうんだ、というのは結構驚きだった。個人的にないわーと思ったのは着替えタイムが終わった直後に暗転したらゲストのサムライロックオーケストラによるパフォーマンスタイムだったところ。ならば切らなくても良かったじゃない…あとフジテレビの記者会見はスポンサー的に仕方なかったのかもしれないけど、単純に面白くなかったから無ければ良かったのに、と思った。

とはいえ総じて楽しかった。勝手がずいぶん分かっていたこともあるけど、なんだかんだであのアルバム曲達を魅せる物としてしっかり演出が作り込まれていたのはさすがだなあと思ったし、生バンドでの演奏になってて(しかもレキシでとなりの登呂遺跡として有名な朝倉真司がパーカッション参加していて個人的に感激)音がきれいになっていたというか厚みが合ったと思う。ドラムがツーバスじゃなかったから「猛烈宇宙交響曲第七楽章・無限の愛」だけはちょっと物足りなかったけど。とはいえ満足。スタジアム公演で遠い席って言うのも相当久しぶりというか初めての体験だったような気もするけど、アンコールでスタンド来たし良かったんじゃないかな。

一つ思ったのは、セットリスト。序盤は「キミとセカイ」以外全て最新アルバムおよびそれらの先行シングルのカップリング曲。終盤の盛り上がりとか見ても、「バトル アンド ロマンス」までとそれより後で結構分離してるんじゃないかなって思った。ももクロすごく好きな先輩と飲んでるときに出てきた話として、「バトル アンド ロマンス」より後の曲はコールを入れづらいという指摘があった。自分が感じたのはそれなのかな。もしくは前に言ったアルバム自体の音楽性なのかな。

3:あといくつかの話

ももクロオジー・オズボーン主催のOzzfestに出演することが発表されたことが少なからず波紋を呼んでいる。2011年にLOUD PARKに出演している前歴があったので「あ、出るんだー」くらいに思っていたので、正直に言って今回の騒動は予想外だった。いいじゃんと思うんだけどね。そもそも既に発表されているミュージシャンだって、MAN WITH A MISSONとかメタルでもハードコアでもないじゃんとかパンク勢もいるじゃんとか、節奏のないブッキングだったのは最初からじゃないの?と思うわけで。とはいえこの話と最近のももクロ界隈の色々な話題がリンクしているように感じたので、もうちょっとだけ話を広げようかと思う。話題は2点。ももクロ自体の「スタンスの持続」と「ファンの受容」について。

まず最初に、今回の「5TH DIMENSION」というアルバムに込められているのは「別の次元」、すなわち「脱ももクロ」とでも言う一つの統一したテーマだという風に思っていた。だからこそ「顔を隠す」という全くもってアイドルらしからぬプロモーションを行ったのだろう。そして従来のももクロの楽曲のうちキーとなる物の大半を作りあげてたヒャダインの成分を抑えるという判断をしたんだろうなと思った。しかしながらこの手法って回を重ねていくごとに難しくなるんじゃないかな。次へのハードルはますます高くなるよ。ももクロが大きくなるために敢えて出来なさそうなことをやってそれを達成することで「オーバー・エクステンション」を狙うというのは分かるのだけど、持続可能かというのが難しい気もするので、この後の舵取りに期待というか次の新曲はどんな物になるんでしょうかね。

ところでこの脱ももクロに関連して、実に興味深い指摘が先日テレビでなされていた。日本テレビで深夜にやっている「東京エトワール音楽院」という音楽番組に元Cymbalsの沖井礼二が出演して渋谷系について語る、という回の時の話。沖井さんが挙げた「渋谷系の特徴」として再構築(要は後期フリッパーズ・ギターなどに端を発するサンプリングや音源コラージュなど)・ポップアート(曲自体の印象とも深く関連した斬新なCDジャケット)と並び、「予定調和の拒絶」というものがあり、その「予定調和の拒絶」は今はももクロきゃりーぱみゅぱみゅのようなアイドルで顕著だ、という指摘があったのだ(因みに、渋谷系の「予定調和の拒絶」の例としては1993年~1997年のコーネリアスの曲の変化が挙げられていた)。確かにきゃりーぱみゅぱみゅもここ最近の「ファッションモンスター」「ふりそでーしょん」「にんじゃりばんばん」といった曲のMVで想像の斜め上を行く展開を繰り広げている。そしてここ最近のももクロの展開。確かに納得のいく話である。因みにこのときに流れていたのはNeo STARGATE

「予定調和の拒絶」という言葉の裏には拒絶されうる「予定調和」が無くてはならない。更にいうと、ももクロの成長過程において「AKB48のカウンターパート」という発想が(結果的にかもしれないが)思いっきりなされている。賛否両論を巻き起こし成長したAKB48的手法を逆手に取っている所が多い。例えば生歌や全力パフォーマンスはAKB48以前からある常識への挑戦だし、汚れ役をやりながらセクシュアルアピールはしない(あーりんのあれはネタだと思っている)というところも、大きくなりある意味2010年代型アイドルの本流となったAKB48へのカウンターパートと言えるのではないだろうか。まあこの辺は基本的なところだけど、その上で他流試合みたいな感じで「元々アイドルがやらなかったような領域」へどんどん仕掛けて話題性を演出していく。これぞ「予定調和の拒絶」の典型的な例だろう。計算ずくにも程がある。

ところで渋谷系ってメインストリームではなく所謂「サブカルチャー」の方だ。アイドルだってサブカルなんだがさすがにAKB48(派生グループ含む)となるとさすがにメジャー感が出てくる。その上でももクロはまだサブカルだ。その受容のされ方は極めて似ているような気がする。昨日レジーさんが「ストーリーの受容」という観点からアイドルについて話をしていたけど、そこと若干オーバーラップするんじゃないかという気がしている。「予定調和」の中に含まれるストーリー・文脈を楽しむという発想はまさに20年前に渋谷系の受容のされ方と凄くよく似ているし。ももクロの曲の元ネタ探しはヘッド博士の世界塔(フリッパーズ・ギターのラストアルバムで全曲にサンプリングやコラージュが多用されている)みたいだ。まあそういう話をすると確かにアイドル戦国時代を積極的かつ能動的に受容してるのっておっさん(僕ら世代含む)なんじゃないかなあと言うくらい話になってくるねw

結果として「拒絶」するべき予定調和が大きければ大きいほど盛り上がるわけだけど、それゆえに「ももクロこそがロックだ」みたいな勝利宣言が目につくことが増えているのには辟易とする。「ももクロというジャンルなんだ」みたいな。誰とは言わないけど。最近モノノフ界隈で色々と問題やら何やらも起きているみたいなので、普通に楽しんでいる者からするとそれは勘弁してほしいなあと思うわけです。こういったブログにしたためてる時点で普通じゃないじゃんというのは置いておこう。

 

とはいえ、最初にいったとおり今回のアルバム→ライブの流れで相当満足した。各メンバーの魅力も前見たときから比べて増してたし、紅白通り抜けて一段階抜け出したなあという感じはした。これからも楽しみ。日産スタジアムは行くかまだ決めてないけど、行く方向に傾きつつある。笑